BABYMETAL欧米待望論!!


BABYMETAL周辺がかまびすしい――。

決して今に始まったことじゃないけど、欧米での注目度、期待感、飢餓感の強さ、高さは相当なレベルだ、と思う。2枚目の新作『METAL RESISTANCE』4月1日発売を機に、欧米メタル誌からの引きがかなり強く、お馴染み『METAL HAMMER』をはじめイギリスの『KERRANG!』、『ROCK SOUND』などが3人を表紙に登用するにあたり、やれ独占取材だ、独占写真だと、日本の担当者はその対応に追われている。実際、各誌の記者がそのために来日し、3人に対面取材を行っている。自分の対面取材の前は、実は『ROCK SOUNDS』だった。若き和製ユニットがここまで欧米のメタルメディアに興味を持たれ、本格的な取り組みをされる、というのは前例がない。しかも3人が表紙を飾った号を日本の最大手通販サイトや大型CDショップチェーンのサイトが、事前に輸入雑誌として予約を募っている、というのもそれまで聞いたことがない。そして仕事柄、日頃欧米の関係者とのやり取りが多いのだけど、メール上にBABYMETALの名が踊ることは少なくないし、来日した洋楽メタルバンドのメンバーの口からもよくBABYMETALの話が出る。今のこの仕事に就いて長いけど、こういったことを経験するのは今回が初めてだ。まさに今、BABYMETALは日本はもちろん、欧米でも喧騒のただ中にいるのだ。
かつて取材などで頻繁に欧米諸国を訪れていた。80年代中盤以降はそれが顕著で、90年代中盤から2000年代初頭にかけてはそれにさらに拍車がかかった。冗談でもなんでもなく、トータルで1年の1/3は欧米各国/各地を飛び回り、現場を見てきた。イギリスのロンドン、アメリカのニューヨーク、ロサンゼルス、ドイツのベルリン、オランダのアムステルダムといった大都市から、「あなたは中国人? それとも韓国人?」と聞かれ「いえ、日本人っス!」と答えたら「あら、わたし日本人を初めて見たわ!」なんていう直球をフツーに返されるような片田舎のちっちゃな町にまで足を踏み入れ(笑)、ひたすらバンドを追っかけ、取材し、ライヴも観る、という経験をしてきた。

日本のロックバンド、メタルバンドの多くが「いずれは海外でも活動してみたい」という夢や憧れを持っている。洋楽からの音楽的影響が強いことから育まれる想いなんだろうけど、事実日本のバンドの海外進出は70年代から始まっていた。故ジョー山中(vo)がフロントに立ったFLOWER TRAVELLIN’ BAND、外道をはじめ、80年代にはLOUDNESS、VOW WOW(=BOW WOW)、EARTHSHAKER、ANTHEM、EZO(前FLATBACKER)、KUNI、90年代には少年ナイフ、Hi-STANDARD、2000年代にはeastern youth、MAN WITH A MISSION、ONE OK ROCK、coldrain、the GazettE、10-FEETらが挙げられる。なかにはそのために活動拠点をロンドンやロサンゼルスに移したバンドもいるし、メジャーレーベルと契約したり、メタルインディーレーベルから作品を出したりするバンドもいるなど、活動方法はそれぞれだ。自分はそうしたバンド群のなかでいくつかロサンゼルスやロンドンでライヴを体験したことがある。Atlanticと契約し、メジャーデビュー作となった通算5枚目『THUNDER IN THE EAST』(‘85年)がUSチャート初登場74位をマークしたときのアメリカにおける“LOUDNESS旋風”は本当に凄まじかった。LAメタルムーヴメントから出てきたクリスチャンバンド、STRYPER、ノルウェー産のメタルバンド、TNTとの三つ巴ツアーをロサンゼルスの野外会場グリークシアターで観たのだけど、6,000人収容可能な会場は完全にソールドアウト、LOUDNESSは2番手として出演したのだけど、その盛り上がりようといったらなかった。観戦中、何度「日本のバンドもついにここまできたか」と思ったことか。eastern youthもインディー域だったものの大勢の観客の心をガッツリと掴んでいた。カリスマバンド、AT THE DRIVE-INの結果的に最終ツアーとなってしまった(後に再結成)2000年のUS西海岸数公演にサポートアクトとして出演した。言うまでもなく、彼らは日本語詞で歌う。MCもすべて日本語だ。時折、客席から「英語を話せ!」との野次が飛んだけど、吉野寿(vo,g)はそんなのどこ吹く風で最後まで我流を押し通し、見事場内をひとつにした。「英語じゃなくても、日本のバンドはアメリカで通用するんだ」を強く思わされた瞬間だった。

その2バンドは特例中の特例と言っていい。上記したほかのバンド陣も多くが現地でおおむね好意的に迎えられている。が、しかし、こういったケースは実は稀だ。勇んで欧米に乗り込みライヴは演ったはいいけど、結果的に想い、期待、ロマンなどを木端微塵にされ失意のまま帰国したバンドの方が断然多い。場内に十数人しかお客さんがいない。それも大方現地に住む日本人だ。そうした少ないお客さん=同朋たちを相手にライヴを演る。終演後メンバーはみなうなだれ、押し黙る。タウン誌に載るライヴ告知のバンド名のスペルが平気で間違ってたりもする。そういう現場を過去何度か目撃してきた。自分のこれまでの経験から言うと、むしろこっちの方が日本のバンドにとっての“動かしがたい現実”と言える。Japan Expoの大成功例を見るまでもなく、ヨーロッパはまだ日本やそのカルチャーに寛容的なところがある。だけどアメリカにはそういったものがほとんどないに等しい。日本のバンドにとっては敷居が相当高く、即座に手を差し伸べ、同じ土俵に上げてくれるようなフレンドリーな国/音楽市場じゃない。現在、BABYMETALはそのアメリカのウェブ音楽メディアから引く手数多だと聞く。

大学卒業後、ロンドンに住んでいたことがある。その前にも現地を何度か訪れ、その後も出張で幾度となくいった馴染みのある都市だ。4月2日にBABYMETALがピンでライヴを演るウェンブリーアリーナにはこれまでに何回か足を運び、再結成DEEP PURPLEや欧米で国民的人気を誇ったMEATLOAF、ゴスロックの世界的代表格、THE CUREなどのライヴを観たことがある。とにかくデカい。場内に入り、あちこち見回すと思わず尻込みしてしまうくらいのデカさだ。BABYMETALが昨年末にやった横浜アリーナのキャパシティとほぼ同じの12,500人だ。そうしたデカい会場でのライヴを日本国内でやるのと、異国でやるのとじゃわけが違う、大違いだ。券売状況も好調との報告を受けている。日本人アーティストにとってはまさにまったく前例のない前代未聞のことであり、今現在のBABYMETALのイギリス/ヨーロッパにおける人気度の高さと、求心力の鋭さがそこから窺い知れる。5月よりキックオフされるUSツアーの各会場にも親しみがあるところがいくつかある。5月4日初日公演の会場ニューヨークのプレイステーションシアターはかつてノキアシアターと言い、2005年12月にRoadrunner Records設立25周年を祝した記念イベントが催され、自分も現場にいた(そのときの模様は後に『ROADRUNNER UNITED THE CONCERT』のタイトルでDVD化された)。その後のシカゴ公演、シアトル公演、ロサンゼルス公演の各会場でも以前何回かライヴを観ている。名の知れた欧米の中堅バンドが出演するところで、キャパはだいたい1,500~2,000人の中規模会場だ。THE PRODIGY、BULLET FOR MY VALENTINE、THE USEDなどのライヴを満喫した。こうした規模の会場を使用しての全米各地を転戦するツアーなんて、日本人アーティストがそうやすやすと組めるもんじゃない。この点から今現在のUSロック/メタルシーンにおいてのBABYMETALの立ち位置や、そこからの期待感、嘱望感のほどが浮き彫りになってくる。
新作『METAL RESISTANCE』が発売後欧米でどう評価され、受け入れられるのか非常に興味深く、また楽しみだ。全英アルバムチャートやUSアルバムチャートに初登場でいいポジションで飛び込む可能性は大いにある。それが現実のものになるや、BABYMETALが新しい門戸を開き、新たな道も開拓し、これまでにない斬新で画期的なことをも生むことを意味する。BABYMETALは間違いなく今年、欧米ロックシーンの“台風の目”となり、あちこちを席巻する! そうしたBABYMETALを日本人として誇りに思う。


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