BABYMETALの本当の意味での世界的真価が
問われるのは今じゃない、むしろこの先だ


BABYMETALがただ今絶賛、日本を含め欧米各国で絶好調だ。今回はこういう話から始めよう。

85年から欧米でLOUDNESS旋風が猛威を奮った。US大メジャーのひとつAtlantic Recordsと契約、5枚目『THUNDER IN THE EAST』が発売され、ビルボードチャートに初登場74位で飛び込んだ(オリコンチャート初登場4位)。シングル『CRAZY NIGHT』の、全米各地に散在するラジオ局でのヘヴィローテーションOAがその引き金になった。当時これはとてつもないことだった。「今度は日本からアメリカに黒船来襲か?」とまで報じた現地メディアすらあったほどだ。このときも日本の大メディアが引き合いに出したのが、故・坂本九の“SUKIYAKI”(原題“上を向いて歩こう”)だった。ビルボードホット100で3週連続1位に輝いたのはまさに大金星。LOUDNESSはそれ続く快挙を成しとげたわけだ。日本のロックバンドでビルボード100位圏内に入ったのは、彼らが初めて。さらに同作はイギリスはMusic For Nations(閉鎖)から、ヨーロッパはRoadrunnerから発売され、彼らはワールドワイドデビューを飾った。

翌86年7月、続く『SHADOWS OF WAR』のUS向けリミックス版『LIGHTNING STRIKES』が発売され、ビルボードチャート初登場64位を奪取。その後AC/DC、POISONらの大物バンドのサポートに抜擢され、欧米各国を巡演した。その流れで行われた87年夏のUSツアーをロサンゼルスで観た。トリが元祖クリスチャンバンドのSTRYPER(27年ぶりに来日したばかり)で、しょっぱながノルウェー産メタルバンド、TNT。LOUDNESSの出番はその真んなかだった。会場は日比谷野外音楽堂を倍大きくしたような形のグリークシアター(収容可能人数は約6,000人)でほぼ満杯だった。

LOUDNESSは相当ウケてた。二井原実の歌と合わせて客席のあちこちでヘッドバンギングの嵐が上がり、ソロパートに入り高崎晃の“神業”の連発/連打になるや、ヘッドバンギングの嵐はピタリと止み、多くの者が身を乗り出すように高崎の指先/指元を見入ってた。ライヴ中その繰り返しは、傍から見てて興味深かった。この頃欧米人の関係者に会えば必ずLOUDNESSの話が出た。欧米バンドマンの間じゃ高崎はまさに“Axe God”(ギターヒーロー)だった。街中を歩けば見知らぬ人に通りすがりに、「LOUDNESS!Akira Takasaki!」なんて言われたことも何度かあった。そうした一連のことを見聞きし、「ついに欧米とタメ張れる日本のメタルバンドが出てきた!」と鼻高々になれたし、LOUDNESSを誇らしく思えたことを今もなお覚えてる。比較するわけじゃないけど欧米での、2枚目『METAL RESISTANCE』が発売される前のBABYMETALへの注目度の高さ、期待度のデカさ、飢餓感の濃さを察し、思わず30年も前の“LOUDNESSの喧騒”を思い出した。自分的にはその雰囲気やムードや流れがなんとなく似通ってたからだ。

改めて言うまでもない、『METAL RESISTANCE』は日本をはじめ、欧米でも周囲の予測を超える好発進を切った。

アメリカ:ビルボードチャート初登場39位

イギリス:ナショナルチャート初登場15位

オーストラリア:ナショナルチャート初登場7位

日本:オリコンチャート初登場2位

ひとえにこのチャートアクションは見事だ。個人的にはビルボードチャートじゃトップ50圏内入りは楽勝じゃないか、と密かに思ってたのだけど、それを上回った結果だ。それぞれの国の音楽市場のあり方や性格や状況はまさにそれぞれ。日本の音楽市場のそれらは非常に特殊で、欧米人関係者が理解するのは難しい。そのひとつが、日本はいまだ“CDショップ天国”だということ。欧米じゃCDショップを探すこと自体ひと苦労で、多くが大手通販サイトや量販店で購入する。日本じゃ『METAL RESISTANCE』は発売から2週間で、前作『BABYMETAL』(2014年)の実績の2/3以上を突破した。音楽不況が声高に叫ばれる昨今じゃこれは異例で、その大半がCDを購入とその率がとても高い。この点はかのビッグネーム、MAN WITH A MISSIONとも近い。ただ、チャートパフォーマンスはあくまでもひとつのデータ、数字として捉えるべきだ。特に坂本九の大ヒットは今から半世紀も前のこと。音楽市場の背景も環境も今とは違う。作品形態も当時はアナログレコードのみで、CDもダウンロードもなかった。


なぜ今回、BABYMETALは欧米でウケたのか? いろんな意見があちこちから挙がってるようだけど、大事なのはその要因はひとつには絞り込めないということ。なにかが瞬間的にものスゴい勢いで動き、成功への道を辿っていく場合、いくつかの事柄や要因が複合的に絡み合うのが常だ。

まずなんと言っても“カワイイ”というのが最初のきっかけ、アイキャッチになったことは間違いない。それで動画を観て、音源を聴いて、フェス参戦時に、じゃライヴ観てみようか、というのが入口になった欧米のリスナーはものスゴく多いと思う。『BABYMETAL』はメタルアルバムなのだけど、かと言って正統派でオーセンティックかというと実はそうじゃなく、主軸の“メタルでダンスする”というまったく新しいアプローチは斬新で、物珍しかったハズだ。これをもって欧米各国をツアーし、フェスなどにも精力的に出たことが、今回の成功の布石、下地となってる。ブレイクは絶対一夜にしては成らない。

『METAL RESISTANCE』は秀逸だと断言できる。非の打ちどころがないくらいよくできてる。計算し尽され、緻密に組み立て、編み込まれた曲の数々は求心力に満ちてる。“クセ”になる要素もあちこちに待ち構えてる。そのレベルは『BABYMETAL』のそれを上回ってる。祭りだ、武道だ、なる“和の響き”も欧米のリスナーには刺さっただろうし、オマージュの使い方、盛り込み方も巧みだ。改めて言うまでもないけど、神バンドはかなりのテクを持つ。初めてライヴを観たとき、その卓越さには思わずエビ反りそうになったほどだ。が、しかし、BABYMETALはそのバカテクぶりを“大きな売りのひとつ”にしちゃいない。あの豊潤で伸びのある歌声、プリズムのごとくいろいろな響き方をするメロディ、ときに顔を覗かせる歌謡曲、J-POPと聴き紛うメロディの流れ、そして突然降りかかってくるちっちゃなユーモアなどとうまく融和させ、けっこう難易度の高いプレイを繰り出してるにもかかわらず、決してそれを難しく聴かせてないのだ。ここはかなり大きなポイントだ。そして、日本語詞で真っ向から勝負してることもデカい。80年代から2000年代初頭にかけては、日本人アーティストには「欧米にいき、活動するのなら英語で歌うべき。むしろそれは必須だ」というのが定説だった。アメリカ人プロデューサーの下でレコーディング中、シンガーが英語の発音を再三注意され、徹底的に直され、鍛えられた、というエピソードを何度も耳にした。ライヴ中には「特に“L”と“R”の発音がねぇ。なに歌ってんのかわかんない」と中高生レベルの話で揶揄されたことも一度や二度じゃない。が、しかしBABYMETALは完全にその次元を超えた。

新作発売、そしてワールドツアーのキックオフを意図したプロモーション、マーケティング戦略もアッパレだ。日本じゃ特に新作発売の一週間前後、地域限定ながらあちこちがBABYMETAL一色に染まったのには、まさに圧巻だった。欧米じゃ頭でドカンっ!といくも、その後も途切れることなく徐々に、しかし着実に広げていくという継続性・連動性を主軸とした展開がとられてる。USでのCDなどの流通をSony傘下のRED Distributionに委ねたのも奏功してる。かつてMETALLICAの初期2作品『KILL ‘EM ALL』(83年)、『RIDE THE LIGHTNING』(84年)のUS国内での流通を請け負い、Relativity/Combatなる“スラッシュメタル/ハードコアの宝庫”と言わしめたレーベル部門を80~90年代に主宰してた、という確かな経験と大きな実績を誇る。今となっては、激しい音楽のメジャーレーベル流通はシステム的に難しい時代だ。

そうしたさまざまなことがポジティヴに絡み合うことで、BABYMETALは『METAL RESISTANCE』発売タイミングで日本でも、また欧米でもさらなる大きな一歩を踏み出した。先日の対面取材のとき、SU-METALは『BABYMETAL』について「BABYMETALとしての名刺代わり的作品」と語った。ならば『METAL RESISTANCE』は“世界的名刺代わり作”と言える。確かに今、世界各国で“BABYMETAL旋風”が吹き荒れてる。風向きも上々だ。ただ、正直言うとまだ“カワイイ”とか“物珍しさ”とかが先行し、強く働いてるのもまた事実で、本当の意味での世界的真価が問われるのはまだまだ先のことだ。長い間、イギリスのプレスは意地悪なことで名を馳せてきた。よく見受けられるのが“最初はガンガン持ち上げてたのに、いざ成功すると手のひらを返し、一斉に叩きまくる”というタチの悪いヤリ口。9月の東京ドームを含め、いろいろもろもろ今後のBABYMETALの動向が楽しみだ。

最後にあともうひとつつけ加えておきたい。ことわざを引く。BABYMETALに「柳の下の二匹目のドジョウを狙う」というのはない。もちろん正真正銘のまがい物は登場するだろうけど、太刀打ちできないどころか足元にも及びやしない。それだけBABYMETLは特化した存在だ。いい意味で“唯我独尊”へとなっていく道を自ら切り開き、BABYMETALという新たな音楽ジャンル誕生・確立へと今ひた走ってるのだ。



text by Hiro Arishima
pics by (C) Amuse Inc.



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