関東メタル/ハードコアの異端児たちが底力を見せつける
3ウェイ・スプリットがリリース! 各バンドメンバーによる対談が実現!!

ANGAGEMENT(アンガージュマン)、Arise in Stability(AiS)、The Rabiesの3バンドによる3ウェイ・スプリット『The Heretic’s Proof』。「異端の証明」というタイトルを冠するだけある、三者三様の個性が火花を散らす作品だ。関東のメタル/ハードコア・シーンでも指折りの実力派にして、独自のサウンドを持つバンドが集まった本作のリリースを記念して、ANGAGEMENTからKIGU.(g)、NABE3(g)、KAWAKEN(b)、AiSからMasayoshi Onodera(g)、Suguru Yamashita(ds)、The Rabiesから五味健司(vo)と大沼崇(ds)が集結。互いの音楽性や関係値、そして今後について、大いに語ってもらった。



――スプリットを出すくらいですから、この3バンドの仲は深いと思いますけど、馴れ初めを教えてもらえますか?
Masayoshi「うちとANGAGEMENTは、2009年頃からですね。初めて対バンしたのは2010年のANSWER FOR LIFEっていう名古屋のイベントだったんですけど、その前からバンドのことは知っていて、ライヴを見ていたし、かっこいいなと思っていました。ちょうど2009~2010年頃が、この3バンドが繋がった時期ですね。うちが少しだけ早くコンピレーションに参加したり、地方に遠征に行くようになっていたんですけど、その後に続いてきたのがこの2バンドって感じで。The Rabiesは、企画に何度も呼んでもらっていたものの、予定が合わず出られないっていうのが続いていたんです。2011年にうちらがアルバム『THE FUTURE THAT AMNESIAC DRAWS』を出した後で、やっと対バンできました。その後お互いの企画に呼んだりとかで関係がより深くなっていった感じです」

――各バンド、これまでのキャリアは?
五味「2002年くらいからバンド自体はやっていたんですけど、新宿のANTIKNOCKに出たりして、この界隈でやるようになったのは2007年頃ですね」
大沼「僕が入って、今みたいなスタイルになっていったのも同じころですね。それまではドラムが安定しなくて、やりたいことがやれていなかった。以前はもっとスラッシュメタル色が強かったんですけど、ヴォーカルもかっこいい声をしてるなと思って、僕がメンバー募集を見て連絡したんですよ。しばらくは高円寺の20000V(現二万電圧)によく出ていたんですけど、そこのブッキングの人に“ANTIKNOCKに出たことないなら、紹介するよ”と言われて、それで出るようになりました」
NABE3「僕らは2006年に結成したんですけど、今のようなメタルコアやハードコアの方向に本格的に進んだのは2010年頃です。それまではもっとSTAINDやLINKIN PARKの影響が強い音でした。僕と前任のヴォーカルは、前のバンドからいっしょにやっていたんです。そのバンドが解散してANGAGEMENTを始めた形でした」
Masayoshi「僕らが出会った頃のANGAGEMENTは、AUGUST BURNS RED直系でしたね。ちょっとメロデスっぽいハモリも入れたメタルコアで」
NABE3「日本で誰よりも早く始めたのに、誰もフォロワーが出なかったんですよね(笑)。そもそも最初は、いわゆるヘヴィロックをやりたいっていうところから始まったんです。そこからKILLSWITCH ENGAGEあたりを聴いたり、もともと北欧のメロデスなんかも大好きだったしで、そういったスタイルも少しずつ取り入れるようになりました。それと同じ時期に、僕がアメリカに旅行にいったとき、AUGUST BURNS REDを見て、衝撃を受けたんです。これはヤバすぎると。これを日本で先駆けてやりたいなと思って、それまでのスタイルを残しつつ、少しずつ変わっていった感じですね」

――AiSはアルバムをリリースした際にも取材させてもらいましたが(Vol.66掲載)、結成は2004年でしたよね。
Masayoshi「結成当時のメンバーは、もう僕しか残っていませんけど(笑)。Housuke(Taniguchi/vo)が入ったのが2005年で、最初のデモを出したのが2006年なので、そこからが本格的なスタートだと思います。でも前のアルバムを出したメンバーになった2008年頃から、活動が活発化していった感じです」

――今回のスプリットには、まさに三者三様の個性を持つバンドが集まりましたけど、リリースはどんなきっかけで決まったんでしょう?
大沼「僕がもともとAiSが好きなんですけど、アルバム以来、新しい音源がないなと思ってたんですよね。いちファンとして、ずっと待ってる状態で。で、曲のアイディアがあるんだったら、いっしょにスプリットという形で2、3曲出さないかと提案したら、AiSが所属しているlast fort recordsに話しを通してくれて。そうしたら、リリースするなら6曲くらいがいいという話しになったので、じゃあ3バンドでやろうということになった。そこで共通の知り合いのバンドだし、ぜひ入ってもらいたいなということでANGAGEMENTに声をかけました」
Masayoshi「僕たちとしては、The Rabiesはすごく異質なバンドだと思っているんですね。このスプリットの話しは2013年に横浜で持ちかけられて、渡りに船だと思ったんですよ。それだけじゃなくて、うちのHousukeはThe Rabiesを世界一好きなメタルバンドだって公言してるくらいだし。すごく尖ったバンドですからね。うちもほかとは違ったことをやろうとしているんですけど、それに近い信念を持っているバンドはないかと思って。そうしたら、地方じゃなくて東京で考えるとANGAGEMENTだなって」
大沼「長いこといっしょにやってきているし、逆にやらない理由がないくらいの感じでしたね」

――そんな2バンドから指名を受けて、ANGAGEMENTはどう思いました?
NABE3「マジか! と思いましたね(笑)」
大沼「光栄です! くらいのことを言ってくれたので、誘ってよかった (笑)」
NABE3「それで楽曲をどうしようかと悩んだ結果、大幅に遅れてほかの2バンドに多大な迷惑をかけました(笑)」
Masayoshi「リリースが予定よりも遅れた理由の10か月分くらいはANGAGEMENTが原因の気がしますね(笑)。最初は今年の2月に照準をあてていて、僕らもレコーディングはその前の12月に終わらせるつもりでいたし、The Rabiesはもっと早く録り終わっていたんです。でもそこからズルズルと遅れていき…(笑)」
大沼「でも、ANGAGEMENTは途中でメンバーが変わったりもしたしね。だからしょうがない部分もあったんですけど」
NABE3「ただ、僕たちとしても好きなバンドから誘ってもらったし、どちらもこっちがどんなに高い予想をしていても、それを超えてくるだろうことはわかっていたんです。だからどうやって蹴散らしてやろうかと考えた結果、この2曲で勝負しようと」
KIG.「結果的に出てきた曲は超ストレートでしたね。120%の拳みたいな(笑)」
Masayoshi「おかげでスプリットがわかりやすくなった気はします。何もアンダーグラウンドで尖ったバンドだからといって、聴きにくいことをやればいいわけでもないですから。そもそもアンダーグラウンドにいるバンドっていうのは、どれもスタイルが多種多様だし、幅広さをみせつけられたと思います」



――たしかに、“Coma Kills”でヴォーカルのスクリームからスプリットが始まるのは、パンチ力とインパクトがありますね。
Masayoshi「この曲順を提案してくれたのは、僕らとANGAGEMENTがレコーディングしたSTUDIO PRISONER(ほかにA GHOST OF FLAREやHONE YOUR SENSE等も担当)のHiro(g/METAL SAFARI)さんだったんですよ。例えばお店の試聴機で聴くときに、KZT(vo)の声から始まるANGAGEMENTの“Coma Kills”が1曲目にあれば、つかみとして最高だろうと。それまでは誰を最初にするかでいろんな意見があったんですけど、最終的にすごくいい流れができたと思うので、そういう意味でも結果的にANGAGEMENTは外せないピースだったと思いますね」

――それぞれ、今回の新曲はこのスプリットのために作った曲だったんですか?
大沼「むしろ僕たちがこの話しを持ちかけたのは、自分たちの曲ができたものの出す環境がないから、スプリットとかどうかな…と思ってのことだったんです」
Masayoshi「最初は“Inka”とは別の曲を入れるつもりだったんですよ。スプリットの話しが決まった後で、この曲を作った前任のギターのGenki(Sano)が抜けることになったので、いなくなるメンバーの曲を入れるのもどうかなと思って。ただ代りにと思って作ってた別の曲がなかなか形にならなかったし、“Inka”はGenkiが最後に残してくれた曲で、彼の作曲人生の集大成的なものだし、いいものは世に出そうということになったんです。もう1曲“Magnetclock”も、実は今年脱退したHiroshi(Mizuno/b)が原曲を作ったんですよ。初めて歌ものとして作った曲に、僕が少し手を加えて完成させたんです。なので原曲を作ったメンバーが両方いないんですけど(笑)。2曲ともテクニックの限界に挑戦してますね。Genkiは自分で作ったくせに“これは一生弾けない”って言って、そのまま辞めちゃったし、HiroshiもPCで音を打ちこんだデモを送ってきたとき、これどうやって人間が弾くんだよって思ったくらい(笑)。でも2年くらいひたすら練習したら、意外と弾けるもんだなと(笑)。そういう意味じゃ、人が弾けるようにアレンジする過程でできあがった感じですね。新しいギターのTatsuya(Kobayashi)が考えたソロやフレーズを入れているし、新しく入ったメンバーのエッセンスも、レコーディングのときには入っている感じですね」

――The Rabiesにいたっては、ブラックメタルの要素も入った、怨念さえ感じさせるドロリとした激しい曲ですよね。
大沼「してやったりです(笑)。2010年に出した『The Sorrow Is Deep Above All』をみんなで聴き直したときに、明るかったなと思ったんですよ。じゃあ次はもっとエグいのができるだろう…というのがスタートですね。ただギターの由本(有希雄)が愛知の実家に戻っているので、制作スタイルが少し変わったんです。関東組の3人で一から“Stagnant Eye”を作りました。あとは、メンバーもこの5年で趣味趣向が変化したので、そのへんが影響として出ているんじゃないかと。ちょうどブラックメタルなんかにも傾倒し始めていた時期だったし。かつ、僕たちが今までやってきたことも反映されているので、自分たちがやりたいこと、かついいものができたと思います」
五味「俺たちが面白いというか、そういうところが一番出たのかなと思いますね。前からenvyとか、そういう日本特有の空気というか暗さというか、ああいうものが好きだし、グラインドコアとかブラックメタルとか、エクストリームなものには前から影響されてきていて…ヴォーカルに特に顕著ですけど、語りを入れてみたりとか。そのうえでスラミングとかブラック、デスメタルのエグさを組み合わせたらどうだろうと。結果的にそれがしっかりとできたと思います」



――お互いの曲を聴いたとき、どう思いました?
五味「すごく各バンドらしいと思いましたね」
Masayoshi「僕はThe Rabiesにはやられたと思いました。俺たち、チャラかったわって(笑)」
五味「そんなことないでしょ(笑)」
Masayoshi「いや、僕たちの曲はけっこうメロディアスなところがあったなって。それはそれでいいんですけど、今回のスプリットはアンダーグラウンドな感じでやろうというのはみんな共有していたんですよ。そうしたらThe Rabiesは真のアンダーグランドというものを突きつけてきた。衝撃的でしたね。ANGAGEMENTは、制作がどんどん遅れていくんで大丈夫かなと思ってましたけど、待たせただけのことはやってくれたと思います。キラー2ステップチューンというか、このフロアの空気こそがアンダーグラウンドだよなって。やっぱりこの2バンドはすごいし、尊敬していてよかったなと思いました」
大沼「ANGAGEMENTなんかは、できないできないって言って作ってきた曲で、最初の印象はストレートですけど、よく聴くとけっこう難しいことをやっているんですよね。よくこれで作ったし、途中で参加したYU-YA(ds)もよく合わせていったなと思いますね。AiSは完全に個性が確立されていたので、今回その上を見せつけられて、あぁ、まだ行くんだこの人たち…ていう感じ (笑)。やられたなと思いましたね。聴き手のことも考えてるんだなと思うし、そういう目線も必要だよなって」
NABE3「同じような目線はうちらにもあって、やっぱりすげえのを持ってきたなって。僕らは絞り出した感じで、これだったら2バンドにも負けることはないだろうと思っていたんですけど、もっと攻撃力を上げてもよかったなって思いました」
KIG.「ミックス音源を聴いたとき、The Rabiesの音が一番でかくてくやしかったです (笑)。僕たち、いつも世界一でかいギターの音にしてくれって言うんですけど、やられたなって」
Suguru「音的にはうちらが一番優しい音になりましたね(笑)。さっきKIG.が言ったように、どんどん音がでかくなる2バンドに対して、うちらは綺麗どころを聞かせたいからとバランスを取っていったので。でもそれもスプリットで出すとメリハリがあっていいのかなって。バンドの違いや色が顕著だと思うし。それはそれで面白いですよね」

――『The Heretic's Proof』というタイトルに込めた意味を教えてください。
KAWAKEN「全部で20くらい案が出たんですけど…まず個性の強すぎる3バンドが揃ったなって思ったんです。それぞれ目標や主張を持っていて、どこにも属さないしブレてない。独自のスタンスを持っているバンドが集まったので、それを極限まで持っていくと、どうなるのかというと…異端だなって。だからその異端という言葉は入れたかったんです。そこから派生して、タイトルにつながった感じですね」
大沼「ただ3バンドをコンパイルした企画盤じゃなくて、ひとつの作品として残したかったんですよね。だから曲順や流れなんかもしっかり考えましたし」

――いくつか、各地で3バンドが出演するレコ発もあるようですが、あちこち地方遠征も予定されていますか?
Masayoshi「まず12月5日にANGAGEMENTの企画が新宿ANTIKNOCKであります。これはレコ発とは関係ないんですけど、ふたを開けてみたらこの3バンドが揃ったっていう(笑)。この日のANGAGEMENTはAUGUST BURNS RED直系だった頃の曲をやるっていう話しなので、僕らも昔の曲をあてていこうかなと思ってます」
NABE3「なんやかんやで自分たちもキャリアが長くなってきたし、昔から関わってくれたバンドや、今もやり続けている人たちを呼んで、もう一度今の俺たちがこうだぜって報告し合うのもいいんじゃないかなと思ったんですよね」
Masayoshi「ほかには、1月9日に、ANTIKNOCKでこの3バンドで企画したレコ発があります。その後も2月に大阪があるし、長崎や福岡に行く話しもあって。3月は決まってないですけど、声をかけてくれている人たちもいるので、北海道や北九州、名古屋なんかにもいきたいですね。僕たちとANGAGEMENTは、これまでに地方にけっこう行ってきたこともあって、ありがたいことに協力してくれる人たちもいますから」

――最後に、各バンドの先々の活動の抱負や予定を教えてください。
大沼「僕らは今のところ、具体的なことは考えてないんですよ。でもスプリットって面白いし、もしかしたらそれで続けるかもしれないです。やっぱりいつも曲が難産なので、フルアルバムを作ろうとすると、また先々のことになっちゃうので。タイミングよさそうなバンドで、もしやれるんだったらまたスプリットでいきたいです」
Masayoshi「アルバムに向けた曲も少しずつ作り始めているんですけど、今回外した曲を次のアルバムの核にしようかなと思っています。少しテクニカルとは違う方向でやりたいなと。まぁテクニカルなんですけど(笑)、もともとTOOLなんかも好きなんで、ああいった雰囲気を出していくことも、年齢的にできるようになってきたかなと思うので、そこに挑戦したいですね」
NABE3「実は今レコーディング中なので、おそらく来年リリースできると思います。ちょうど、来年でバンドが10周年ということもあって、今録ってるやつも含めて、3作品は出したいって話し合っているんですよ。その準備もしているところなので、来年は今までの集大成にしたいですね」



text by Yusuke Mochizuki


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