BEAT CRUSADERSからTHE STARBEMS、
今現在、そして近い未来へ…日高央が語る!

THE STARBEMSの2枚目のフル作『Vanishing City』が11月
12日と発売間近だ。ここに、8月上旬にまだ新作レコーディング
ただ中にあった時期に都内某スタジオを訪れ、日高央(vo)が語
ってくれたインタヴュー記事をお届けする。BEAT CRUSADERS
(ビークル)解散からTHE STARBEMS始動の流れなどを振り返
る内容になってる。

――新作の音楽的方向性の基本はこれまでと同じですか?
「そうですね、基本は一緒です。うるさい、速い、熱い…ただ、ちょっと今回は明
るくしようと思いました。1st『SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD』(20
13年)は完全に怒りしかなかったんです。ビークルを成しとげられなかった怒り
や、個人的な生活のストレスもあったけど、一番デカかったのは東日本大震災
でした。震災をめぐるやりとりのなかで誰にぶつけてイイのかわからない怒りが
とにかく渦巻いてた。その怒りをやわらげるんじゃなく、今度は明るく怒ろうと思っ
て。それってたぶんビークルじゃやれなかったことの一個だったんで。そういう
意味でのリベンジ感が今回スゴくありますね」

――いま演ってる音楽のスタイルはビークルとは向けてるベクトルが真逆です
ね。日高さんにとってビークルとはある意味やり終えたもので、今は新しい方向
に向かってるというイメージがあったんですけど、ビークル時代から引っぱって
るとこってあります?
「お客さんが持ってるイメージは、よくも悪くも絶対ビークルぐらいしかないと思い
ます。だからそこを自分で否定する気はないです。オレとしてはビークルは好き
だし否定するんじゃなく、ただ単にもう古いんですね。だけど音楽的なアチーブ
メントとしてのストレンジな発し方、お茶の間へのストレンジな感じというのはま
だやり尽くしてないとは思ってます。だから元来真逆だったハズのベクトルがい
つの間にか360度回って一緒になったという想いが自分のなかにはありますね」

――1stは本当に怒ってた(笑)。いま演ってる音楽はたしかに怒りがないとでき
ないものですよね。怒りって大きな原動力のひとつになると思います。で、いま
はなにに対して怒ってるんです?
「震災以降のうんぬんに関しては引き続き怒ってます。相変わらずどこにぶつ
けたらイイのかわからない怒りがスゴくあります。加えていま、いろんな問題が
さらに山積みになってきてるじゃないですか。日本だけじゃなくてパレスチナ・ガ
ザ地区の情勢もそうだし、エボラ熱も復活してきた。世界情勢全体に怒りが沸き
上がってくることが最近多いんです。いいニュースだって絶対にあると思うんで
すけど、悪いニュースが入ってくる方が多い気がするんですね」

――先日、新代田FEVERでの『ULTRA RENEGADES E.P.』発売に伴うツアー
ファイナルで初めてライヴを観ました。日高さんのMCで言った「やりたいことを
やる、それで食えようが食えなかろうが、売れようが売れなかろうが、オレたちは
それでイイ」という言葉が印象的でした。ビークルと言えばひとつの時代、ポップ
カルチャーを作ったバンドだと思ってます。それを全部取っ払い、自らの音楽的
原点に立ち返りつつ、新しい仲間たちと新バンドをやってるっていう意識って強
いですか?
「強いですね。売れちゃうと、お客さんとの温度差がどんどん出ちゃう。こっちと
してはゲームみたいに楽しんでほしいわけじゃなく、日々のストレスをぶつけて
楽しんでほしいんです。そういうズレがビークルの後半はスゴかったですね。
音楽のことを文句言われんのはイイんですけど、音楽そのものにどんどん集
中されなくなっちゃうんだなと、逆に脅威を感じました。だけど音楽そのものに
集中したら、メンバーが音楽で食ってる食ってないも関係ないし、その人がイ
イ人か悪人かも関係ないわけじゃないですか。だから音楽そのものの話をし
ようっていう、そのためにどうしたらイイのかなっていうのを考えた結果、ああ
いうMCになっていっちゃうんですよね(苦笑)」

――自分たちの音楽的原点に立ち戻ってパンクロック、ハードコアからやろう
となったわけですが、優秀なキャリアを持つメンバーたちとTHE STARBEMS
を始めるとき、いま演ってる音楽性じゃなくビークルみたいに明るく楽しいもの
を、っていうことは考えました?
「一瞬たりとも考えなかったです。やっていくなかでそういうのが出てくるのは
ありかなとは思いましたけど、狙ってやろうとは思わなかったです。音楽的バ
リエーションは増やしたいという想いはありましたけど」

――THE STARBEMSが演ってる音楽自体が原点にあると思うんですけど、
いま日高さんが考えてるTHE STARBEMSの音楽って、ある意味メンバー全
員の“素”の状態から生まれてるものじゃないですか?
「“素”ですね。たとえばオレが別の仕事が入ってる間に曲の間奏を作っておい
てくれって言うと、ちゃんとできてくる。基本的にほぼオレが作ってるとは言え、
みんなで作ってる感はスゴくあります。構成だったり進行だったりちょっとした
コード感だったり、みんなどんどんアイデアを出してくれる。そこは、みんなやっ
と遠慮なくものが言い合えるようになりましたね。結成から一年半ぐらい経って、
やっとフラットにやれてると思います」

――じゃ楽しいでしょ(笑)? 音源を作り、ライヴも演り、ツアーに出、地方都市
のイベントにも出演してっていうことが。
「楽しいです。車での長時間移動は腰が悪いんで、さすがに体力はしんどいで
すけど(苦笑)。だけどその間に歌詞を書いたり原稿を書いたりとか、仕事もで
きますから。だから全然ツラくはないですね」

――日高さんにとってビークルってもう過去だと言い切れます?
「過去ですね。いまああいう曲を書けって言われてもたぶん書けないですし。
THE STARBEMSでやっていくなかでもし明るいバリエーションが増えれば、
ビークルっぽくなっちゃうと思います。基本はオレが作ってる曲なんで。もしか
したらそこにあんまり差はないかもしれないし、実際、今回の新作にも何曲か
ビークルっぽいじゃんって言われちゃうようなフレーズが出てきて、みんなで
話し合ったんですね。だけど、それがビークルっぽいかどうかはリスナーの判
断だし、オレたちのなかにそこに矛盾とかネガティヴな気持ちがなければ別に
イイじゃんっていうのは、やってて思いました。だから過去だけど別に否定はし
ないっていうか」

――1stを出し、『FUTURE PRIMITIVE e.p.』など2枚のシン
グルも出し、いま2枚目のフル作を作ってるわけですけど、
先日寺尾順平(b)さんが突然脱退しました。どういう状況だっ
たんです?
「もともとアイツははっぴいえんどが好きな、スゴく優しい横
ノリ系ベーシストなんです。ただアイツが、ビークルが解散し
たとき“日高さん、次のバンドやらないんですか?”ってたきつ
けてくれた。それがTHE STARBEMSの原型になっていった
んですね。オレとしては引き続き一緒にやりたかったし、アイ
ツも気持ちとしてはやりたかったんです。だけど基本やっぱ
気持ち的にもプレイ的にも優しいベーシストなんで。それを
互いに無理するのもよくないんじゃないかって話し合った結
果、今回は休みますぐらいのつもりで。ときが経ち、また速
いBPMに取り組めるような環境ができたらまた一緒にやろう
と話もしたんで。だから決して悲観的な別れではないです」

――寺尾さんにたきつけられTHE STARBEMSを始めたとき、
ビークルっぽいものはやるつもりは毛頭なく、あくまで直線的
な疾走感と破壊力のある音楽をやりたいっていうのが基本に
あったと?
「そうですね。もともとLAUGHIN’ NOSEとかの80年代のインディーズブーム
に魅かれたとき、なにに一番反応したかっていうと、これは親や先生に怒られ
るみたいな、あのワクワク感でした。言いたいことを代弁してくれてる気がした
し。あれを自分もやらなきゃいけないなと思って。もちろんビークルってそのつ
もりで始めたんですよ。不良とかよりは、もうちょっとオタクっぽい子のために。
彼女もいて学級委員で部活でも部長で…とかいうエリートからはみ出しちゃっ
たけど、異常にメタルに詳しいとか、ハードコアだけスゴく知ってるとか、スカン
ジナビアのパンクロック・シーンにやたら精通してるとか、そういうヤツがクラス
に必ずひとりはいたじゃないですか(笑)。そういうヤツのためのサントラがビー
クルだったんです。いまはそれをもうちょっとはみ出したいヤツだったり、部活
とか入れないけどなにかやりたくて悶々としてるヤツだったり。そういう意味で
のはみ出し者のサントラがTHE STARBEMSです」

――ライヴを初めて観て思ったんですけど、いかにもビークル時代からのファ
ンという女子たちがいっぱいいましたけど、そこに血の気の多そうな男子ファン
もいて、ひとつの空間に共存共栄してた。ほかのバンドのライヴじゃちょっと拝
めない光景でした。
「オレも読めないですよ、全然。ものスゴく親しげに話してくれるけど、毛皮のマ
リーズが好きだったっていう人もいっぱいいますし、ほかのメンバーのもともと
のファンだった人もちょいちょいきてくれてるんで、その混じり具合はとても面白
いですね」

――音楽自体もキャッチーな要素を忘れない豪速球系ですけど、ライヴのやり
方もあまり細かく考えずに直球みたいな感じですね。MCもライヴのやり方も。そ
してまた曲が短いからさーっといく。あれ、イイっスね。
「台風のようにサッとやるっていう。それはやっぱり80'sパンクロックの影響じゃな
いですかね。みんなさーっと過ぎていきましたから(笑)。GUSTANKもTHE ST-
ALINもLAUGHIN’ NOSEもみな、嵐のように終わる感じでしたから」

――最も音楽的影響を受け、吸収したのは
やっぱ80年代のそのへんの人たちですか?
「オレのなかに、三大柱があるんです。まず
THE MONKEEES。小学校んときTVで再放
送を観てギターを始めたんで。THE BEAT-
LESより先にTHE MONKEESを知っちゃっ
たのはデカかったような気はします。その次
はYMO。あのメンバー3人のなかでだいたい
みんな教授(坂本龍一/key)にいきますけ
ど、オレは高橋幸宏さんに注目したんです。
ドラム叩きながら歌ってるのが斬新だったし。
で、直後にLAUGHI’ NOSEがくる。その三本
柱でしたね。だから60'sポップス、テクノ、パ
ンクロックだったんです。それがいつも混然
一体と自分のなかで渦を巻いてるっていうか。
60年代っぽい曲を書き、テクノっぽいアレン
ジでパンクロックっぽい演奏をするとビークル
になってたのかなって。あとで振り返るとスゴ
くそう思うんですよね。そして、そこをちゃんぽ
んしてる人ってオレ以外あんまりいなかったのかなって。振り返って考えると、ビークルが60
年代成分が多かったとすると、いまはパンクロック成分が多くなってるような感じがしますね。
もちろん一個一個、どれを強くしようと思って作ってはいないですけど」

――新作には当然怒りもあるでしょうけど、それとは違う意味での主題っていうか
テーマみたいなものってあります?
「1stのときは1曲1曲怒りながら作って、曲に合う怒りフレーズをはめていったんで、
怒ってるっていうこと以外、テーマはあんまりなかったんです。だけど今回はユー
モアじゃないですけど、怒り方を変えようと思っていろいろ調べた結果、今回はウル
トラセブンに乗せて怒ろうと(笑)。作品タイトルとか曲題とかを考えるとき、迷うといつ
もウルトラセブンのムック本を見るんです。こんな話あったなぁ、あんな話あったなぁ
って。そういうなかで、今回は作品全体がウルトラセブンっぽいストーリーがじんわ
り浮かび上がるように作りました。これは第一回目放送っぽい曲とか、最終回放送っ
ぽい歌詞とか、じんわりとそういうのを想像できるような歌詞にしようと。だから1曲1
曲を読むとスゴく怒ってたり、とても悲惨な話だったり、メッセージがあったりと個々
でも成立するようにもしつつ、全体を読んだときにはなんとなくウルトラセブンを見終
わったような感じになるようにしようと思いました」

――音楽的には、今回どういうものにしたいと?
「笑いながら怒る、を音楽でやったらどうなるのかなっていう実験がまず一個あって。
オレけっこうね、ライヴを演っててもいつの間にか笑ってるんですよ。なんか楽しくて。
昔だったら別に笑ったりもそんなにしなかったんですけど、今はうれしいなら笑った
方がイイなと思って。そういう意味じゃ、ライヴを演っててオレがニヤニヤしてるのを
感じられるような作品にしようと思って」

――ビークルから解き放たれてフリーになった日高央の本当の姿、自然な姿のひと
つをTHE STARBEMSで出せる、それが新作だと?
「だと思います。ビークルをやってるとき、お面でやってるのにカッコいいって言われ
るのはおかしいって、やっていくうちにどんどん思っちゃったんですよね。そもそもカ
ッコいいと言われたくてやってたんじゃなくて、面白いと言われたくてやってたのに。
それがカッコいい、可愛いに変わっちゃったときの、狙ってない言葉がどんどん大き
くなったときの恐怖って、スゴくあるじゃないですか。それがいまはないっていうのは
純粋にうれしいですよ。気持ちいいっていうか」

――新作、そしてその発売で成しとげたいことってなにかあります?
「一番オレが危惧してるのはバンド界隈のなかでも、いわゆるAIR JAM周りにいたアラ
フォーのバンドマンたちと、30前後から下との間がいなくて、ぱっくり割れちゃってるこ
となんです。仲が悪いって意味じゃなく、スゴく断絶があるというか。お客さんも全然違
うし。それで浮動票も得にくいから、全体のトーンが沈んでるし、バンドシーン全体に元
気がない。東京で会場が満杯になるようなバンドでも地方都市じゃなかなか売り切れな
いっていうのは若手もベテランも同じなんですけど、来てるお客さんたちが違うんです。
だからそこをブレンドしながら全体の底上げをしたいというのが全体の大きな野望の一
個としてありますね。そうしないと、バンド人気が衰退しちゃう。ベテランのよさを若手の
お客さんにも伝えたいし、逆に若手のカッコいいヤツらがいる界隈でベテランの人たち
も一緒になって楽しめなきゃと思う。そういう意味じゃバンド側からの発信で、橋渡し的
な作品にしたいなと思います。やりたいことをやって、ちゃんとそれをエンタメとして成立
させるっていう意味では、スゴくやりがいがあります」


新作『Vanishing City』の詳細についてのインタヴュー記事は11月30日発行予
定のGrindHouse magazine Vol.87に掲載する。お楽しみに~!


text by Hiro Arishima


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