前回upした、“音古改心”復刻第1回からの続き、として読んでいただきたい。

クラシック音楽よりも断然洋楽ロック、ポップスに反応し、好んで聴いてた有島少年(笑)は
母親の導きにより、その後次第にその世界の虜になっていった。母親が買い与えてくれて
いた7インチシングル…つまり俗に言う“ドーナッツ盤シングルレコード”のアーティストもより
“ロックの核心”へと近づいていくものばかりだった。これは今もなおハッキリ覚えてる。
1番最初に自分に、と買い与えられたのはTHE ROLLING STONESの『黒くぬれ』(原題
“Paint It Black”)だった。それから“名手”エリック・クラプトン(vo,g)率いたCREAMの『WHITE
ROOM』、“天才”ジミ・ヘンドリクスの『紫のけむり』(原題“Purple Haze”)、JANIS JOPLINの
『ジャニスの祈り』(原題“Move Over”)と続いた…。今考えてみてもスンゴい話である。
当時は今現在とは違って洋楽、邦楽云々どころか、ロックっていう音楽自体からして知られ
ておらず、聴いてる人は本当に少なく、周りにはひとりもいなかった、なんていう時代だった。
圧倒的に市場が小さかったのだ。そんな時代に母親がなぜそういうアーティストを知ってて、
なぜ自分に勧めたのかは、実は今もって謎のまま(笑)。長い間、何度か本人に尋ねてるの
だけど、いっつもその答えは同じ。「なんでだったかしらね、覚えてないわ。ただ、アナタは確
実にロックの方が好きなように見えたからじゃない?」と、この繰り返しなのだ(笑)。それからと
いうもの、自分はどんどん“ロックの深み”へとハマっていくことになる。母親との間に“週課”の
ようなものができ、毎週日曜日の午前中にラジオでやってた、いわゆる全米トップ20番組を
いっしょに聴いては互いに気に入った曲のレコードを番組終了後に当時駅前にあったレコード
屋に買いにいく、っていうことが続いた。そういった流れで知り、気に入ったアーティストはまさ
にUK産、US産、カナダ産問わず。THE WALKER BROTHERS、GRAND FUNK RAILROAD、
LED ZEPPELIN、STEPPEN WOLF、CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL、THE MAMAS
& PAPAS、LOUIS ARMSTRONG、MARVIN GAYE、JEFFERSON AIRPLANE、ERIC BURDON
AND THE ANIMALS、GUESS WHO…と枚挙にいとまがなく、またロック、ポップス、ソウル、
ハードロックと音楽的にも幅広かった。その流れにおいて知り、気に入り、母親に「レコード買っ
てぇー」とねだったのが、今回取り上げるBOB DYLANだった。

 今、DYLANはよく“フォークミュージック
の神様”とか“USフォークロックの始祖的
存在”とかいう言葉をもって語られ、紹介さ
れ、多くの信奉者たちより愛され、崇めら
れてる。御年71歳のまさに大ベテランで、
今日までにグラミー賞、アカデミー賞、大統
領自由勲章といった由緒正しき賞や勲章を
受賞(受章)し、ロックの殿堂入りも果たしてる、
文化人的側面すら持つアーティスト、ミュー
ジシャンだ。この音楽がフォークっていうジャ
ンルであることを知るのは初めて聴いてから
何年も経った後のことなのだけど、当時の
自分に響いたのはその頃愛聴してたロック、
ポップス、ハードロック、ソウルとは明らかに
違うスタイルのものであることがむしろイイ方
向に働いたんだろう。ヴォーカルとアコギ1本
だけ、ほかにあってもブルースハープぐらい
っていうほかのジャンルに比べると極めてシ
ンプルだったこともわかりやすく、入りやすく、
また聴きやすかったんだと思う。

言うまでもなく、DYLANは今日までに膨大な
数に上る作品を残してきてる。もちろん、そ
のすべてを聴いてるわけじゃないし、聴こう、
聴きたいと思うなら相当な時間と労力が必要
な数だ。正直自分は『追憶のハイウェイ61』
(原題『HIGHWAY 61 REVISITED』/65年)などごく数枚の作品しか通ってないのだけど、DYLANと言えばや
はり、このオリジナルスタジオ録音作としては2枚目となった『THE FREEWHEEKIN’ BOB DYLAN』(63年)
だろう。いわゆる初期の“傑作”だ。個人的には“風に吹かれて”(同“Blowin' In The Wind”)、“はげしい雨が降
る”(同“A Hard Rain’s-A Gonna Fall”などが好きだ。前者はDYLANのまさに代表曲中の代表曲であり、後者
は60~70年代初頭を舞台設定として製作された洋画の挿入曲として使われるなどとてもよく知られた曲だ。
心の奥底に宿る反骨の想い、社会への警鐘、風刺観などがシンプルかつストレートな曲、音像で奏でられる。
その物悲しい旋律からときにしんみりとなってしまうところもあるのだけど、ヴォーカルとアコギとブルースハー
プという超シンプルな構成でここまでの“強さ”“りりしさ”を味わえる作品もそう滅多にはないと思う。“神様的存
在”とか言われると、どうしても敷居が高いように思えてしまうだろうけど、そんなことはない。制作当時21、22
歳だったDYLANの人間味が至るところに満ち満ちてる。

DYLAN名や存在自体、そして音楽は直接的に、また間接的に後世に
影響を及ぼしてる。これもその表れのひとつだろう。グランジ/オルタナ
ティヴロック黎明期にそのシーンを華麗に彩り、今年結成25周年を迎
えるマインドも音楽もパンクロック強しなMUDHONEYのマーク・アー
ム(vo,g)が、ソロ名義で90年にかのSub Pop Recordsより『THE
FREEWHEELIN' MARK ARM』という2曲入り7インチシングルを出し
てる。A面が今作収録曲“Masters Of War”のカヴァー。けだるい感じで
始めるも、後半MUDHONEYらしくノイズを噛ましてる。見てのとおり、
ジャケはパロディだ(写真右)。



文・有島博志 / text by Hiro Arishima




 BOB DYLAN
 『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』
 /『THE FREEWHEELIN' BOB DYLAN』
 1963年作品