たび重なる進化の末に辿りついた、
BMTHの新境地にして最高地点!!

BRING ME THE HORIZON(BMTH)の新作『THAT’S THE SPIRIT』は、もう聴いただろうか? デスコア/メタルコアのニューヒーローと言われた彼らの面影はもはやないが、エレクトロニクスとバンドサウンドを高次元で融合し、ヘヴィで重厚ながらも美しい、コアなファンにはもちろん、これまで彼らの触れたことのない人にも必聴のアルバムになっている。BMTHのキャリアを大きく飛躍させる突破口となった本作について、リー・マリア(g)が答えてくれた。



――新作発売から少し経ちますが、チャートアクションはかなりいいそうですね。心境はいかがですか?
「そう、すごく調子がいいんだ。世界中でいい反応がもらえていて、メンバー全員喜んでいるよ。イギリスでは2位になったんだけど、1位とは500枚くらいしか差がなかったらしいんだ。ほかにもオーストラリアやカナダでは1位になった。とにかく嬉しい報告をいっぱい聞いているよ」

――昨年にはウェンブリー・アリーナでライブをやりましたよね。映像作品『LIVE AT WEMBLEY ARENA』(日本盤未発売)としてもリリースされましたが、あのライブを思い返して、どう思いますか?
「すごく楽しかったよ。あの少し前にシングル“Drown”をリリースしたところだったんだ。“Drown”は今回のアルバムにも入っているから、あのライブは前のアルバムというよりも今回のアルバムの一部というか、今回のサイクルの始まりだったような感じがする。 “Drown”やライブの手応えがすごく良かったから、あのライヴが終わったらすぐ今回の曲作りに突入したんだ」

――これまでフレデリック・ノードストロム(AT THE GATESほか)やテリー・デイト(DEFTONESほか)をプロデューサーに迎えてきましたが、今回はオリヴァー・サイクス(vo)とジョーダン・フィッシュ(key)のふたりによるセルフプロデュースだそうですね。外部からの意見を取り入れず、バンドだけでの制作に踏み切った理由はなんだったんでしょうか?
「デモの制作に時間をかけたから、作品の具体的な像ができあがっていたんだよね。外部の意見が入ってしまうと、意見がぶつかったりして揺らいでしまうような気がしたんだ。どうすればいいのかは分かっていたから、自分たちでやった方が理に適っていると思ったんだよね。今にしてみれば“Drown”を出したことがテストみたいな感じになっていたね。自分たちだけでやるとどんな感じになるのか見てみたかったというのもあったし。そのときの反応がすこぶる良かったから、アルバムの路線も見えてきた感じ。そこから始まったんだ」

――『SUICIDE SEASON』から、エレクトロニクスも導入し、情報量の多い、スケール感のある作風へとどんどんシフトしていきましたが、前作『SEMPITERNAL』まではまだブレイクダウン等、メタリックな要素も残っていたと思います。しかし新作ではギターがヘヴィに鳴っている以外はメタル的な部分はほとんどないですよね。デビュー作『COUNT YOUR BLESSINGS』の頃は、BMTHがこんなバンドになるとは誰も予想できなかったと思いますが、メンバーは当時、バンドの進む方向をどう考えていたんでしょう?
「俺たちの成長によるものが大きいよね。最初のアルバムを出した頃は、まだ18歳とかそのくらいだったし。あれはもう10年近く前のことだろ? あれからミュージシャンとしても人間としても成長したし、音楽に対する理解も深まったしね。メンバーチェンジも大きかったと思う。今回は最初にあれこれと話し合って決めたわけじゃなくて、とにかく曲を書き始めたって感じだったんだ。書きながら、これは面白いなと思ったものは残して、そうでもなかったものは途中で書くのをやめた。ヘヴィなものも書いたけど、最終的には外すことになった。今回アルバムに入っているのは、心からエキサイティングな気持ちになれる曲ばかりだよ」

――『COUNT YOUR BLESSINGS』の頃は、メンバーも若かったし、衝動で動いている部分も多々あったと思います。逆に、今やろうと思ったら昔の作風に戻ることもできると思いますか?
「うーん…あの頃だから書けたってこともあるだろうね。若いときはとにかくとことんヘヴィな、世界一ヘヴィな音楽を作ってやろうみたいな気持ちがあったから、アプローチそのものが今と違うんだ。今やろうと思えば、まだまだヘヴィな曲は書けると思う。今でもその手の音楽はよく聴くし、クールだと思うし、大好きだから。ただ、今それを自分たちでやろうと思わないだけだよ」



――改めて新作についてですが、今回は疾走感も控えめですし、激しさよりもスケール感と美しさを強く押し出していますね。オリヴァーもヴォーカルでは歌うことに徹しています。これまでと違った、それこそ一般層にまでアピールし得る作品を作りたい…という思いはありましたか?
「さっきも言ったように、今回はとにかく曲を書き始めたし、それがただ楽しかったから、どういう風に作ろうとかそういうのはなかったんだよね。キャッチーなヒット曲を作ろうとかそういう気負いもなかったし、自分の感覚にピンと来るものを作り進めていった感じだった。君が今言ったような面も、頭のどこかにあったかもしれない。でも、作っているときはとにかく自分たちにとってベストなものを作ろうという気持ちしかなかったんだ。どんなスタイルだろうと、自分たちが納得できるものにしたかった。人とちょっと違って、なおかつ自分たちが心から気に入ることができるものを作ろうという意識はあったけど、メインストリームを意識してどうこうという気持ちはそんなになかった」

――先に触れたとおり、今回はオリヴァーとジョーダンのプロデュースですが、制作のプロセスに変化はありましたか?
「以前よりずっとストレスがなかったね。とにかく集中して作っていたんだ。スタジオにいるときは誰かがいばってるとか、そういうのはない。今回は自分たちの責任ですべて作ったから言いわけはできないし、そういう意味で気の入れ方は違ったかもしれないけど。おかげで理想ぴったりの音ができたよ。オリヴァーとジョーダンは、特にヴォーカルの部分を色々工夫していたね。最終的にはその努力が実ったと思う」

――以前オリヴァーは「自分は楽器ができないから、リフやメロディを口ずさんで、それを音にしてもらう」と教えてくれたことがありました。今もその方法なんでしょうか?
「そうだね。それを音にするのが、今回は主にジョーダンの役目だった。あいつがオリヴァーの思い浮かべた音の風景を具体的に形にしていった。ちょっとヘンなやり方だけど、それがうまくいくんだ。例えばギターの弾き方を学んでしまうと、どうしてもコードや音階が気になって、そこで引っかかってしまうことがあるからね。でも、オリヴァーはそういうのをまったく無視したアイディアを出してくることがあるんだけど、それがよかったりするんだ」

――きらびやかなサウンドとメロディの美しさは、たしかに多くの人に対して開かれたものだと思います。しかし音がものすごく緻密に折り重なっているので、今後聞き返すたびに新たな発見がありそうです。
「できるだけキャッチーにしたい、というのはたしかにあった。RADIOHEADやSIGUR ROSもそうだけど、キャッチーなのに奥が深いよね。ああいう、音楽的に面白くてなおかつキャッチーなものができたらと思っていたよ。8分間のダラダラした曲じゃなくて、ちゃんと全体で音の風景がある、効果的なものにしないと。時にはミキシング担当者泣かせになるけど(笑)、俺たちが出している音には全部理由があるから、どれを抜いてもダメなんだ。興味深いものにするためには妥協しないよ」

――ギターもヘヴィなディストーションだけでなく、透き通るようなアルペジオやメロディも多いですよね。ジョーダンのキーボードが前に出てくるようになって、バンド内のパートの配置やバランスには苦労したのでは?
「そういう面はあるね。でももう随分前からなんだけど、いろんなエフェクターを使って、ギターっぽく聞こえない、ヘンな音にしてあるパートも多いんだ (笑)。ギターはずっと鳴っているけど、音の風景の一部になっているから、そこだけ抽出することができないっていうのかな。いつもだったらリフをやっているところで、アプローチを変えてみたんだ。だからあからさまにギターの音がしていないところがあるって感じ。それがあるから全体としてスケールの大きな音ができているんだと思う。あとはとにかくクールな音になるように、ミキシングから何からとても気を遣ったよ」

――普段はオリヴァーにインタビューをすることが多いので、あえて。今回のアルバムで、ギタリストとして「ここ!」というポイントを教えてください。
「そうだなぁ…(しばし考える)…ギターが好きな人には“Blasphemy”のギターソロを聴いてみてほしいかな。あれにはとても自信があってさ。ブルージーで、ちょっとDIRE STRAITSみたいな雰囲気もある。今まで弾いたことのないような弾き方をしているよ。それからアルバム全体がどんな感じなのか知りたいと思ったら、最初と最後の曲を聴くといい。その2曲に、アルバム全体に散りばめられているものが凝縮されていると思うんだ。この2曲はアルバムの他の曲と比べて多彩だからね」

――その“Blasphemy”から繋がっていく、ラストの“Oh No”ではサックス等も導入したジャズっぽい雰囲気を出しつつ、穏やかに終わります。これも意外な締め方で驚きましたよ。
「それはいいね(笑)。このアルバム1枚でできるだけ多くのことを網羅しようとしたからさ。ポップで明るい曲調でも、歌詞がすごくダークだったりするんだ。曲だけ聴いて歌詞を読んでいないと、ただのポップな曲に感じるかも知れないけど、歌詞を読むとすごくダークで、考えさせられることがたくさんあるんだ。“Oh No”にサックスソロを入れたのは、入れない手はないと思ったからだよ。いい音になるなら何でもやってみようという気分だったんだ。自分たち的には特に大胆なことをしたつもりはなかったけど、みんなすごく驚いているみたいだね。でも俺たちの好きなエレクトロニック系のバンドでもサックスを使っているところもあるし、俺たち的にはそんなにヘンなことじゃないさ」

――アートワークも、真っ黒な中にタイトルが小さく書いてあるだけど、ものすごくシンプルですよね。アルバムのタイトルや歌詞も含めて、全体に共通するテーマ等あれば教えてください。
「アルバムもアートワークはダークに見えるけど、中を開けるとすごくカラフルなんだ。コントラストがあって面白いよ。アルバム全体に共通するテーマは…うまく説明するのは難しいけど、ダークな中にも明るい要素があるというか、落ち込んだりしたときこそ、物事のベストな部分が見えることがあるとか、そういう感じかな。アートワークでもそれを表現しようとしたんだ。タイトルの『THAT’S THE SPIRIT』もその一環なんだ。日本語でも似たような言葉があるかどうか分からないけど、イギリスでは、何も言いようがないときに使う表現なんだ。でもその言葉を使うことによって、現状を受け容れて少し気分が楽になって、前に進むことができるというわけさ。みんなが現実に打ちのめされそうになったとき、このアルバムを聴いて明るい方向へ進んでくれたら嬉しいよ」

――日本ではここのところLOUD PARKやKnotfest出演で来日していますよね。でも今のBMTHにはそういったメタルフェスよりも、より幅広いジャンルが出演するフェスのほうがマッチすると思います。
「そうかも知れないね。俺たち自身ポップス寄りのフェスでやるのも好きだし。色んなタイプのバンドが出ているのはいいね。普段一緒にツアーしないようなバンドを観ることができるから。日本でもそういうフェスにも出られるようになるといいね。次に日本に行くとしたら来年だろうね。まだ何も決まってないんだけど、日本にはまたぜひ行きたい。いつもサポートしてくれて、本当にありがとう!」



text by Yusuke Mochizuki
translation by Sachiko Yasue


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 BRING ME THE HORIZON
 『THAT'S THE SPIRITS』
 発売中