BRUTAL TRUTHよ、永遠に。
ダン・リルカー最後のインタヴュー

2014年をもって、その活動に終止符を打ったBRUTAL TRUTH。
グラインドコア以降のエクストリーム・ミュージックの爆心地にし
て、常に時代の先を行く、偉大なバンドだった。NAPALM DEATH
とともに「DOUBLE TITANS TOUR」にて最後の来日公演を行っ
た際、総帥であるダン・リルカー(b)に話を聞いた。もっとアッサ
リしているかと思いきや、ときおり感慨深げな眼を見せる場面も
あった。

――やはり解散を控えて…となると、こうしてツアーをやったり日本等海外で
ライヴをやったりするのも、気の持ちようが変わりますか?
「たしかに、多少の違いはあるね。これが日本でもBRUTAL TRUTHとして最
後のライヴか…という感慨はあるよ。とはいえ、やることは変わらない。激しい
グラインドコアをプレイするだけさ。とは言いつつ、もしかしたらステージ上で
“あぁ、この曲をやるのももう最後か。あと何回かやりたいな”という気持ちにな
るかもしれないな。まぁとにかく、ステージに上がったらやることに集中するよ」

――今回は昔からいっしょにシーンを作ってきたNAPALM DEATHだけでなく、
日本の盟友のS.O.Bもいっしょですよね。友だちに囲まれた卒業式…とも言え
るんじゃないですか?
「そうとも言えるかもな(笑)。これが最後だと決めた後、最後だからこそスペシャ
ルなものにしようという話になって、今回の日本ツアーが決まったんだ。友だち
に囲まれているんだから、思いっきり激しく、そして最高に楽しいものにできると
思う。それを日本でやりたかったからさ。君の言い方を使えば、俺はこれをもっ
てBRUTAL TRUTHを卒業するわけだけど、大学を卒業したら、そこで得たこと
や学んだことを、仕事に生かすことになるよな。でも俺たちはこの後、なにもす
ることがない(笑)。そこは大きな違いだな(笑)」

――今回のツアーでは、エリック・バーグに代わってダン・オハラがギターを弾
いています。彼について教えてください。
「ダンは2012年の10月に入ってくれたんだ。彼はリッチの別バンドのTOTAL
FUCKING DESTRUCTIONでもギターを弾いている。実はエリックの普段の
仕事先の上司が変わってさ、以前よりも厳しい人になってしまったそうで、ツ
アーのために長い休みを取ることができなくなってしまったんだ。さすがに食
べていくための仕事を辞めるわけにはいかないから、こういう形になった。た
だダンも才能のある奴だから、決して簡単ではないBRUTAL TRUTHの曲も
しっかり覚えて、ここ2年間、バンドを支えてくれているよ」

――今回のBRUTAL TRUTHの解散ですが、あなたの引退が理由だと聞いて
います。なぜその考えに至ったんでしょうか?
「そうだなぁ…引退、という言葉を選んだのは、ほかにしっくりくる言葉が見つか
らなかったからなんだ。おかげで誤解を生んでしまったようで、ちょっと申し訳
ないと思っているよ。俺が言いたかったのは、純粋にBRUTAL TRUTHを終わ
らせるということ。BRUTAL TRUTHは、俺にとってはただひとつのフルタイム・
バンドになっていた。レコーディングをして作品をリリースし、ツアーにも出ると
いう意味でね。そのフルタイムで活動するバンドを終わりにすると言いたかった。
理由としては、俺も50歳になって、さすがに若いころよりもツアーがきつくなっ
たのもある。空港のあちこちで待たされた挙句、飛行機が遅れたせいですべて
の予定がパーになる…なんてのもストレスなんだ。とはいえ、ほかにもいくつか
手がけているバンドやプロジェクトがあるから、完全に音楽から引退をすること
にはならないよ」

――そのほかにやっているのは、どんなバンドなんですか?
「今、俺はニューヨークのロチェスターに住んでいるんだけど、そこでローカル・
バンドとして、グラインドコア系のBLURRING、それにブラックメタルのNOK-
TURNAL HELLSTORMをやっているんだ。ほかにもときどき、シェーン(・エン
バリー/NAPALM DEATH)の代わりにLOCK UPでベースを弾くこともあるし、
VENOMOUS CONCEPTもある。そのあたりは続けていくつもりさ」

――音楽を始めたころのように、純粋に楽しみたい…といった感じですか?
「まさにそうだね。ツアーだなんだで移動ばかりになると、バンドを楽しむだけじゃ
なくなってくるだろ? そもそも楽しいから始めたバンドが、いつのまにかストレス
の元凶になってくるのは、本意ではないからさ。もう少しペースを落として、ただ
楽しんでバンドをやっていたころに戻りたいんだ」

――ダンの最初のキャリアであるANTHRAXから、これまでに関わってきた
バンドは、どれもエクストリームなものばかりですよね。エクストリーム・ミュー
ジックにこだわる理由はなんでしょう?
「難しい質問だなぁ(笑)。俺としては、すごく自然にやっているんだ。直感的に楽
しそうだと思ったからこそ、やっているわけでさ。なぜ激しい音楽をやり続けるの
か…考えたこともないよ。多くの人は、年を重ねることで人間的に丸くなったり、
落ち着いたりするものだけど、俺はどうやらそうじゃないらしい(笑)。俺の人生の
哲学として“何も気にしないこと”というのがあるから、それもあるかもしれないな」

――ぶっちゃけ、BRUTAL TRUTHとして燃え尽きたという思いはありますか?
「それは言える。BRUTAL TRUTHとして最後にリリースしたアルバムの『END
TIME』(2011年)はかなりぶっ飛んだアルバムだったし、作り終えたとき、いつ
になく満足感があったのは覚えているよ。君に言われて振り返ってみると、やり
残したことは一切ないと思える。ただBRUTAL TRUTHはその役目を果たした
のかもしれないけど、今のほかのバンドはそれぞれエクストリームで、また違っ
た楽しさがあるんだ。だからこれからどう転ぶかもわからないし、何が残るのか
もわからない。ただエクストリームだという点では共通しているけど、得られるも
のは全然違う。たとえばブラックメタルは、全身の毛が逆立つような感覚になる
んだ。その楽しみがある限りは、やり続けるよ」

――これからもやっていくバンドで、ツアーとまではいかなくとも、休暇を使って
遠征ライヴを…という可能性はありますか?
「地元でやっているバンドだからといって、閉じこもっているつもりはないよ。ただ
メンバーのなかには普通の仕事をしているやつもいるから、あまり長期に渡る遠
征は難しいだろうな。でも、機会を見つつ少しは遠出をしてみるのもいいかもしれ
ない。パスポートを持ってないメンバーもいるからさ(笑)。どれも朝食を食べなが
ら、“いっちょやってみるか”なんて話からスタートしたバンドだから、規模の大き
い活動をするための下準備はまったくできていないわけで。まぁ、追々考えるよ」

――エクストリーム・ミュージックは、誰よりも速く、重く、激しいことをやろう…と
いうマインドとともに進化してきたものだと思います。BRUTAL TRUTHも、その
進化を促進したバンドだという自負が強くあるのではないですか?
「グラインドコアという音楽の黎明期において、俺たちの存在がすごく重要だった
と言ってもらうことは、たしかに多い。実際のところ、自分たちが面白いと思える
ものを突き詰めて、ノイズやジャズといったメタル以外の音楽からの影響も取り
入れつつ、肉体の限界に挑んで、ひたすらファストにプレイしてきた。それを振り
返って、NAPALM DEATHのようなバンドと並び称されるようになったのは、誇り
に思うよ。これから、激しさというか、スピードやリフのスタイルにおいて、俺たち
に近いところに到達するバンドは現れるかもしれない。でも俺たちはすごくユニー
クな存在だったから、マネをすることはできても、そっくりそのまま同じことをでき
るとは思わないな。こう言ってしまうと、なんだか偉そうに聞こえるかな(笑)。そも
そもBRUTAL TRUTHは、ほかの惑星から来たエイリアンたちが、とんでもなく
激しい音楽をやっているかのようなところがあった。それくらい、人々に違和感を
与えるバンドだったんだ。もしこれから何か新しいバンドが出てくるとしたら、それ
は俺たちとは違った違和感を、世の中にと思う。たとえばフィンランドのROTTEN
SOUNDなんかは、なかなかいいバンドだよ。伝統を踏まえつつ、次の段階に進
もうとするバンドは、必ずいるはずだ。それに、俺たちもいつか死ぬわけだから、
むしろ次の世代が出てきてもらわなきゃ困るよな」

――最後に…ダンにとってBRUTAL TRUTHとはどんな存在だったと言えますか?
「BRUTAL TRUTHが俺にとって何か…強いて言うなら、発散の場だったと思う。
セラピーにもなっていたんじゃないかな。俺はこれまで、人を攻撃したり、殴り合
いのケンカをしたことは一度もない。だから、こういうエクストリームな音楽をやる
のはもちろん、聴くだけでも、体や心、そしてもっと深い魂の部分でもストレスの
発散になっているんだ。…なんだかヒッピーみたいなコメントだな(笑)。BRUTAL
TRUTHをやることによって、ネガティヴな感情や怒りを静め、リラックスできたん
だ。自分の好きなことをやってきたおかげで、いい人生を送って来られたと思う。
健全でいられるだけじゃなくて、それを好きだと言ってくれる人がこんなにもいる
んだから、最高だろ? まぁ、気に入らないというヤツがいても知ったこっちゃねえ
し、Fuck you!! ってところだけどな(笑)」


text by Yusuke Mochizuki
translation by Kazumi Someya
photography by TEPPEI


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