今、個人的に気になってるJPロックバンドの
ひとつが、このFEAR FROM THE HATEだ!

恥ずかしながらライヴを観るまで、彼らの名前すら知らない
に等しかった。昨年10月ハロウィンを間近に控えた夜、渋谷
VUENOSでTHE GAME SHOPの新作『FUTURE GAME』発
売記念ギグが行われた。そのとき出演してたのが、FEAR F
ROM THE HATEだった。その、メタルコアに強烈にエレクトロ
をまぶした音楽性や、しっかりしたライヴパフォーマンスに魅
了され、それからしばらくして昨年末に発売された新ミニ作
『RETURNERS』を聴いて余計、前のめりとなった。フロント
マンのLidyに話を聞いた。



――Lidyくんの、もともとの音楽的なバックグランドはどんなものなの?
「最初はやっぱりJ-POPから入りましたね。それこそL’Arc-en-CielやGLAYなん
かを聴きまくって、そのなかでTHE YELLOW MONKEY(イエモン)と出会ったん
です。これヤバイ! とすごくハマりました。で、イエモンはなぜこんなサウンドに
なったのか、とルーツを辿っていったら、T-REXやデヴィッド・ボウイ、ミック・ロン
ソンという70年代のグラムロックに行き着いて。そのタイミングで、リアルタイム
の音楽を聴かなくなって、70年代の音を聴きまくっていた時期がありました。高
校生になってコピーバンドをやり始めたときも、AEROSMITHだったり黒夢だった
り、イエモンをやりましたね」

――ということは洋楽と邦楽、両方のバックグラウンドを持ってるんだね。
「そうですね。基本はやっぱりイエモンとかですね。そこから洋楽に入り、その時
にやっていたバンドのメンバーからいろいろ影響を受けて、パンクやラウドなロッ
クも聴くようになりました」

――バンドを同じメンバーで長く維持していくのって大変じゃない。FEAR FROM
THE HATEのプロフィールをみると、キャリアはけっこう長いけど、何度もメンバー
が変わっているよね。誰かメンバーが脱退するたびに、活動が止まったりするし、
いろいろと難しいこともあったと思う。これまでを振り返って、バンドをやっていく
上で一番難しかったことってなんだろう?
「メンバーとの、作品に向かうときの考え方を合わせることですかね。ひとつの
作品の制作そのものは早かったりするんですけど、全員が全員、感性が違う
ので、それを合わせるのは難しいです」

――バンドの世界観を築いているのはLidyくんだよね。それを共有できるメンバー
もいれば、できない人もいたでしょう。制作の過程やライヴにおいて、その世界観
を共有できなければ溝も出てくる。自分の世界観をひたすら守りたい、貫き通した
いという気持ちってある?
「それはありますね。ときに折り合いをつける部分もありますけど、自分にしか出
せない魅力っていうのは、なんとなくではあるものの、感覚でわかってきたので。
それが何かって言葉にするとすごく難しいんですけど…。作曲は、まずギターの
Kouichiがデモを持ってくるんです。その曲のイメージをぼくが考えて、それにそ
って歌詞や世界観をどんどん入れていくという作業で進んでいきます。そこでも
僕はこの曲ではどんな立ち位置になるのか、どんな表現をしたら魅力的になるか、
ということは常に考えますね。だからその何かしらヴォーカルへのこだわりや、
守りたい世界観というものは確実にあります」

――Kouichiくんが曲を作る時、事前にLidyくんから「今回はこんな感じで」という
イメージを伝えるの?
「伝えないですね。彼の中の世界観もあるし、こういう曲を作りたいっていう確固
たるイメージを彼も持ってるんで。それにそってデモを上げてくる。何もなしにた
だ作ってみたっていう曲もあるんですけど、いつも“こういうイメージで作った曲だ
よ”っていうのを、僕から積極的に聞くようにしてるんですよ。まず聞いて、そこか
ら自分の世界観や伝えたいことなりをすり合わせていく。そういう作業です」

――Kouichiくんはある程度、Lidyくんの世界観をわかってくれてるのかな?
「そうですね。いっしょに活動するようになって長くなってきたんで、曲が上がっ
てきたときには“この曲はこういう意図で作ってるんだな”とは大体わかるように
なってきましたね。そのうえで、どんなイメージなのかももちろん聞きますけど」

――Kouichiくんから上がってきた曲にNGを出すこともあるの?
「あります、そっちの方が多いです(笑)」

――上がってきたものに対して、「ここはこういう風にできないか」とかいうリクエストも?
「それもあります。もちろん」

――じゃあ完成した曲は、LidyくんとKouichiくんがお互いに納得したものなんだね。
「そうですね。その曲のなかでできることを考えに考えて、全力を尽くします。ヴォー
カルもメロディのつけ方も、何パターンも考えた末、結局ボツになることもすごく多
いし。だからその1曲を作るのには相当時間がかかります。だから時間をかけた分、
納得の曲ですね。妥協してない曲なんで」



――フルアルバムでもミニアルバムでもEPでも、大体1曲目が序曲、イントロだね。
そういうものを作るバンドの作品には、起承転結がある。それがつまり世界観につな
がるわけだよね。世界観のストーリーテラーの役割を担うLidyくんには、1曲目が必
ずイントロということには、こだわりがあるでしょ?
「そうですね。この先も絶対にそれは崩さないですね。イントロ、エンディングにあた
る曲は必ずあります。Kouichiのシンセの音の作り方って、今のラウドロックにはな
いセンスなんです。そこはメンバーとして、すごく誇りに思っています。だからそれを
ガンガン出してあげたいんです。なるべくそういうパートもほしいなということで、単
純ですけどイントロとエンディングでそのシンセの部分を出して、そこにちょっと世界
観というかストーリーをつけるようにしています。全部のアルバムにそれがあるんです」

――初期の頃はどちらかというともっとキャッチーでポップなイメージがあったんだ
けど、作品を重ねるごとに激しさが増していったような気がする。さっき話に出たグラ
ムロックが大ヒットした理由には、ポップ感とかキャッチーさが大きかった。イエモン
もロックバンドとはいえ、J-POPのようなキャッチーなフレーズがあるよね。そういう
バックグラウンドが初期の作品に出ていて、だんだんアグレッシヴに攻めるような作
風になっていったのかな?
「それには理由がありまして…。前回の『1961』(2013年)っていうアルバムが、振り
切った作品なんですよ。初期の『Cursed Screamers For All The Frozen Tears』
(2010年)や『paint a trip party / R.I.P』(2011年)なんかは、それはもうポストハー
ドコア直系の激しい作品だったんです。そのバックグラウンドを持ちつつ、その次の
『Birthday of 12 Questions』(2011年)というアルバムで、うまいことキャッチーさ
とポストハードコア要素が混ぜることができて、ある意味完成したんですよ。じゃあ
次の作品はどうしようとなったときに、今のままじゃすぐに飽きられるし、やっぱり新
しいことをやっていかないとバンドとしても成長しないし、それまでとは違う面もある
ということを強調したくて『1961』を出したんです。これはもうポップというか、聴きや
すい歌ものですね。でも、この時期にメンバーの脱退などいろいろなことが重なっ
て、バンドが停滞気味になってしまった。さぁどうしようとなった時に、2012年に脱退
したベースのHiroを呼び戻して(2014年に復帰)作品を作ろうとしたけれど、そこで
ちょっと待て、と。“ここは一度原点に帰って、激しいポストハードコアというか、ラウド
の部分をもっと強調した作品を作って、再出発の作品にしようぜ”ということでできた
のが、最新作の『RETURNERS』なんです。だから今回はあえて強いというか、激し
い方向にシフトした作品にしたわけです」

――いま正式メンバーがLidyくんとKouichiくん、Hiroくんの3人。ドラムがいないけ
ど、ライヴではサポートメンバーを入れる形でやってるの?
「そうですね。できれば正式なメンバーがほしいんですけど、なかなかドラマーっ
ていなくて」

――バンドは今後、春にシングル3タイトルを全国リリースする予定らしいけど?
「今年は攻めの年と考えていて、リリースもコンスタントに早いスパンでぽんぽん出
していこうかなと。なので『RETURNERS』は3月15、27、28日の東名阪でのリリー
スファイナルで一回区切りをつけて、またさらに次のステージに向けたFEAR FROM
THE HATEの音源を出していこうと思っています。3人とも曲を作れるので、それぞ
れテイストの違ったような曲を、ちょうど3人だし3パターンのシングルとして出すこと
にしたんです。そのシングルを出した後に、またフルアルバムをすぐ出そうかなと考
えています」

――4月から出すシングルはどんな形態でリリースするの?
「それはライヴ会場と、STMの通販限定という形でのリリースになりますね」

――『RETURNERS』のツアーが3月で終わって、4月からそのシングルを出し、そ
の後は次のステージに向かうとのことだけど、次のステージってのはどういうもの
なのかな?
「一応、ラウドロックというものは外れないようには考えています。ラウドロックの基盤、
基軸はありつつも、いろんなことをやりたい、いろんな要素を混ぜたいというのはあり
ます。ラウドロックと呼ばれているバンドの中でも、“これは絶対にできないだろう”と
いうことをやりたいなと思っていて。そこらへん、SiMなんかはすごくうまいなと思う
んです。たとえば民族音楽だったり、ジャジーな感じだったり、グラムポップじゃな
いですけど、それを前面に押し出したようなポストハードコアだったり。そういうミッ
クスの立て方で聴き手に新鮮味を与えていきたいですね。そこらへんは次のフル
アルバムでは考えています」

――去年暮れ、SiMがツアーファイナル公演のMCで「もうラウドロックは終わってる、
これからはモッシュじゃなくてモンキーダンスだ!!」って言ってたよ(笑)。
「うまいというか、すごいと思いますね」

――好きなことをやりたいからバンドなんだけど、好きなことだけをやって活動できる
バンドっていないんだよね。SiMもMAN WITH A MISSIONも、みんなすごく考えてる。
FEAR FROM THE HATEも、バンドがこれまで作ってきた音楽的な実績やベースを
ブレさすことなく、新しいテイストを入れることによって、これまでやってきた音楽をさ
らにふくらませていく、という認識でいいのかな?
「あくまで一本の線は外さないように、FEAR FROM THE HATEというバンドらしさか
らかけ離れることはなく、そのなかでの新しい要素をミックスさせたい…という感じですね」


text by Hiro Arishima


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 FEAR FROM THE HATE
 『RETURNERS』
 Garimpeiro Records
 GR-38 / 発売中