ファット・マイクとスパイクが自画自賛!?
ME FIRST AND THE GIMME GIMMESの新作完成!

NOFXのファット・マイク(b)、FOO FIGHTERSのクリス(g)、
LAGWAGONのジョーイ(g)とデイヴ(ds)、SWINGIN' UT-
TERSのスパイク(vo)の5人からなるパンクロック・カヴァー
バンド、ME FIRST AND THE GIMME GIMMES(ミー・ファー
スト&ザ・ギミ・ギミーズ)。ザ・タイガース、甲斐バンド、THE
BLUE HEARTS等の名曲を日本語カヴァーした『SING IN
JAPANESE』から3年弱、ディーヴァ(歌姫)をテーマにした
最新アルバム『ARE WE NOT MEN? WE ARE DIVA!』を発
売した。PUNKSPRING 2014での来日中に、ビール片手に
ゴキゲンのファット・マイクと、穏やかにコーヒーをすするス
パイクのふたりにインタヴュー

——日本に来る前、ロサンゼルスとサンフランシスコでライヴをしたそう
ですね。
ファット・マイク「両公演ともソールドアウトで、いい感じだったよ」
スパイク「うん、楽しかった。ロサンゼルス公演はサンフランシスコの前日
だったから、いい練習になったね(笑)」

——地元サンフランシスコのお客さんは日本と較べてどうですか?
スパイク「もっと酔っ払ってる」
ファット・マイク「もっとぶっ飛んでる」
スパイク「ロサンゼルスに比べると、サンフランシスコのキッズは行儀が
いいけどね。でも、喜ばせるのが大変なんだ。ちゃんとやらないと、いい
リアクションが返ってこない。日本のファンはやさしいから、ヘマしても盛
り上がってくれるけど」
ファット・マイク「それにしても、今年のパンクスプリングは最高だね。ラ
イナップの中で一番いいバンドはオレたちだから、楽しくなりそうだ。いや、
BAD RELIGIONも出るから、二番目か。でも、カヴァーバンドとしては一
番だね」
スパイク「SNUFFも出るけど?」
ファット・マイク「たしかに。じゃあ、二番目に優れたカヴァーバンドだな」

——最新アルバム『ARE WE NOT MEN? WE ARE DIVA!』がついに発売
になりますね。ここ数年、EPのリリースが続きましたが、フルアルバムの
発売はカントリーの名曲をパンクカヴァーした『LOVE THEIR COUNTRY』
以来、なんと8年ぶりです。
ファット・マイク「新作をどう思う? オレは、前作のカントリーの方がいいア
ルバムだと思うけど」
スパイク「なんで? オレは新作の方が好きだね。カントリーも悪くないけど、
女性の曲を歌うのは、なぜか不思議と楽しい」

——日本人はあまりカントリー・ミュージックになじみがないから、ポップ・
ミュージックを中心とした新作の方が元ネタもわかって楽しめるかもしれ
ないです。
ファット・マイク「そりゃよかった! じゃあ今日、新曲をやっちゃおうかな」
スパイク「こう言っちゃなんだけど、すべての音楽の本質はポップスだと
思うね。カントリーもメタルも、すべてがポップ・ミュージック」
ファット・マイク「マジか? DEATH ANGELもMORBID ANGELも!?」
スパイク「ああ、デスメタルだろうとなんだろうと、大勢のファンが聴きに
きてくれる限り、それはポップ・ミュージックだ!」
ファット・マイク「ポピュラー(=人気)という意味のポップね。音楽産業
の定義をぶっ壊す危険思想だな(笑)。レーベルの存在意義も危ぶまれ
る。ジャンルに特化したレーベルが崩壊する日も近いね」
スパイク「賛同してくれなくたっていいさ。アンダーグラウンド・ミュージッ
クだって、ポップスだ」

——ポップスの新定義はさておき、ひさびさのアルバムということで、一気
に12曲をレコーディングするのは大変だったんじゃないですか?
ファット・マイク「いや、ジョーイがいなかったから、ラクだったよ」

——ジョーイがいない?
ファット・マイク「ジョーイはいつも忙しいんだ。スケジュールを合わせるの
が大変だから、今回はジョーイ以外の4人でレコーディングすることにした。
そしたら異様なほどスムーズに終わって驚いたね。もっとも、ジョーイもアル
バムでは弾いているけど、一緒にスタジオに入ったわけではないんだ」

——レコーディングはどこで?
ファット・マイク「FOO FIGHTERSのスタジオ606!」
スパイク「最高だった!」
ファット・マイク「いくらかかったと思う?」

——普通に借りたら高そうだけど…。
ファット・マイク「タダ! ME FIRST AND THE GIMME GIMMESには、FOO
FIGHTERSのギタリスト、クリス・シフレット様がいるからね! オレたち、いい
メンバーを持ったな」
スパイク「たしかに。ところで、この部屋にいると、なんだか頭がクラクラす
るな。壁がアールになっているからかな」
ファット・マイク「オレは部屋に入る前からクラクラしてるけど?」
スパイク「それはビールのせいだな(笑)」

——テーマを今回、ディーヴァ(歌姫)にしたのはどうしてですか?
ファット・マイク「いろいろ考えているうちに、ディーヴァという最高にざっくり
としたテーマに行き着いただけだよ」
スパイク「こう何枚もカヴァーアルバムを出していると、いいかげんテーマが
尽きちゃって。想像力の限界なのかな」
ファット・マイク「そんなことはないさ。たとえば、レズビアン・ブルーグラスを
テーマにしたってよかったけど、そんなバンドはこの世に少ないからね。しか
も、テーマに合っていればなんでもいいわけじゃなくて、優れた曲である必要
があるし、パンクカヴァーをしておもしろい曲じゃないと。カントリーのカヴァー
アルバムを作ったときも100曲以上試して、なんとか12曲をひねり出した。
ディーヴァに関しても同じで、いい曲がいいパンクカヴァーになるとは限らず、
たとえばブリトニー・スピアーズやビヨンセの曲も試したんだけど、いまひとつ
だったんだ」
スパイク「ブリトニーの“Toxic”はわりといい感じだったけど、マイクは気に食
わなかったみたい」
ファット・マイク「ダンスミュージックとしては優れた曲だと思うけど、コード進
行が少なかったり、メロディが単調だったりで、パンクソングにアレンジしにく
くて」
スパイク「そういうことならわかる。90%賛成だね」

——パンクロックにしやすいという以外、選曲する上でこだわった点は?
ファット・マイク「あまり年代が偏らないようにすることかな。カーペンターズや
ドナ・サマーは70年代だし、80年代のマドンナやカルチャー・クラブ、セリーヌ・
ディオンの『タイタニック』のテーマ曲や、ホイットニー・ヒューストンの『ボディ
ガード』のテーマ曲は90年代だし」
スパイク「クリスティーナ・アギレラや、レディー・ガガまで入っているからね」

——そうした曲を、いつ、どんな風に選んでいったんですか?
スパイク「1年半くらい前だっけ?」
ファット・マイク「そう。ドイツ・ツアー中に、みんなで曲のアイディアを出し合っ
たんだ。一般的にディーヴァと呼ばれる女性シンガーたちの曲で、いいなと思
うものをどんどん挙げて、軽く試し、ダメなら次って感じで」

——ちなみに、世界各国の名曲をカヴァーする『WORLD EP SERIES』を20
11年にスタートさせて、オーストラリア篇の『GO DOWN UNDER』と日本篇の
『SING IN JAPANESE』をリリースしたけど、その後は続くんですか?
ファット・マイク「……怠け癖が、ね」
スパイク「フランスにもイタリアにも、いい曲がたくさんあるのは重々承知だ
けど…」
ファット・マイク「とはいえ、フランスの方がいい曲が多い」
スパイク「イタリアだっていいさ!」
ファット・マイク「じゃあ、二カ国のスプリットEPはどうかな。A面はイスラエル、
B面はパレスチナで」
スパイク「フランスとイタリアじゃないんだな(笑)。もともと、ツアーでよく行く国
の曲をカヴァーする予定だったんだけどね」
ファット・マイク「よし、わかった! じゃあ、イスラエルだけにしよう」
スパイク「いいさ、イスラエルの土地はもともとパレスチナ人のものだったわけ
だし」
ファット・マイク「ヨルダンも入れる?」

——パレスチナ問題は別の機会に話すとして、タイトルが『ARE WE NOT MEN?
WE ARE DIVA!』になった経緯は?
スパイク「これは、マイクのアイディアなんだ」
ファット・マイク「そうだっけ? まあでも、オマエのものはオレのもの。誰のア
イディアだろうと、最後はオレのアイディアになるから、同じことか(笑)」
スパイク「“ディーヴァ”と“ディーヴォ”って、なんか似てるなってところから始まっ
て……」
ファット・マイク「思い出したぞ。確かにオレが出したアイディアだ。ディーヴォ
のアルバム『Q: ARE WE NOT MEN? A: WE ARE DEVO!』(邦題:頽廃的美学
論/1978年)から拝借したんだ」
スパイク「オレたちはいいアイディアを盗むのが得意だから」
ファット・マイク「カヴァー曲のカヴァーをするのもね」

——新作のジャケットにも使われているアーティスト写真で、スパイクだけ女装
することになったのは、どうしてですか?
スパイク「ディーヴァは誰よりも優れていないと。全員女装したら、誰もがディー
ヴァになれることになってしまう。ディーヴァは特別な存在なんだ」
ファット・マイク「そう、オレたちのディーヴァはスパイクなんだ」
スパイク「いや、オレたちのディーヴァはジョーイだ」
ファット・マイク「少なくともオレではない。個人的には女装って大好きなんだ
けど、人前ではやらないようにしているんだよね。女装はプライベートで楽しむ
に限る」
スパイク「オレは人前でも構わないさ。でも、次回は胸の詰め物はなしにしよ
うかな。どうも具合が悪くて」
ファット・マイク「代わりにシリコンを注入すればいいさ。ああ、おしっこがした
い。行ってきていい?」

——ちょうどスパイクの新プロジェクト、UKE-HUNT(ユーク・ハント)について
聞きたいと思っていたところなので、お構いなく。
ファット・マイク「それはよかった!」
スパイク「UKE-HUNT、もう聴いてくれた?」

——数曲だけ。ドリームポップというか、ローファイでスウィートな、どこか郷愁
を誘う南国風のほのぼのした感じがいいですよね。近々Fat Wreck Chordsか
ら作品をリリースするとか。
スパイク「デヴィッド・ボウイとマイケル・ジャクソンの曲をカヴァーした7インチ
『THE PRETTIEST STAR』を4月に出し、6月にフルアルバム『UKE-HUNT』を
リリースするんだ。友だちのランディとふたりで、サンフランシスコのフィッシャー
マンズ・ワーフで路上ライヴを始めたのがきっかけなんだけど、バンド名から察
しがつくとおり、オレはウクレレ(※ユークはウクレレの通称)、ランディはパー
カッションの担当でね。いろんな人たちが観にきてくれるようになり、メンバーも
ふたり増えたんだ。ベースはLAGWAGONのジョー・ラポーゾで、KELLEY ST-
OLTZなんかと一緒にプレイしているジャマンが、サックス、メロトロン、ハーモ
ニカに、ミュージックソーまで弾いてくれたよ。それと、DANCE HALL CRASH-
ERSのカリーナもビブラフォンでアルバムに参加してくれたんだ。他にもいろん
な楽器の音が入ってて、おもしろいよ。ME FIRST AND THE GIMME GIMMES
はもちろん、UKE-HUNTのツアーでまた日本に戻ってきたいと思っているから、
ぜひ聴いてみてほしいな」

——同じカヴァーバンドと言えど、ME FIRST AND THE GIMME GIMMESとは
異なりますし、パンクロックではないですが、幅広いファン層に響きそうなサウン
ドですね。
スパイク「ありがとう! ところで、マイクみたいなdiarrhea of the mouth(※口
の下痢=口減らずのこと)なヤツのことを日本語ではなんて言うの? 直訳で
日本のファンに通じると思う?」

——“口が下痢してる”だと、吐いていると思われそうだから“おしゃべりクソ野郎”
でどうでしょう。
スパイク「“クソ”が入っているのはいいね! あとで言いたいから、紙に書いてくれ
る? オシャベリ、クソ、ヤロー。ファット・マイク、オシャベリクソヤロー(笑)!」


文・権田アスカ/text by Aska Gonda
phorography by TEPPEI, courtesy of PUNKSPRING 2014


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