メンバー3人が語るHOOBASTANKの
これまでと今、そして今後

2014年11月、HOOBASTANKが2年ぶりに来日した。最近
作『FIGHT OR FLIGHT』発売に伴う3度目の来日だ。東京
公演の開演前、ダグラス・ロブ(vo)、ジェシー・チャーランド
(b)、クリス・ヘッス(ds)に話を聞いた。当初ダン・エストリン
(g)も同席する予定だったのだけど、急遽行方知らずとなっ
てしまい(ONE OK ROCKのドレッシングルームにいた)、
時間も限られてたため3人でスタートした。

ダグ「前回会ったのって2年前だっけ?」
――そう。赤坂BLITZで。取材して、ライヴ観て、終演後にいろいろ
話したんだよ。
ダグ「オレたちがライヴをちゃんと演ってたんならイイよ(笑)。会場
の外で弁当売ってたとかじゃなくて(笑)」
全員「アハハハっ!」

――ダグとクリスに聞きたいんだけど、今回の来日で何回目だか憶
えてる?
ジェシー「うわ…オレには答えられない」
クリス「20回目とか?」
ダグ「オレも20回くらいかと…バンドとしてね」
クリス「ん、17回目?」
ダグ「それ近いかも」

――17回目が答え?
ダグ「違うかも。だけど近いハズ…」
クリス「だな」
ダグ「もしかして、ちゃんと数えてる?」

――まあ、そんなとこ(笑)。
ダグ「マジかよ(笑)」
クリス「実は巧妙な質問だったんだな(笑)」
ダグ「お手上げだよ(笑)。で、何回目?」

――今回で11回目。
ダグ「それだけ!? ウソだろ!?」

――ウソじゃないよ。
ダグ「そんなのウソっぱちさ。絶対それより多いハズ」
ジェシー「今回はオレにとっては5回目の来日」
クリス「わかった。信じるよ(笑)」
ダグ「11回より多い気がするんだけどなぁ(笑)。じゃMTV Video Music
Awardできたのを入れて12回だ!(笑)」

――飛行機乗るときとか数えない?(笑)
ダグ「もちろん数えるさ(笑)」
クリス「カウンター使ってね。飛行機に乗ったらカチッて押すんだ(笑)」

――そうして何回もきてるから日本についてめっちゃ詳しいでしょ?
ダグ「うん。ダンは昨日DOMINO PIZZAを食べてた。日本の伝統的食文
化だよね…ってのは冗談(笑)。あのさ、ひとつ聞いてイイ?あの黒いハン
バーガーってなんなの(筆者註:BURGER KINGの黒バーガー。現在は
販売終了)? あれどうなの?(苦笑)」

――アレはオレもビックリこいた。「ぇっ?」て(笑)
ダグ「日本にくる前にオンラインで見たんだ。で、大阪で見つけ、これか!っ
て思った。友だちが”試してみようぜ”って一個買ってきたんだけど”冗談だ
ろ?”って(笑)。食べる勇気が湧かなかったよ…」
通訳さん「今カリフォルニアなどで旨味って流行ってるじゃないですか? 」
ダグ「あのバーガーに旨味なんてあるの(笑)?」
クリス「あのバーガー、日本じゃ流行ってるの?」

――知らないよ。興味なし(笑)。
ダグ「キミすらも興味なしとはね(笑)。あれは旨味じゃなくてお尻だね(笑)。
味も合わなかった」

――来日してサマソニだったり単独だったり、アコースティックライヴだったり
米軍の慰問ライヴだったりっていろいろやってきたじゃない。もちろん毎回毎
回楽しめてるでしょ?
クリス「うん、くるたびにね」
ダグ「だから日本を離れるときってホントに寂しいんだ。他の国でプレイすると
きテンションが下がってしまう。日本ほど楽しくないから。マジで」
クリス「今回の来日の後シンガポールと台湾、そしてハワイにいくんだけど気
が乗らないんだよ。日本がよすぎるからね」
ダグ「いつもそうさ。今回も順序が逆で、なんだかフィナーレ(日本)が最初に
きちゃったって感じ。ハワイももちろん綺麗なところでイイんだけど、観客がメ
ローすぎてさ(笑)」
クリス「ハワイにいけるなんて、普通はワクワクするもんなんだけど(笑)」
ダグ「そうそう(笑)。だけどオレたちは”えー、三日もハワイ?”って(笑)」
クリス「それほど日本の観客のエナジーがスゴいってことさ。シンガポール
もハワイも、日本の観客とは違うんだ」

――日本のファンの存在って、HOOBASTANKにとってものスゴくデカいでしょ。
みな熱心だし、忠実だし、歌詞もちゃんと覚えてるしで。
ダグ「来日の回数も数えてるし(笑)」
クリス「スゴく大切だよ。どこの国のファンよりもね」
ダグ「今はそれをより強く感じる。ファンのおかげでいまだにこうして日本でプ
レイすることができてる。最高だよ。特に家に帰って子供のオムツを替えてる
ときとかにそう思うんだよね(笑)。そういう生活を送りつつもこういう活動がで
きてるのは、まさにファンのおかげだよ。みんなのサポートがなかったら、ずっ
と家にいてオムツを替え、ここまでは楽しくないライヴをいくつかやってるって
生活になってると思う。だから今こそ、ファンひとりひとりにお辞儀をして感謝
したいよ。ホントに光栄だね」

――今年(2014年)で結成20周年。メジャーデビューしてから13年になるよね。
ダグとクリスは最初からバンドにいたわけだから、ずいぶん長くやってきたなっ
ていう実感ってある?
クリス「それは年をとったっていう実感ってあるかってこと(笑)? まあ今年で
40歳になったけど…」
通訳さん「見えませんね」

クリス「ありがとう。だけど最近老け始めてさ(笑)。バンドがどうのこうのいうより、
3年前に子どもが生まれたとき一番年を感じたよ。バンドにいるぶんには20歳の
ときと同じ感覚だけど」
ダグ「それって、まだオレたちがアマチュア、素人って意味だぜ(笑)」
クリス「だな(笑)。だけど生活の変化を見ると大人になったなと思う。あとはライ
ヴ後回復するのにも時間がかかるし、筋肉痛もなかなか消えない(笑)」

――長く活動してきて、特にダグとダンとクリスはつき合いが長いし、マークー(ラ
パレイネン:メジャーデビュー前からしばらく在籍)が辞めた後、正式な後任を決
めるまでにものスゴく時間がかかったよね。で、ジェシーの加入でやっと布陣が
落ち着いたわけだけど、ジェシー、3人の鉄壁の絆があったことから自分はアウ
トサイダーだというような疎外感ってなかった?
ダグ「言葉選べよ(笑)」
ジェシー「だな。オレとしての6回目の来日のときもここにいたいから気をつけな
いと(笑)」
ダグ「ライヴ中、女子ファンがオマエに叫んでるのを聞いただろ?ひとりでも戻っ
てこれるさ(笑)。で、”ジェシ~~~!!”ってキャーキャー言われんだよ(笑)」
ジェシー「ハハハハハ(笑)。質問の答えはyesでありnoでもあるよ。彼らはスゴく
ツルみやすいんだ。性格的に仲間になりやすい。と同時に、すでに彼らは16年ぐ
らいバンドをやってたわけで、オレはそこにいきなり加入した。5、6人目のベーシス
トとしてね(笑)だからプレッシャーはあったよ。たとえば今回のように来日してると
きとか。曲を熟知してるファンがいて、みんなバンドのすべてを把握してる。そこで
オレが出てきてなにかやらかしてしまったら…アイツなんなんだよ!っていうより、
みんな自分たちのお気に入りの曲が汚されてがっかりしてしまうだろうから。だか
らステージでファンのために、ほかのメンバーのために上手くやらなきゃっていう
プレッシャーは常にあった。ま、今は全然気にしてないけどね(笑)。前は責任を
感じることが少なくなかったよ」
ダグ「もし今の状態をわかったまま時間を戻せるなら、ジェシーとバンドを始める
だろうね(笑)。かなりの時間の節約になる」
ジェシー「オレの人生も違ってたかも」
ダグ「今、オマエ32歳だっけ?」
ジェシー「そう」

――バンドって長くやる場合、好きな音楽が一緒だとか、やりたい音楽の方向
性が同じだとかっていうことだけじゃ難しいと思うんだ。ジョークのノリが合う合
わないとかでも左右してくるじゃない。
ダグ「そう、まさに結婚と同じさ。この子と寝たいから結婚しよう!ってわけには
いかない(笑)。たくさんのレイヤーのコネクションが必要なんだ。で、やっぱコ
ミュニケーションをとりたいと思えるメンバー同士じゃないとね。男だから大変
だし、エゴを見つめ直すのも大事だ。それって簡単じゃないよ」
クリス「エゴがバンドを壊す一番の要因だと思う」

――なぜ20年もこのバンドを続けてこれたと思う?
ダグ「逆にHOOBASTANKをやってなかったらなにができてただろう(笑)。バン
ドはもうやりたくない!って投げ出しても、ほかになにもできないから。これこそ
が、オレができることなんだ。当然、毎日がエキサイティングなわけじゃないし、
すべてが楽しいわけでもない。ほかの仕事と同じさ。と同時に、すばらしいこと
もたくさんある。たまに自分をつねって“こんなに楽しいライヴがいまだに演れて
るなんて夢かな?”って思うときもある。不便なことがあっても、個人的な問題が
あっても、それはちっぽけなこと。大きな楽しさへの生け贄なんだ。特に大きな
成功を成しとげたミュージシャンやバンドの多くが、それを忘れてしまってると
思う。エゴが出てくるんだ。やっぱ、自分はただのひとりの男だってことを肝に
銘じとかないとね」
クリス「自信とエゴって違うんだよ。自信は持つべきものだけど、エゴは違って
…自信がエゴに変わってしまうことも多い(苦笑)。エゴは間違った自信。たま
に振り返り、自分が間違ってると自覚することも大切なんだよね。どんな関係
においてもそう」

――ジェシー、こういう訊き方もなんだけど加入後ほかのメンバーから強い
エゴを感じたことはある?
クリス「言葉注意ね…(笑)」
ダグ「ジェシーの心中はまさに“オレ、この質問に答えなきゃダメ?”って感じ
だな(笑)」
クリス「誰にだってエゴはあるから、答えはyesで正しい(笑)」
ジェシー「クリスの言うとおり。もちろんそれはあるさ」
ダグ「それがどんなときなのかを説明してもらわないと(笑)」
ジェシー「たとえば今だね。ダグの態度は最低…ウソウソ(笑)。“The Reason”
や“Crawling In The Dark”を書いたのはスゴいと思うし、ステージでそういう曲
を彼らと演るけど、オレも一緒にその曲を書いてたら、自分のエゴは今もっと大
きなものになってたと思う。そんな成功を経験してるにもかかわらずそれを誇大
妄想にしないのは、彼らの性格のよさの証だろうね」

――今出た“The Reason”のウルトラ大ヒットって、バンドにたくさんの恩恵
をもたらしたよね。だけど、それがあったからこそ逆にスゴく難しくなったって
こともあるでしょ。
ダグ「あの曲のヒットは諸刃の剣だったよ。よかった面はオレたちにたくさん
のドアを開けてくれたこと。それまで届かなかった音楽ファンにも、オレたち
の曲を届けることができた。ロック界で人気が出るのには時間がかかるし、
ポップ界でそうなるのはさらに難しい。そんな大きなシーンに受け入れられ
るようになったのは、まさに成功の証だと思う。だけど同時に、あの曲自体
がバンドよりも大きくなってしまった。特にアメリカじゃ。HOOBASTANKそ
のものより“The Reason”という曲名の方が知られるようになってしまい、
そこにハマった。そこから抜け出すために戦いつつ、そこに住み続けてた。
どちらを成功と呼べるのかはわからないけど、当時はあそこから抜け出す
のにかなり苦労したよ。“The Reason”みたいな曲がまた聴きたいってい
う期待だらけのとこ。それだけが求められてたから、そこから抜け出すの
はかなり大変だったよ」
クリス「日本は違ったけど」
ダグ「そう。バランスが大切なんだよ。その成功やバンドの歴史を受け入れ
ることも大事だし、戦いすぎることもよくない。それと同時に、それ以上のな
にかに挑戦することも重要なんだ。そのバランスって難しいけどね」

――“The Reason”ってホントいい曲だよ。だけど、そういうを曲を一回世に出し
てしまうと、メジャーレーベル所属だとなおさらその続編を求められる。だけど、
アナタたちはそれを頑なに拒否してきたよね。『THE REASON』に続くメジャー
3枚目『EVERY MAN FOR HIMSELF』(2006年)を聴いたとき、ハッキリそれを
感じたよ(笑)。実際“The Reason”の続編は作りたくないっていう想いは強かっ
たでしょ。
ダグ「そのとおりだよ。正直、心のどこかじゃイヤだとも思ってた。ダンが“The
Reason”に似てる曲を書いてる時点で止めてた。曲が完成する前の時点で
ね(笑)。“似すぎてるからやめよう”って。そんなことが何度かあったよ。まあ、
そこにはエゴもあったのかもしれないけど…。とにかく曲の方がバンドより大
きくなってしまい、それに対抗する、みたいなのは常にあった。あと“あの曲は
自分たちで書いたの? それともレーベルに言われて書いたの?”って聞かれ
たことも多々あった。“『HOOBASTANK』をちゃんと聴いてくれよ。その作品
にだってスローチューンはあるだろ”って何度も説明しないといけなかったん
だ(笑)ヒット曲を意識して書けるヤツなんてひとりもいないさ。自然とそうなる
んだ。だけど『EVERY MAN FOR HIMSELF』以降は作品ごとに、“The Re-
ason”のようなスローチューンをレーベルから求められた。オレたちはもっと
ロックな音楽をやりたかったのにね。“だけど、そうすればもっと成功するよ”
とか甘い言葉を言ってくる。あれは罠だったね(笑)。あの立場にいるのはマ
ジでキツかったよ」

――最近作『FIGHT OR FLIGHT』(2012年)発売からだいぶ経つけど、そろ
そろ次作の構想とかあるの?
ダグ「“よし、みんなで集まって作るぞ!”っていう段階にはまだない。だけどア
イディアは溜まってる。だから作り出せばすぐだと思うよ。来年(2015年)に
は出せたらイイなと思ってる。『FIGHT OR FLIGHT』のときはホントなにもな
い状態から作ってたけど、今回はすでにアイディアがあるからね。そんなに
先のことじゃないと思うよ」


text by Hiro Arishima
translation by Miho Haraguchi
photography by Ryota Mori


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