日本のガールズ・バンド像を完全に
打ち破るMoth in Lilac。その衝撃をあなたも!

正直、前情報いっさいなしに1stアルバム『M.i.L.』1曲目の“Moth in Lilac”を聴いた際は、日本、ましてやガールズ・バンド、さらにはメイン・ヴォーカルがひとりとも思わなかった。クリーン、グロウルを使いこなした多彩なヴォーカリゼイションのayanoをフィーチャーした、ヘヴィ&ハイブリッドな音世界が圧巻のMoth in Lilac(MIL)。リーダーであり曲作りも担当するLisa13をはじめ、メンバー4人にいろいろ訊いた。



――結成のいきさつは? ライヴデビューは2013年8月とのことですが。
Lisa13(g,vo)「もともとあったバンドが私ひとりになり、マネージャーと名前も変えて新しいバンドを結成しようという話になったのがきっかけ。それから、ayano(vo)にはネットで猛獣みたいなヴォーカルがいるという情報を見つけて声をかけ、Haruuna(g)はマネージャーが見つけてきたんだよね?」
Haruuna「そうなんです。千葉でライヴをやった時に知らないおじさんが話しかけてきたんです(笑)。“どんなバンドが好きなの?”と訊かれたんで“最近、MILが気になってるんですよ”と答えたら、“俺、そのマネージャーなんだ”って。でも、その時はメンバーになるならないといった話ではなかったんです。それで2015年の夏、前のギター方が辞めることになり、私自身もこういうバンドがやりたいと思っていたのでメンバーとして活動することにしました」
NaluchaRos(b)「私は2016年に入ってからの参加。地元でバンドをやっていて先行きが見えない中、MILをネット検索で知ったんです。それでYouTubeとかを観たらまたカッコ良くて、押しかけるように“このバンドに入れさせてください”とお願いしました(笑)」
Lisa13「そうやってメンバーが固まり、現在に至るといった感じです」

――MILは2014年にもシングル『Moth in Lilac』をリリースしていますが、今回の1stアルバムこそが実質上の名刺代わりと言えそうですね。
Lisa13「それは確かに」

――“ライラックの中の蛾”というバンド名にはどんな意味が。
Lisa13「これは以前いたドラムと一緒に考えました。まずアルファベットを書いた紙を裏返しにして3枚引き、出てきたのがMとIとL。そこから単語を当てはめていき、“MはMothがいい”と言い出したのはドラムでした。それでライラックには純潔といった花言葉があるとかで、Moth in Lilacでガールズ・バンドとしての体を表すのにピッタリだと思ったんです」

――MILをスタートさせた時のビジョンについても教えてください。
Lisa13「そうですね。まずは他のガールズ・バンドと被らないバンドをやりたいって気持ちがありました。私自身、激しい系の音楽ももちろんなんですけど、同時にゴスとかポジパン(ポジティヴ・パンクの略で、ニューウェーヴ/ポスト・パンク全盛の80年代にイギリスで起きたムーヴメント。ゴスやV系の源流のひとつ)も大好きなんです。そういった意味では、自分の好きな音楽を全部表現できるバンドをやりたいとも。私は日本だと布袋(寅泰)さん、X-JAPAN、AUTO-MOD(80年代より日本ポジパン・シーンを牽引。MILと対バンしたことも)、海外だとKORN、DEFTONES、MARILYN MANSON(MM)、若手で言えばMOTIONLESS IN WHITE(MIW)あたりが好きなんです。その一方でドイツのインダストリアル系なんかも聴くんですよ」

――実際、この1stアルバムにもヘヴィ・ロックを軸にさまざまな要素が盛り込まれていますよね。“The Devil Inside of Me”を聴けば、まさにKORN、DEFTONESが好きなのが絶対に分かるし。
Lisa13「やっぱり普段から聴いてるものなんで染み付いちゃってるんですよね(笑)」

――“Fallen”も、MMが嫌いだと言ったら絶対嘘だし。
Lisa13「逆にKORNやDEFTONES、MMのファンの人がニヤッとしてくれたら嬉しいです。自分もMIWのフレーズにMMの影響が見えたりすると嬉しいタイプなんで。この曲に関しては、根幹となる曲作りをしてヴォーカル・パートとかの世界観はayanoに託したんです。すると彼女からも思いどおりのものが返ってきました」
ayano「さすがにこれはそっち方面だろうなと(笑)。押し殺したような囁き声とかは、映画になっちゃうんですけど、『ダークナイト』でヒース・レジャーが演じたジョーカーの影響を受けてます。それこそLISAが面白い曲を作ってくるんで、自分もこの曲に限らずヴォーカル面であれこれ試したりしてます」

――そんな中、1曲目の“Moth in Lilac”は、IRON MAIDENの“IRON MAIDEN”みたいなイメージなんですかね。
Lisa13「確かに、バンドのテーマ曲として作っています。それで歌詞は、こんなにいい音楽があるのに聴かない君たちって馬鹿なんじゃない? といったことを抽象的に言ってます。実際、ライヴでもオープニングにやって“ほれみろ!”みたいな(笑)」

――のっけから終始ゴリゴリの曲でオーディエンスを潰しにかかるわけですね。自分も最初聴いた時は何だこりゃ!と思いましたよ。それで2曲目の“Words I've Never Said”での女性的で叙情性のある歌声に触れ、2度ビックリ。さらには、多重人格的なさまざまなヴォーカリゼーションの交錯に改めてビックリでした。
ayano「目の前でライヴの姿を見てた人からも“本当に女性なんですか?”って言われますからね(笑)。もちろんテープとか使わず、声も全部自前です。ステージでのアクションが激しいこともあるんでしょうけど(笑)」
Lisa13「MILのライヴの感想って、基本が“ハードコアだね”なんです。しかもジャパコア寄りの(笑)」

――それだけ熱いと。加えて“Words~”には、疾走感があったりヘヴィ・グルーヴで押すパートがあったりと、さまざまな葛藤のせめぎ合いを表した曲に思えます。
ayano「歌詞としてはいろいろ悩んだこともあったけど、やっと自分はここにいるぞ! そして私を見ろ! といった内容になってます。要はファンをはじめ、自分たちを支えてくれている人たちに向けた歌なんです。実際、ステージに出た瞬間にお客さんが待っていてくれると、やっぱり自分の居場所はここなんだって思いますからね」

――また、“One Last Time”のギターからはMY BLOODY VALENTINEに代表されるシューゲイザーの要素を感じ取ったのですが、それは正解ですか?
Lisa13「まさにそうです。このアルバムを買った人で分かる人いるかなぁ、と思いつつ入れちゃいました(笑)」

――なるほど。“invisible”にはグラマラスでセクシャルな雰囲気があり、重低音で唸るベースがまた印象的ですよね。
Lisa13「この曲は“ザ・昔”といった感じでオルタナ、ゴス、ポジパンと私の趣味がモロ。今のギャルバンのコたちが聴いてないだろうなってところを出してます(笑)」
NaluchaRos「MILって独特のリズムがあるじゃないですか。自分は海外の音楽をあまり聴いてこなかったこともあるんで、いろいろ身に付けるのが大変でした(笑)」
Lisa13「このバンドはリズム隊が重要。その土台が狂うとお終いなんです。そういった意味では最高のベーシストが入ったし、アルバムのテーマも実はベースだったりするんです」

――この曲にはベースの上でギターが自由に遊んでる感もありますしね。
Lisa13「ソロのフレーズに関しては、音楽学校で先生だった田中一郎(ARB、甲斐バンド)さん、斉藤光浩(BOWWOW)さんからの影響ですね。そしてそれをHaruunaに弾かせるという。しっかり吸収しろと(笑)」
Haruuna「今まで弾いたことのないソロでしたけど、ちゃんと吸収しましたよ(笑)」

――そしてラップの要素も入ったミクスチャーな“Still Craving”、まさしくメタルコアといった“f.g.f.p.”などを交えつつ、アルバムは叙情性と激しさの構成の妙で聴かせる“Different from me”でクライマックスを迎えると。
Lisa13「これは初めて聴いた人がこのバンドに入りやすいようにと、メタルコアやスクリーモ系典型のグロウル、クリーン、グロウル、クリーンといった構成を意識して作った曲なんです」

――MIL入門編とは気づきませんでした。
ayano「終わり方がまたいいと思います」

――アルバムの最後として余韻を残す感じがありますもんね。
Lisa13「歌詞にもこのバンドのリアルが詰まってますんで(笑)」
ayano「実際に割れた窓から道路を見下ろしたりはしてませんけど(笑)」

――最後に、今後の展望を。
ayano「もっとワールドワイドに行きたいですね。そして日本でももっと活動の幅を広げていけたらなって思います」
Lisa13「そうなんですよ。(韓国ツアーを行ったり、海外のバンドと共演したりと)向こうではそれなりに知名度があるみたいなんですけど、日本ではまだまだ反応が薄い」
ayano「それこそKNOTFESTとかフェスに行く層を取り込んでいけたらなって思ってます」



text by Tsunetoshi Kodama


 Moth in Lilac
 『M.i.L』
 発売中