混沌としたサウンドでシーンを
牛耳る親玉、NEUROSISの新作が登場!!

ポストメタルだ、カオティック・ハードコアだと、呼び方はいろいろある。しかしアンビエンスやサイケデリックさをまとわせた、ずっしりと重厚かつ威厳に満ちたヘヴィロックで、シーンの頂点で揺るがない存在感を放つのが、NEUROSISだ。すでに発売中の新作『FIRES WITHIN FIRES』では、全盛期に勝るとも劣らないパワーとともに、刻みあげた年輪をアピール。神経をひりつかせるサウンドは、さすがに一言だ。今回は新作のことはもちろん、30年以上に渡るキャリアについて、スティーヴ・ヴォン・ティル(vo,g)が、柔らかかつ丁寧な物腰で、真摯にインタビューに応じてくれた。



――NEUROSISは昨年、結成30年を迎えましたね。このフラストレーションの吹き溜まりのようなサウンドから始まったバンドが、多くの変化をしつつここまで続いたことに、メンバーも驚いているのではないでしょうか?
「30周年と聞いて、俺たちの頭に浮かぶのは“感謝”だね。メンバーと出会い、このユニークなサウンドに辿りつけたおかげで、ヘヴィな感情のはけ口を手にしたこと。それによって、このクレイジーな世界でも正気でいられたこと。そして、たくさんの人たちが俺たちの音楽を気にかけてくれていることにね。とにかく、俺たちは恵まれていると思うし、それに対しては感謝が絶えないよ」

――同世代ですし、駆け出しの頃はGREEN DAYやRANCIDの前身のOPERATION IVYなんかと共演もしていましたよね。ビリー・ジョー・アームストロング(vo,g)がNEUROSISのTシャツを着ている写真も見たことがあります。そのGREEN DAYも今年30周年を迎えて、10月に新作『REVOLUTION RADIO』をリリースします。もちろん活動フィールドは全然違いますが、同じ世代のバンドが、スタイルを変えつつも今も活動を継続していることには、なんだか感慨深さもあるのでは?
「そうだね。GREEN DAYは同じ地元で、同時期に出てきたバンドだ。80年代中盤のカリフォルニアは、すごく興味深いシーンがあったよ。パンクロックのライヴに行くと、ハードコアな連中、メタルっぽいバンド、ポップなやつら…と、いろんなタイプのバンドを一度に観ることができたんだ。当時からDIYの精神で続けてきたバンドは、しっかりと生き残ったように思う。そういう意味では、THE MELVINSもそうだ。彼らも、常にアウトサイダーだからね。俺たちに言わせれば、音楽をやめることは想像もできない。音楽をやるために、エゴや障害を排除しているのさ」

――初期はストレートなハードコア・パンクをプレイしていましたが、あなたが加入して以降のNEUROSISは曲が長くなり、民族音楽やノイズ、インダストリアル、プログレッシヴ・ロック、現代音楽等を取り入れていきます。この進化のきっかけはなんだったんでしょうか?
「俺たち自身は、当初から自分たちの音楽にサイケデリックな要素を見出していたように思う。BLACK FLAGやDISCHARGEなんかの壁のようなサウンドはもちろん、JOY DIVISIONのゴシックな感じにも惹かれたし、BLACK SABBATHも大好きだった。ほかにも、君が今あげたような音楽は昔から聴いていたよ。でも、それをどうアウトプットしたらいいのかわからなかったんだ。だから最初の2作はとにかく必死でやって、演奏の仕方を学んだという感じだね。そして『SOULS AT ZERO』(1992年)で、自分たちのいる場所から一歩踏み出した。キーボードやサンプリングを取り入れて、ヘヴィなだけじゃなくて、メロウでサイケデリックな部分も網羅しようと、複雑なアレンジに挑戦したんだ。影響されてきたものを混ぜ合わせ、頭の中にあるとらえどころのないサウンドを再現しようとした…というか、それは今も模索しているよ(笑)。でも『SOULS AT ZERO』は間違いなくサウンド的に飛躍した作品だったし、初めて球場入りを許されたような感じだね。壁を打ち破って理想の音にぐっと近づいた瞬間だった。そしてこのアルバムの曲を何度もプレイすることで、自分たちの音楽の力を理解し、自分たちも音楽と一体になっていった。それによって、『ENEMY OF THE SUN』(1993年)では、音楽でトランスするというか、音楽に導かれて、意識を新しい境地に飛ばすことができることに気付いたんだ。それが、その後の作品の土台作りになったと思う」

――1996年に『THROUGH SILVER IN BLOOD』をリリースする前後から、アメリカで第一回Ozzfest に出演したり、PANTERAのツアーサポートを務めたりしましたね。バンドに勢いがつき、充実こそしていたと思いますが、この作品はNEUROSISのなかでももっとも暗く、激しいものになっています。
「あの頃は精力的にツアーしていたけど、メンバーの私生活で辛いことがたくさんあって、すごく難しい時期だったね。クソみたいなものに囲まれながら戦っていた。それを猛烈な音楽にぶつけたんだ。自分たちのファンを敵のように思っていたわけじゃないけど、聴いた人が不快になったり、怖がるような音楽を作ろうと全力を注いでいるような感覚だった。そういう曲を毎日のようにプレイするのは、肉体的にもきつかったよ。俺たちはステージで音楽そのものになりきろうとする。あのアルバムの音楽になりきるのは、ものすごい負担だった。でも長い地獄のような日々を乗り越えたとき、道を振り返りながら、自分たちが生き残ることができたことを実感した。だからこそ、『TIMES OF GRACE』(1999年)からは、一呼吸を置いて、光と闇の両方を表現したいと思ったんだ」

――今、世界中にポストメタル、ネオクラスト、カオティック・ハードコアと、様々なタイプのバンドがいます。なかでも、アンビエントの要素も取り入れた、長い曲をじっくりとプレイするバンドは、間違いなくNEUROSISが先駆けだと思います。あなたたち自身、Neurot Recordingsを立ち上げる等、自分たちのやっていることを広げていくこと、育てることには意識的だったのでは?
「いやいや、自分たちが何かを生み出したパイオニアだなんて、おこがましいよ。自分たちのレーベルを立ち上げたのは、自分たちの音楽の拠点を作りたかったからなんだ。そして、自分たちがたくさんの人からサポートしてもらったように、俺たちも誰かに手を貸そう…と思うようになった。特定のサウンドではなく、真摯で、個性的で、俺たちの感情に訴えかけてくるものがあるアーティストたちにね。それが恩返しだと思ったんだ」

――実は2009年に、オランダのRoadburn Festivalで、NEUROSISのライヴを見たことがあります。ものすごい熱量と緊張感で、ステージから片時も目が離せず、ずっと妙な汗をかきながら見ていたのを覚えています。ただあの頃のNEUROSISは、年に数本をやるだけで、極端にライヴの数を減らしていた記憶があります。逆に、ここ数年はまた活発にライヴを行っている印象です。
「俺たちは、音楽で生計を立てているわけじゃないからね。そのときにメンバーの生活がどうなっているかによるんだ。2000年前後のあたりでは、ツアーはほぼやめてしまった。それまではひたすらツアーをやって、フルタイムで音楽をやろうとしていたけど、そうするとバランスが崩れていくことが分かったんだ。年間200本もライヴをやらなければ生計が立てられないのなら、音楽的にもそうだし、私生活でも、いい父親や夫にはなれない。だからアルバムを作り続けつつ、ゆっくりと軌道修正をした。理解ある上司に恵まれなきゃいけないから大変だったけど(笑)、今は年間に25本くらいのペースで安定しているよ」

――そして新作『FIRES WITHIN FIRES』ですが、かつてのようなヘヴィさ、ダークさを取り込んだ、激しい作品になった印象です。とはいえ、近年のフォーク的な要素やアンビエント要素による深淵な空気は残っていますね。タイトルと相まって、激しく燃えるもの、消える前に瞬間的に燃えるもの、ゆらめくロウソクと、様々な火の形を表現しているように思いました。
「それは素晴らしい表現だな(笑)。色々な火があるという君の解釈は、パーフェクトで正しいと思う。と同時に、他の誰かの解釈もまた正しいんだ。それぞれのパーソナルな反応に委ねられるものだからね。言葉で表すのは難しいけど…俺たちは、自分たちを音楽と一体化させて、すべてが自然な流れのなかで起こるように探究している。自分の内側の心理的、感情的な生命や、自然界にも影響を受けている。それを、君が言った火も含めて、水や土、空気、スピリチュアルで自然な流れを表現しているんだ。例えば、顕微鏡で細胞のかけらを見てみると、空や宇宙といった、大きな自然を感じられる。どんな生命も、その一部なんだよ。知っていようと、知っていまいとね。身体も、心も、音楽もそう。俺たちはそれを音楽で掘り下げ、表現しようとしているんだ」

――たとえば、ここ数年の活発なライヴが、より激しい作風に発展したということはありますか?
「もしかしたら無意識ではあったかもしれないけど、自覚はしていなかったよ。さっきも言ったように、自然な流れでできたサウンドだよ。俺たちは、それまでにやってきたすべてのことや経験から、願わくば何らかの知恵が生まれて、次のレベルへと進化できるようにと願いながら作っているんだ。俺たちにとって、停滞は死を意味する。幸いインスピレーションの源は無限にあるし、自然な感情の動きや爆発を表現するために、それを活用することができているよ」

――今回も、プロデュースはスティーヴ・アルビニ(NIRVANA、MONO等)が担当していますね。彼とは『TIMES OF GRACE』から、17年に渡って組んでいます。生々しいサウンド作りに定評がある人ですが、やはり彼でなければNEUROSISの作品は作れない…というところでしょうか?
「彼は、昔ながらの素晴らしい技術で、エンジニアとして貢献してくれているよ。でも、彼自身はサウンドに意見を出してこない。目の前に出されたものが、バンドの欲しいものだと理解しているし、それを最も魅力的かつ本質的な形で、ナチュラルに音を捉えてくれる。まさに職人だよ。俺たちが頑張って作った曲を、スティーヴはスタジオでそのままの形で録音してくれる。俺たちがひとつの部屋で演奏している、まさにその通りの音を盤にしてくれるんだ。マイクをセットアップして、生で演奏して録音する。コンピューターで手直しなんてしない。ただプレイするだけの、往年のロックの名盤たちと同じやりかたさ」

――日本には、2000年に来て以来ですよね。今回は久しぶりの日本盤リリースですし、ぜひ再び日本でのライヴを期待したいところです。もうあまり覚えていないかもしれませんが、日本の第一印象は覚えていますか?
「たしかに、すごくご無沙汰だよね。日本のことは忘れられないよ。まだ、あのときしか行ったことがないから。本当に素晴らしくて、クレイジーな体験だった。日本とアメリカは、音楽や映画を通じて共有しているものがたくさんあるけど、日本文化は本当に独特だ。とても美しいと思う。俺たちは欧米らしい考え方から抜け出して、いつもと違った、ユニークに感じられるものに触れるのが好きだし、世界中でそうしたいんだ。だから、日本に行けたときは本当にうれしかったよ。ZENI GEVAやMELT-BANANAとも共演できたしね。でも短い日程で、時差ボケもひどかったし、頭が冴えるまでも大変だった(笑)。だからうまくスケジュールを調整して、できるだけ早くまた行きたい。自分たちの音楽を、また日本に持っていって、日本の人たちと共有したいんだ」


text by Yusuke Mochizuki
translate by Sachiko Yasue


 NEUROSIS
 『FIRES WITHIN FIRES』
 発売中