ジャコビー、PAPA ROCHの
これまでと、新作を語る!

PAPA ROACHが『INFEST』でのメジャーデビューから15年の
節目で、新作『F.E.A.R.』を発売した。昨秋5年ぶりにKNOT-
FEST Japan 2014参戦で再来日した際、フロントマンのジャ
コビー・シャディックスに話を聞いた。本番直前のタイミング
だったけど、ジャコビーはいつもと変わらず饒舌だった。

――PAPA ROACHはこれまでにとにかくライヴを演り倒し、自らを鍛え上
げ、ファンベースも構築してきたバンドです。そうしたことを長きにわたり継
続できてる理由とは?
「オレを駆り立ててるのはロックンロールがとにかく大好きだってこと。音楽
が大好きだし、音楽を作るのが大好きだし、ステージに上がるのが大好き
だ。嫌いなのは移動。空港が嫌いだし、空港のセキュリティも嫌いだし、飛
行機も大嫌い。バスも嫌い。だけどステージに上がったときすべてが報わ
れる。わざわざ地球の反対側までいき、たった50分間の音楽を演る。いく
までは長い道のりだけど、ステージに上がると“オレたちはこのためにやっ
てるんだ!”と思える。だからステージはオレたちがクリエイトすることが大好
きで、アーティストでいることが大好きだってことを日々思い出させてくれる。
それをどう維持していくか? オレにできるのはこれしかないから。音楽を作
り、演るだけ。この世でほかにできることなんてないもの。オレには家庭が
あり、家族を愛してるし家族のことを大切に思ってるけど、世界中を旅して
音楽をプレイするという恩恵にあずかってるんだから、その恩恵を維持しな
いといけないんだよね」

――結成から20年以上経ちますが、これまでたったの2回しかメンバーチェ
ンジをしてない。これだけツアーをやってると、若かったときはいいかもしれ
ないけど、歳を重ね、結婚し、子どもができ家庭への比重大きくなってくると、
それまでとは環境がガラリと変わるわけで、もっとメンバーチェンジがあって
もおかしくないと思うんですけど。メンバー全員がひとつになってる、なにより
の証拠なんですかね。
「そう、オレたちはファミリーなんだ。みんなで一緒に小さな町で育ったんだか
ら。最初のメンバーチェンジはバンドを始めてから1年後に起き、トビンが加入
した。ヤツはこのバンドのメインリフメーカーで、彼と一緒にず~っと曲を書い
てきた。オレたちは互いのことをちゃんと理解してる。“犬のようにケンカする”っ
て言いたいよ(笑)。犬って、相手の犬を攻撃し顔に噛みついたりするけど、2分
後には互いの尻を嗅ぎ合ってるだろ? オレたちはそんなふうにケンカをする。
興味深い関係だけど、このバンドのメンバーの間柄は愛とリスペクトにあふれ
てるんだよ」

――もしかしてメジャー2枚目『LOVEHATETRAGEDY』(2002年)というタイト
ルは、そういうバンド内の成り立ちからきてるとか?
「これまでのところオレたちに起きた唯一の悲劇はドラマーが交代したこと。
デイヴ・バックナーはツアーに出るのがツラくなってしまったんだ。ドラッグ
にヤラれちまったんで、オレはツアーで兄弟が命を落とすところなんか見た
くなかった。だからヤツはリハビリしないといけなくなり、バンドのためにもヤ
ツ自身のためにも、ヤツは身体のことを優先させ、オレたちはそのまま続け
るのが一番だという結論に達した。そしてトニー(・パレルモ/ds)を入れたけ
ど、ヤツはもう完全にオレたちの一員さ。加入から7年経つけど、ヤツはこ
のバンドにピッタリさ。性格もすばらしいし、ホントにすばらしいドラマーでも
ある。まるで炎のようさ。デイヴ・グロールがドラムを叩くと強烈だろ? ヤツ
にはデイヴ・グロールがちょっと入ってる。だからヤツのことを“グロールし
てる”って言ってるんだよ(笑)」

――2000年にメジャーデビュー作『INFEST』を出した頃のPAPA ROACHっ
てホントにアメリカでスゴかったです。まるで嵐を引き起こしたかのような大
成功を手にしたわけで。その反動もあったのかもしれませんけど、それから
しばらく経った時期にちっちゃなクラブツアーに戻ってなど、浮き沈みもあっ
たものの、そういう時期をちゃんと乗り切ってるっていうイメージがあります。
「ガレージでプレイし、25~30人の前でしか演ってなかったちっぽけなバンド
が、じきに200~300人の前でプレイするようになり、その後リムジンや飛行機
に乗り、何千人もの前でプレイするようになったけど、富や名声にどう対処す
ればイイのか、当時オレたちにはわからなかった。それで、まるでロケットの
ようにトップまで上りつめたとき、“なんてこった! 下まで随分あるな!”と思った
わけさ(笑)。だから一度元の場所に下りないといけなかった。そして、再びオ
レたちが信じてた音楽を演るようになった。そのおかげでバンドは救われた。
音楽とファンと、苦しかったときに粘り強くやれたのがよかったと思う。ライヴ
にあんま人がこなかったり、Tシャツがあんま売れなかったり、作品もあんま
売れなかったりしたとき、なぜオレたちはこんなことしてるんだってきちんと
把握しなきゃいけなかった。それは、オレたちが音楽を大好きだからさ。あり
がたいことに、オレたちはまた上り調子になった。すばらしいよ。KNOT FEST
JAPANに出られたし、フェスティバルのスロットもすばらしい。波瀾万丈では
あったけど、オレはこんな人生を気に入ってるよ」

――活動状況が低迷し、いいときよりいろんな意味で凹んでるときって正直
心折れません? Ozzfestやアリーナ会場でライヴを観た後、しばらく経った
頃とてもちっちゃなクラブでライヴを演ってたことにビックリして。その規模の
格差はかなりのものでしょう。
「今のオレたちのキャリアでも、場所によっちゃ会場の規模は違う。イギリスで
5,000人収容の会場でガッチリやったかと思うと、アメリカのルイジアナ州じゃ
1,500人収容のクラブでやったりする。オレたちはただ前に進むだけ。楽な仕
事じゃないけど、オレたちはこれで家族を養ってるんだし、オレたちがクリエイ
ティヴな面で表現する場もここだから、やるしかないんだ。コントロールできる
こともあれば、できないこともあるんで、続けていくしかないのさ」

――ここまでの話を聞いてると、「音楽が好きだからこそ、ここまで続けてこれ
た」というさっき言ったことにさらに説得力が出てきますね。
「それはオレが生まれながらにして持ってるものだから。“これがオレのやるべ
きことかな?”って思うたびにそうだってことを必ず思い出す。特に新作制作をし
たとき、まだ作れるのかって思ったよ。オレにまだ曲が書けるのか、やりたいと
思ってるのかって。でも曲を書き始めたら“なんだ、できるじゃないか!”って(笑)。
オレはとにかくロックンロールが大好きなんだよ」



――ジャコビーにとってロックンロールっていうのはスピリットであり、ソウルで
あり、かつモチベーションであり、自分自身に元気をくれるものですね。
「そう! ロック、メタル、パンク、ポップ、ヒップホップ…。その前に、オレは人間
が大好きでね。で、音楽は人間のクリエイティヴィティの延長なんで、一致す
る。他人の音楽のなかに彼らの心の痛みを感じて共感すると、“オレは1人じゃ
ない”って思えるんだ。もちろん、AC/DCやAIRBOURNEのように楽しんでゴ
キゲンなパーティロックソングを演ってる人たちも大好きだよ」

――『INFEST』が出たのが2000年で、そのときはいわゆるラップとメタルの
クロスオーバーが流行り、同作には最大のヒット曲でその手の“Last Resort”
がありました。ただ、それ以降、徐々にラップ色が薄れていってます。その音
楽的変遷とは?
「ロックシンガーとしての自分を証明したかったんだ。『INFEST』で成功する
ことができたんで、“さ、次はなんだ?”となり、ヴォーカル面を追求し、自分
になにができるか見てみたかったんだ。ちなみに、新作にはまたラップを入
れた曲がいくつか入ってるよ」

――“Warriors”や“Gravity”ですね。
「そういった要素をまた取り入れるのは楽しいよ。前作『THE CONNECTION』
(2012年)にもラップしてる曲が2、3曲ある。それが前のようにバンド一番の原
動力になってるわけじゃないけど、オレが大好きでリスペクトしてるものだから、
オレのなかに常にある要素ではある。ただ音楽がなにを言わんとしてるのか、
オレがどんな気分でいるかは、作品毎に変わる。それにしても、ニューメタル
サウンドをまた取り入れてる若いバンドがイギリスから出てきてるのは嬉しい
ね。流行り、そして廃れたジャンルの音楽がまた戻ってきてスゴくエキサイティ
ングだよ。当時12歳だったキッズが25歳になった今、ロックバンドを始めてる。
OF MICE & MENっていうバンドがいるんだけど、彼らもまたニューメタルから
の影響を音楽に取り入れてる。オレたちが若いバンドに影響を与えられたなん
て光栄だね」

――ラップ色が薄らいできたと同時に歩調を合わせるかのように、サウンドが
よりメロディックに、ヘヴィになってます。ダークな雰囲気はずっと変わらずで
すけど。
「同感だね。オレたちが聴いている音楽のなかにはよりダークなものが間違い
なくあるんで、それがこのバンドに影響を与えたんだろう。オレはこの世界には
ダークな部分があると思ってる。自分自身のなかにもダークな部分があり、そ
れに取り憑かれることもある。頭をヤラれちまう。だけど音楽がそれを乗り越え
させてくれるんだ。オレにダークな部分と向き合わせ、それを理解させてくれる
んだ。自覚することがあり、それを音楽に取り込むっていうのは、いつだってエ
キサイティングさ。オレはこれをやるために生まれてきたんだと思う」

――『LOVEHATETRAGEDY』、“love”は違いますけど、“hatetragedy”は、新
作のタイトルが『F.E.A.R.』ということもあり、歌詞もダークな方、決してハッピー
ハッピーじゃない方が中心ですね。
「今回は時間をかけ、一歩離れ、自分の人生、行動、願望、気持ち、そして弱さ
を見つめ直し、オレが何者であるかの核心に迫ることができたんだ。オレのなか
にはある種の壊れた感じがあったんで、それを修復した。よりよい人間になろう
とした。自分の恐怖と向き合うと…恐怖というのは人が思ってるものに過ぎない
けど、その人の意思決定を、他人の扱い方をと、オレたちが人生でできることを
支配することができる。だけど恐怖を通り抜けて向こう側にいくことができると、
それが単なる気持ちの問題であることがわかるようになる。オレが恐怖に支配
されてたとしたら、ステージで“オレはシンガーになりたい”なんて言わなかった
かもしれない。オレは歌えなかった。だから何度も何度も失敗しないといけなか
った。そしてついに、今の技を手に入れたんだ。だけどステージに上がってロッ
クする根性がオレになかったら、どうなってただろ? だからオレにとっては、自
分のダークな部分と向き合うことにより自分のなかにある光が見つかるんだ」

――つまり歌詞は非常にパーソナルなものが多いと?
「いつだってそうさ。オレはいつだって、自分や自分の周りの人たちに直接起こっ
てることを書く。この世にはそれしかないだろう。音楽が、食べ物が、友達が、精
神性があるけど、大半は人との関係さ。自分との関係、家族との関係、友達との
関係、恋人との関係があり、その関係は良いか悪いかのどちらか。オレはその
ことについて書いてるんだ」


text by Hiro Arishima
translation by Mariko Kawahara


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