インスト・メタルの若き雄、
POLYPHIAが初来日!!

『MUSE』と『RENAISSANCE』の2枚同時リリースにて日本デビューを飾ったインストゥルメンタル・メタルバンドPOLYPHIAが初来日。残念ながら東京公演1回のみではあったものの、多くの観客が詰めかけ、超絶技巧を駆使した楽曲をフルセットで披露した。その翌日、ティム・ヘンソン(g)、スコット・ルペイジ(g)、そしてクレイ・ゴバー(b)の3人に初の対面取材を行ったが、メンバー全員、若くて無邪気、そしておとなしい印象。実際に会って話して、彼らがこれからどんな成長を遂げるのか、ますます楽しみになった。

――メンバー全員、日本は昔旅行や留学で来たこともなく、今回が初めてですか?
スコット「うん、僕たち全員初めてなんだ」

――海外に行くと、空港から出た瞬間に、その国の匂いを感じるっていいますよね。日本に初めて来たとき、醤油の匂いがしたという人もいたりしますが(笑)。
ティム「日本のほうが、アメリカよりいい匂いだよね(笑)」
スコット「すごく清潔な感じがしたよ」
クレイ「なんだか信じられないというか、クラクラするような感じだったね(笑)」
スコット「アメリカなんかはそこかしこにゴミが落ちてるし、ゴミ箱があっても常にいっぱい。でも日本の街に出てみると、道は清潔だし、そもそもゴミ箱がほとんどないよね。みんな、ちゃんと自分で処分してるんだなって思った」
ティム「それと、時間に正確だよね。決まった時間に、ちゃんと物事が進んでいくように思うよ。そんなところがあるだなんて、驚きだった」
スコット「普段はけっこうゆったりしちゃうからなぁ(笑)」

――ライヴのとき、スコットは『ドラゴンボールZ』のフリーザのTシャツでしたね。やっぱり日本のカルチャーに興味が?
ティム「もちろん! 日本のカルチャーにはずっと興味があったよ」
スコット「ケーブルテレビにアニメの専門チャンネルがあったんだけど、それで『ドラゴンボールZ』を見ながら育ったからね。それと、1年くらい前からストリーミングのサービスで、またいろいろとアニメを見るようになったよ」
クレイ「それで実際日本に来てみたら、すべてに圧倒されるような感じだったよ。時差ぼけのせいか、毎朝5時半くらいに起きちゃうんだけど、タバコを吸いながらちょっとあたりを歩いてみると、すごく古い寺院(神社)の横に、近代的なビルが建ってたりする。アメリカでそんな光景はないからさ。本当に面白いよ」

――日本の音楽は知ってました?
ティム「そこまで詳しくはないけど…KASHIWA Daisukeは好きだよ。You Tubeでたまたまスピードペインティングの動画を見たんだけど、そのBGMがすごくきれいなピアノの曲でさ。コメントから彼の名前を見つけたから、音源を手に入れてここ最近はずっと聴いてるね」
クレイ「SNSを見ていると、日本の若いプレイヤーが、僕たちの曲をプレイしているのをよく見るんだ。下手したら、僕たちよりもうまいんじゃないかってくらいの人もいる(笑)。昨日もいっしょにステージに立ってくれたAyumuも、僕たちの曲をプレイしてくれたLi-sa Xもすごいよ。日本のプレイヤーは素晴らしいといつも思ってる」

――昨日、実際にライヴをやってみた感想は?
ティム「最高の一言に尽きるよ。本当に楽しかったし、すごく気合いを入れてプレイできたと思ってる」
スコット「なんだか信じられない感じだったね。初めて来た国で、あんなに大勢の人たちが来てくれるなんて思ってもいなかったから、なんだか非現実的に思えたよ」 クレイ「感謝しかないね。自分たちとは違う環境や文化のなかにいる人に対して演奏できるなんて、うれしいし幸運だと思う」

――60分以上のフルセットも、ワンマンライヴも初めてだったそうですね。緊張しました?
クレイ「やばかったね(笑)」
スコット「ずっとそわそわして落ち着かなかった(笑)」
ティム「ステージに立つ前、手が震えてたくらい(笑)。あんなに長いライヴは、僕たちも初めてだったからね。マジで緊張した (笑)。でも、初めてのフルセットが日本でよかったと思うね」

――アメリカやヨーロッパと比べて、どうでした?
ティム「日本のオーディエンスは、曲をプレイしていないときはすごく静かだよね。虫の声も聞こえそうなくらい(笑)。アメリカではそうなっちゃうとまずいなっていう感じだけど、日本の人たちはすごく集中してくれているように感じたよ」
クレイ「うん、アメリカ人とはリスペクトの表現の仕方が違うんだなって思ったね。500人以上も人がいるのに静かっていうのは、これまでにないことだったから戸惑ったけど、途中でその本質が違うんだと気づけた。リスペクトしてくれているんだとわかったし、少しずつ気にならなくなったよ」
スコット「自分の呼吸の音までわかるくらいだったから、なんだか笑っちゃったよ(笑)。でもふたりが言った通りだと思うし、ありがたいことだと思う」

――セットリストに“Liftoff”という曲が入っていますが、これは未発表曲ですか?
ティム「これは僕たちじゃなくて、SKYHAVENっていう友だちのバンドの曲なんだ。この曲に参加して、一部のフレーズを書いた。ビデオも作られたんだけど、僕たちも出ているよ。すごくいい曲だし、プレイしていて楽しいんだ。それに初めての日本でのライヴだから、なにか特別なことをやりたかった。それでセットリストに入れちゃおうって思ったんだ(笑)」



――POLYPHIAの曲はティムとスコットが交互にソロをずっと弾いているような感じですよね。それでいて似たようなフレーズがほとんどない。本当に音楽的な引き出しが多いなと、ライヴを観て改めて思いました。いろいろなギタリストに影響を受けた賜物ですかね?
ティム「でも今はもう、ほとんどロックを聴いてないんだよね。むしろ、ギターが入ってない曲のほうが多いかも。ギターをたくさん練習していた頃は、ガスリー・ゴーヴァンやリック・ジョンソン、あとはリック・ブラウンなんかも好きだったな。今はラップやEDMなんかが一番多いかな」

――たしかに、聴く音楽がロックからよりポップス寄りになったとは、以前のインタヴューでも言っていましたね。そのきっかけはなんだったんでしょう?
ティム「2年くらい前からかな。曲作りをしていて、最初に作り上げたものと同じものを作り続けてもしょうがないし、新鮮な刺激がほしくなったんだよね。それで聴くようになったポップスやヒップホップ、EDMなんかの要素を、インストゥルメンタルの楽曲でどうやったら表現できるかを考えるようになった」
スコット「自分たちのスタイルに、自分たちが好きな音楽を新しく取り込みたいんだよね。自分で聴きたいと思えるものを作りたいしさ」
クレイ「これはメタル、これはヒップホップ…という感じで、ジャンルで区別していくのが、人を隔ててしまうんじゃないかな。ポップスの要素は、人々をひとつに繋げることができると思ってる。だから細かくカテゴライズするのではなく、そういった要素を入れて、開かれたものを作りたいんだ。聴こえてきたものが好きか嫌いか、でしかないと思うんだよね」
スコット「音楽については“俺はこれを聴いてるんだぜ”って言いたいだけの人が多い気がする。そうじゃなくて音楽を楽しんで、これがいい曲、あのバンドはかっこいいって、そう言えばいいのにね。そういう風潮のせいで、みんなオープンマインドではなってしまってると思う。自分が作ったカテゴリーの枠から出ようとしなくなるんだ。実際、音楽を作っている人たちはすごく努力しているんだから、ジャンルにそれをあてはめるのは幼稚だし、意味のないルールだと思う。僕たちもミュージシャンとしていろいろな挑戦をしてきたなかで、そういった閉鎖的な考え方は、自分の成長を邪魔するように感じる。だからそういった習慣に縛られないようにしたいね」

――活動初期ヴォーカリストがいて、かつ以前ヴォーカルのオーディションもやっていましたよね。結局今はインストゥルメンタルでやっているわけですが、そのメリット、デメリットは感じますか?
ティム「やっぱりヴォーカルがいないっていうだけで、ちょっとユニークではあるよね」
スコット「でもインストゥルメンタルということで、やりたいことをやるうえで制限がない。それはいいことだよね」
ティム「もしヴォーカルがほしいなと思ったら、ゲストを迎えればいいわけだし」
クレイ「うん、ヴォーカルを絶対入れない…と決めたわけではないからね。EDMなんかでも、曲によってシンガーとコラボしたりするだろ? そんな感じでいいんじゃないかな」

――いっしょにやってみたい人はいます?
スコット「好きな音楽でフィーチャリングされているシンガーは何人もいるけど…」
クレイ「それはまぁ、サプライズにしておきたいよね(笑)」
スコット「そうだね(笑)。あんまり具体的に名前を言うと、そうしなきゃならないような感じになるし(笑)」

――ではそのサプライズが早く訪れることを祈りつつ、今後の活動について教えてください。
ティム「もうすぐ新しいビデオを公開するんだけど、『RENAISSANCE』を再構築したような曲なんだ。10月の予定だから、少し待ってて。それとCOHEED AND CAMBRIAとのツアーが終わったら、ひたすら作曲、作曲、作曲だね。来年の春くらいに、EPなんかが出せればいいなと思ってるよ」
スコット「振り返ったときに、自分たちがやってきたことを誇りに思えるように、今は頑張っているところ。今『INSPIRE』を聴くと、こうすればよかったなって思うところもあるしさ(笑)」
クレイ「あとは30歳くらいになったとき、顔にもっと髭があるといいな(笑)」


text by Yusuke Mochizuki