10年ぶりの来日公演を大成功させたSikTh! 
ここに独占インタヴューを公開!!

10月11、12日の二日間に渡り開催され、トータルで500人以上
を動員したSikThの10年ぶりの来日公演。驚異的なライヴを見
せつけたSikThはもちろん、メインサポートであり企画者である
Cyclamenを含む全出演バンドが熱狂的に盛り上がり、濃密
な空間が繰り広げられた。初日のライヴ前にダン・ウェラー(g)
とマイキー・グッドマン(vo)の二人に話を聞くことができたが、
日本への想いだけでなく、SikThのこれまでとこれからについて、
終始おだやかかつ情熱的に語ってくれた。
ダンの言う通り、SikThはまだまだ限界に達していないのだ。

――10年ぶりに日本に来て、どうですか?
ダン「ものすごく興奮しているよ!」
マイキー「メンバー全員が楽しみにしていたのはもちろんだけど、俺は個人
的にも日本に知り合いがたくさんいるし、思い入れも強いんだ。やっとSikTh
として戻ってくることができたんだから、ステージに立ったら、感極まってしま
うんじゃないかな」
ダン「日本は、最初から僕たちのことを評価してくれていたからね。初めて来
たときはTHE DILLINGER ESCAPE PLANやANTHRAXなんかといっしょに
やらせてもらえたし、その後FUJI ROCK(2004年)にも出演した。どれもいい
思い出ばかりなんだ。だから今回の日本公演は、本当にスペシャルなことな
んだよね」

――再結成以降、イギリスでDownload Festivalに出演し、ヨーロッパでのツ
アーを経ての日本公演ですが、調子はどうですか?
マイキー「以前よりもうまくなったと言われたくらいだよ。ジャスティン(・ヒル)
も俺も、ヴォーカルというものにもっとしっかりと取り組むようになったことが大
きいんじゃないかな。SikThが休止している間、いろいろなアーティストといっ
しょにプレイし、曲も書いた。それで、SikThのメンバー全員が、いかに才能
にあふれた人たちなのかが理解できたんだ。それなのに、またやらない手は
ないだろ?」
ダン「SikThをやるのは7年ぶりくらいだけど、その間にもいろいろな経験を積
んできたからね。単純にそれぞれのスキルが高まったんだと思う。僕個人で
言えば、改めてSikThの楽曲を練習して、細かいところまで研究したときに、
以前の自分にはプレイする際に変なクセがついていたことがわかったんだ。
でも経験を積んだおかげで、矯正することができた。それも以前よりもうまく
なったと言われる理由じゃないかな。それに、年を重ねることで、お互いを尊
敬する気持ちが出てきたんだと思うし、パーソナリティを理解して、合わせる
こともできるようになったからね。もう一度やってみたくなったんだ」

――バンドは結婚のようなもの…とよく言いますよね。一度バラバラになった
人たちがまた集まると言うのは、再婚みたいなものなのではないですか?
ダン「かもしれないね(笑)。思い返すと、活動休止前のSikThは、自分たちが
思っていた以上の成功を手にしてしまったんだ。身の丈に合っていない成功
のおかげで、いろいろなものに感謝する気持ちや、他人への思いやりを忘れ
てしまったんだね。だから些細なことでケンカが絶えなかった。でも一旦離れ
て頭を冷やすことで、お互いに感謝する気持ちを思い出せたんだ。今はすご
く満たされた気分だよ」

――改めてSikThの曲をプレイすることで曲に対する解釈の変化や成長等
は感じました?
マイキー「曲が成長するという感覚は、あまりないかな。もともとテクニカルな
音楽だし、レコーディングの時点で緻密に作り込まれた、完成形のものだから。
そこから曲がまたアップデートされるというよりも、今度はその曲をライヴでい
かに完璧にプレイするか…が課題になってくるんだ」
ダン「うん、SikThの音楽に即興の要素はないからね。ただ、毎回のライヴで
観客からのエネルギーを浴びてプレイすることで、その場所、瞬間だけのエネ
ルギーが生まれることはあるかもしれないな」

――今回のメインサポートであるCyclamenももちろんですが、SikThの影響
下にあるバンドはすごく増えましたよね。そういった現状をどう感じますか?
マイキー「みんなに対して“アリガトウ!”と言いたいよ(笑)」
ダン「たくさんのバンドが、僕たちに影響を受けたと言ってくれることは、本当に
誇りに思う。自分たちにこんな功績があったと教えてもらうようで、とても謙虚な
気持ちになるよ。僕が曲を書くときのモチベーションのひとつに、聴いてくれた人
に強いインパクトを与えたい、というのがある。それはショッキングと言うよりも、
時代を越えてたくさんの人に愛してもらえるような曲を作りたい、ということなん
だ。Cyclamenの勇人(今西/vo)は、僕たちからの影響を公言してくれている
けど、彼らならではの独自の要素を加えていると思う。僕たちのやってきたこと
が誰かの役に立って、次につながっていくことを実感できることは、本当にうれ
しいよ」

――でもSikThの音楽はテクニカルだし、マイキーとジャスティンのヴォーカル
も独特じゃないですか。影響を受けた後輩たちにとって、SikThの存在はすごく
高いハードルになっていると思うんです。後の世代につながっている一方で、
SikThは唯一無比の存在だという自負もあるのでは?
ダン「うれしい評価だね。SikThの音楽を、ほかの誰かが再現するのは間違いな
く不可能だよ。このメンバーだからこそできる、独特のクリエイティヴィティがある
からね。でも、僕たち自身も誰かになりたいとか、誰かに勝ちたいという気持ちで
はやっていなかった。自分たちの個性を大切にすることを、常に意識していたの
さ。だからこそ、SikThは君の言うように唯一の存在になったのかもしれないな。
音楽に限らず、どんなことでも新しいことに挑戦をしなければならない分野と、手
堅く、確実に利益を上げていかなければならない分野があると思うんだ。SikTh
は間違いなく前者で、常に新しいものを求めて走り続けてきたんだよ」
マイキー「でも最近のバンドの多くは、すでに大きくなったシーンのなかに入っ
ていこうとしているように感じるよ。新しいバンドというものは、本来は多くの時間
をかけて、自分たちの表現を模索するべきだと思う。なのに簡単に評価されて、
売れようとしている人があまりにも多いんじゃないかな」
ダン「10年前にビッグで、いろんな雑誌の表紙を飾ったバンドのうち、今も残って
いるバンドはほとんどいないよね。だからたとえ雑誌で大きく取り上げられること
がなくても、自分たちのことを掘り下げて、じっくりと個性と技術を磨いたバンドの
ほうが、人々の心に残ると思うんだ。意図していなかったけど、SikThはそのおか
げで今があるんじゃないかな」

――日本には「急がば回れ」という言葉があるんですけど、そういう考え方なんで
すかね?
ダン「いい言葉だね。イギリスにも“いいものは後からついてくる”という言葉がある
んだけど、同じことを意味していると思う」
マイキー「今の世の中は、セレブやアイドルがもてはやされているし、すぐに有名
になりたい、評価されたいという欲求が高すぎるよ。たぶん、インターネットやSNS
の普及のせいもあるんだと思う。音楽的に実験や挑戦をするバンドはいなくなって
しまった。だからこそ、ダンの言ったように時間をかけて個性を確立することが、印
象的なバンドになる秘訣だと思う」

――もう何度も聞かれていると思いますけど(笑)、SikThは今後どうなるんでしょう?
ダン「まず、しっかりとSikThというバンドを続けていきたい。今はメンバー全員、バン
ドをやることへのモチベーションや愛情がすごく高まっているから、できるだけ長く活
動していきたいと思っているよ。もちろん新しい作品も作りたいとは思っているけど、
まずは出すとしたらスケジュールはどうするのか、制作のための費用はどう捻出す
るのか、どこかのレーベルと契約すべきなのかどうか、いろいろなことを話しあわな
ければならないんだよね」

――逆に言えば、レーベルとの契約もないから締め切りもないし、マイペースでじっ
くりやろう…ということですか?
マイキー「今までの活動を通して、SikThのサウンドがどんなものなのかは理解で
きたと思う。SikThならではの方程式はわかっているから、それを発展させていき
たいんだ。正直に言えば、過去の作品とは比べものにならないような最高傑作を作
る自信はある。俺個人もヴォーカリストとして成長したつもりだし、ほかのメンバーも
ミュージシャンとしてさらに上達しているから」
ダン「ただ理想形がハッキリしているからこそ、いい加減なものを作って、バンドの
名前に傷がつくようなことにはしたくないんだ。むしろ慎重になって物事にあたるべ
きだと思うんだよね。もう成長の余地がないところに来てしまったバンドもいるけど、
僕たちはまだまだ限界に到達していないはずさ」
マイキー「俺のなかにも、たくさんの表現したいことが渦巻いているんだ。実際、金
持ちになるどころか、生活が安定しているわけでもない。ジャスティンは結婚したけ
ど、ほかのメンバーはまだまだ腰を落ち着けていない。世の中には、耳触りのいい、
一見美しいものだけを表現する人もいるけど、俺のなかには美しいものも、醜いもの
もどちらも存在している。機が熟したときに、メンバー全員が感情移入したり、聴い
ていると風景が浮かぶような曲を作りたい。それにはもう少し時間がかかると思う」

――今、自分たちの生活について触れましたよね。たしかにバンドはツアーも作品
制作も大変だし、普通の仕事をしたほうが生活も安定する。それでも音楽を続ける
人たちは「やりたい」というよりも「やらずにはいられない」のではないかと思うことが
多いんですよ。
マイキー「俺にとっては、曲を作ることや音楽に携わることが、セラピーのようなも
のなんだ。生活面では苦労するけど、音楽がないと俺という人間は成り立たない。
そうやって音楽で自分を癒しながら歩いているような感覚だよ」
ダン「たしかに生活は大変だし、普通の仕事を持って、ひまなときに音楽をやるほ
うがよっぽど楽だと思うよ。でも僕はSikThでもほかのバンドでも、曲を書くのが好
きなんだよね。ここ数年間、ほかのプロジェクトで曲を書いたり、プロデュースをす
るときは、SikThのことは完全に忘れていたんだ。でも改めてSikThに戻ると、自分
の中で情熱が燃えていることを実感しているよ。だからそれを形にしていく作業には
時間をかけていきたいね」

――最後に、それぞれ自分にとってSikThとは何なのかを教えてください。
ダン「ずっと音楽の仕事に携わってきたけど、マイキーと出会って以来、やってい
ることはすべてSikThありきだったと思うんだ。僕が今プロデューサーとして活動
できているのも、ギタリストとして評価されているのも、SikThがあったからこそな
んだよね。SikThでやっていたことが、いろいろなことに繋がっていったのはうれし
いことだよ。SikThはメンバー全員で、ゼロからたくさんのものを作り上げてきたか
ら、誇りに思っているけど…改めて言葉にするのは難しいな(笑)」
マイキー「SikThのおかげで世界中を旅することができているからね。たとえばこ
うして東京に来ることができて、みんなが俺たちのライヴを楽しみにしてくれている
のは、すごく光栄だし誇りに思う。でも、SikThでいるというのはとてもエネルギー
が必要なんだ。曲を書くのも、パフォーマンスするのも大変だ。だからいつも居心
地が良いわけではないけど、常に意外性があって刺激的でもある。SikThでいる
ことはすごく高いレベルを要求されるけど、それを越えるための挑戦しがいもある。
SikThをやっていると、ほかにはない達成感を味わえるんだ」


text by Yusuke Mochizuki
translation by Sachiko Yasue
photography by Kenta Izumiya


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