デリックがアルコール依存症から立ち直るきっかけとなった
SUM 41の待望のニューアルバム『13 VOICES』が発売に!!

『SCREAMING BLOODY MURDER』から5年、SUM 41の新作『13 VOICES』がついに登場! ろれつが回らない酩酊状態でPUNKSPRING 2012のステージに立ったデリック・ウィブリー(vo/g)の姿に胸を痛めたファンも多かっただろうし、2014年4月、過度のアルコール摂取が原因で昏睡状態に陥り、命を失いかけたというニュースを聞いて、バンドの終わりを感じた人もいるかもしれない。しかし、そんなデリックを救ったのは音楽だった。オリジナルメンバーのデイヴ・バクシュ(g)がバンドに復活、新ドラマー、ズーモを迎えて5人組バンドとして再スタート、NEW FOUND GLORY、YELLOW CARD、ALL TIME LOWらが所属するHopeless Recordsから発売となった新作は、両手を広げておかえりと言いたい、ポジティヴなエネルギーに満ちた秀作だ。1年前にはモデルのアリアナ・クーパーと結婚し、プライベートも充実しているデリックに、新作への思いを語ってもらった。



——2014年4月、デリックは過度のアルコール摂取が原因で昏睡状態に陥り、闘病生活が続いたわけだけど、入院中、ベッドの上で一番よく考えたことってなんでした?
「音楽だけ。それ以外、なにも考えられなかった。自分には音楽しかないんだっていうことを、ベッドの上で確信したよ。毎日、ホントに一日中、音楽のことばかり考えていたんだ。早く元気になって、また音楽を作ろう、ステージに立とうって、それだけを考えていた」

——最悪の状態で入院したわけだけど、いつごろから前向きな考え方を持てるようになったんでしょう?
「入院してすぐだったと思う。というのも、病院ではまったく動くことができなかったんだ。手足をベッドに拘束されていたから、動くのは頭だけだった。考えることしかできなかったんだ。だから、早くこの最悪の状態から脱しないといけない、そのためにすべきことをしようと、すべてを前向きにとらえるようにして、思っていた以上に早く退院できた。アルバムを作る、ライヴをやるっていうモチベーションがなかったら、リハビリをやり遂げられなかったかもしれないし、ここまで早く復帰はできなかったと思う」

——PUNKSPRING 2016で、最悪の健康状態で立った2012年のPUNKSPRINGと同じ会場に挑むのって、どんな気分ですか? 4年越しのリベンジみたいな?
「最高の気分だよ! いつもライヴの前には少しナーバスになるけど、もうすぐライヴができるっていう興奮から来る、いい緊張感なんだ。確かに前回のPUNKSPRINGには万全の体調ではのぞめなかったけれど、それから努力して前の状態に戻るだけでなく、さらにその上を行って、これまで以上にいいステージができるようになった。だから、今はすごくハッピーなんだ」

——デリックからハッピーという言葉を聞けるなんて、私もハッピーです。
「オレはいつだってハッピーだったと思うよ。人には伝わりづらかったかもしれないけどね(笑)。今もハッピーだし、加えていうなら、今は心身ともにすごく健康だっていうこと」

——オリジナルメンバーのデイヴがバンドに戻ってきたこともファンにはうれしいニュースですが、いつごろから彼と話をするようになったんでしょう?
「2013年かな? デイヴの方から連絡があったんだ。“ハーイ!”って感じで、普通にね。だから、最近なにしてる? みたいな、たわいない話をして、それ以来、たまに話をするようになったんだ。そうこうするうちに、オレは入院し、デイヴはお見舞いにきてくれた。退院してからも1週間くらい一緒に過ごしたりして、それ以降はより密に連絡をとるようになった。アルバムを出すために曲作りをしたり、バンドの環境を整えたりしていく中で、デイヴと一緒にまたプレイするのが自然な気がして、バンドに迎えたんだ。他のメンバーも、デイヴが戻ってきてうれしそうだったよ。デイヴは10年もSUM 41から離れていたわけだから、自分も含め、デイヴを再びバンドに迎え入れる日が来るなんてまったく想像していなかったし、デイヴにその気があるのか、なにを考えているのかさっぱりわからなかったけど、子供のころからの友だちだし、自然に起こったことだから、今のところすべてがスムーズに進んでいるよ」

——新しいドラマー、フランク・ズーモについても教えてください。
「ズーモは昔からの友だちなんだ。出会ったのは2003年くらいだったと思う。ズーモはトミー・リーとすごく仲がよくて、共通の友だちって感じで知り合ったんだ。一緒に遊ぶことはあっても、一緒に演奏する機会はこれまでなかったんだけど、SUM 41にドラムが不在なことを知って、ズーモの方からアプローチがあったんだ。ズーモが優れたドラマーだってことは知っていたし、どんな演奏をするのか見てみたかったから、とりあえず一緒に2、3曲やってみようかって話になった。実際に合わせてみたら、すごくいい感じだったんだよね。じゃあこの曲も、この曲もって感じで、正式に一緒にやっていくことにしたんだ」

——SUM 41はこれで5ピースバンドになったわけだけど、新しいバンドという意識はありますか?
「まったく新しいバンドという気はしないけど、バンドの新しいチャプターが始まったなっていうのは実感している。前よりいいバンドになったし、音に広がりが出たと思う。ギターのトムはキーボードも弾けるし、デイヴは歌もうまいし、ベースのコーンとズーモはバックアップヴォーカルもできるし、バンドが拡大したような感じ。これまで以上にいろんなサウンドにチャレンジできるようになった。ライヴで同期音源を使うバンドがすごく多いけど、オレたちは録音音源どおり、ステージですべて生演奏できるんだ」

——新作『13 VOICES』についても聞きたいんですが、一言で言うならどんな作品ですか?
「タフなアルバムかな。自分の人生でこれまで経験したことのない、本当に一番つらかったタフな時期に制作した作品だしね。アグレッシヴなアルバムだし、ハードなサウンドだけど、楽観的でもあるんだ。人を気落ちさせるとか、暗いとか、そういうんじゃなくて、ハードロッキングだけど、前向きな作品なんじゃないかな。歌詞にも人を高揚させる要素があると思う」

——レーベルとは契約せずに、バンド自らクラウドファンディングを立ち上げて新作のレコーディングを始めたけど、その理由は?
「第一の理由は、レーベルからのプレッシャーを避けたかった。新作を自由な環境で作りたかったんだ。もうひとつは、ファンにもアルバムの制作過程を楽しんでもらいたかった。自分たちもこの新作の一部なんだってことを、最初から感じてもらいたかったんだ」

——指が動かず、楽器の演奏もままならない時期もあったデリックが再び楽器を手にし、アルバムを作り、ステージに立つなんて、ファンも感慨深いと思います。
「そうだよね。ベッドにくくりつけられていたことを考えたら、ステージに再び立ってファンの前で演奏するなんて、想像できなかった。だから今年2月、3年ぶりのツアーでイギリスに行けたときは本当にうれしかったよ。だって、ひどいときは自分の足で歩けなかったんだからさ。理学療法などを積極的に取り入れ、リハビリをして歩けるようになったけど、普通の状態に戻り、病院を出ること自体が本当に大変だったんだ。だから復活後の初ツアーは血の滲むような努力の賜物って感じで、感慨深かったよ」

——ツアーのためにリハーサルもたくさんこなしたんでしょうか?
「うーん、すごくしたというと嘘になるかな。もっとやったほうがよかったかも(笑)。でも、一番のリハーサルは、ステージで演奏することっていうのが持論なんだ。スタジオでリハーサルしながらあれこれ考えるんじゃなくて、まずはステージに立ってみる。2、3回やると、いろいろ見えてくるんだ。人前に立つだけで調子が出てくる。いいツアーにしようと1カ月間リハーサルとかやっても、自分たちにはたぶん無意味だね」

——PUNKSPRING 2016では残念ながら新曲の披露はなかったけれど、新作『13 VOICES』を引っさげてのジャパン・ツアーを期待しています。
「アルバムの発売前後は北米、その後は世界中をツアーするつもりだから、楽しみにしていてほしいな。まずは新作を聴いてみてほしい。きっと気に入ってくれるはずだから!」



text by Aska Gonda
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