THE STARBEMS、次章へ! 
最新ツアー敢行、ライヴ会場限定シングル発売へ!

前フル作『VANISHING CITY』発売から約1年――。その間に2度メンバーチェンジを経験、新5人編成に落ち着いた彼らが10月10日の札幌よりCLICK OR TREAT 2015ツアーをキックオフし、各会場限定で3曲入りシングル『FIGHTING FATE』を発売する。その前には新曲2曲の無料ダウンロードも実施した。日高央(vo)に聞いた。



――前フル作『VANISHING CITY』を発売してから1年近く経ちますけど、今振り返ってみてどうです?
「サウンドの変化というよりメンバーの変化がデカかったですよね。潤(山下潤一郎/b)が6月から正式メンバーになり、ゴスケ(後藤裕亮/g)が抜けたことで、ギターが一人減った。狙いどおりだったのが、5人に減ったのにライヴでの音が厚くなったと言われたこと。ゴスケってよくも悪くもギターでキーボード的な装飾をする役割だったんで、それがなくなったぶん、音がスッキリしたのと同時に、気持ちも演奏もタイトになった。それまでは遊びの多いゆったりしたワゴン車だったのが、遊び一切なしのラリー車とか、窓がとれててプロテクターがついてるような装甲車になった感じが、やってるオレたちにあります(笑)」

――作品自体については?
「鳴りが変わったんですよね。初フル作『SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD』(2013年)は怒り成分だったけど、前フル作の明るい曲も5人でやると逆にエモさが増すというか。装飾がなくなったぶん、切ないのは切ない感じがより出るし、激しいのはより激しく聴こえる。それが自分たちでも意外でした。物足りなく感じるんじゃないかと思いながらやってたら、お客さんも対バンした仲間うちの評判も、むしろ音が厚くなったねと」

――1年に2人もメンバーチェンジがあるということは、つまり布陣が安定しないということなんで、バンドにとってはダメージが大きいですよね。
「自分が今までやってきたバンドは、プロデュースも含め遊びの多いものが大半だったんで、そういう意味じゃイメージが変わっちゃうんだろうなとは思いました。リスナーから“ついに日高は2人も辞めさせた”と、ジェームス・ブラウン(JB)ばりの独裁政治に入ったと思われるだろうと(笑)。実際オレがリーダーなんでJBと言えばJBなんですけど(笑)。それがプラスかマイナスかっていうのは紙一重じゃないですか。JBのサウンドが好きな人はよく捉えるだろうけど。そういう紙一重な感じを自分でコントロールできるかどうか。そこが不安でしたね。とは言え、シーソーゲーム的な楽しさもある。我々の音の話がわかってる人やライヴを観てる人とは話が早いんですけど、そうじゃない人からは“大丈夫なんですか!?”と心配されたりした。だからバンドにとってライヴを見せるということは大事なんだなと改めて思いましたね」

――山下さんは長くサポートメンバーでしたけど、日高さんとは昔からの仲なんですよね。彼が正式メンバーとして迎えられるまでには時間がかかりましたけど、日高さんと友だちであっても、バンドの一員として、高地(広明/ds)さんとのリズム隊の片翼として機能してくれるかを判断するにはサポートという立場の時間が必要だったということですか?
「潤はなんでもできちゃうんですよ。ドラムも上手いしギターも弾けるし、ベースは言わずもがな上手い。オレと一緒でもともとパンクロックは好きだけど、パンクロックっぽいものはそんなにやってなかった。高校生の頃にオレと潤はパンクロックの洗礼を受け、その頃アイツはLAUGHIN’ NOSEや筋肉少女帯のコピーをやってて、大人になるにつれいろんなジャンルに2人とも散っていった。そしてお互いに毛色の違うところでまたパンクロックに帰ってきて再会したというストーリーがあるんですけど、その時間軸を他人に説明するのって難しいじゃないですか。世代が一緒だから似たような青春を通ってるけど、それを今のリスナーに伝えるのは難しい。だからお互いに慣らしが必要だよねと。革ジャンだって買ったばかりは硬いからちょっと着崩すでしょ(笑)。バンド内でもオレと潤以外のメンバーはみな一回り以上年下なんで、そこの馴染みも見たかったし、なによりお客さんとの混じり、馴染みに半年ぐらいかけようかということで」

――ゴスケはライヴでも視覚的にインパクトがありました。彼が辞めるという話が出たとき、もうひとりギターを入れることは考えなかったんですか?
「考えなかったですね。どうしてもギターが3本必要となったときには自分が弾けばいいんだと、発想が変わりましたから。自分のなかじゃその方が逆に楽だった。バンドによっては、たまにいるじゃないですか。曲によってギターを弾いたり弾かなかったりするメンバーが。だから普通のことなのに、なぜか日本だと特にファンがそういうことを気にする(笑)。だけど音楽好きのオレとしては全然普通のことだし、そもそもそこは自由だという発想になりました。それからTHE STARBEMSがいい意味で変わったような気がします。みんなのなかでも覚悟ができたというか。それまでは6人というメンバー構成の数を守ろうかという雰囲気もあったんですけど、話し合いのなかでいざとなったら日高さんが弾くのがバンド的に一番しっくりくると言われたんで、じゃあ5人でやろうかと。開き直りに近かったかもしれないですね。最初はゴスケがやってたリード部分を西くん(越川和磨/g)がリハでやってみたりもしたんですけど、無理しなくてもいいかと。リードをスッ飛ばしてやってもオレたちとしては特に違和感がなかったから、みんなが気持ちを切り替えられたのかなと思います」

――メンバーチェンジってバンドにとって特に初期段階ではマイナスだと思うんです。そこからプラスにしていくのはスゴく大変なこと。あの段階でメンバーが2人変わったこと、ひとりが辞めてひとりが正式メンバーになったことはTHE STARBEMSにとって逆に音楽的にもバンド的にも前進や発展、成長のポイントだったと言えます?
「スゴく成長したと思います。潤の馴染みを高めるための作業として、あえてメンバー5人で地方都市にいくようにしましたし。マネージャーやローディーに頼っちゃうとそこでグル―ヴが少し崩れるから、メンバーが車を運転し、物販にも立ってということをこの3~4ヵ月ぐらいやったんですけど、それも距離を縮めてくれましたね。みんながちゃんとそっちに向けていたような気がします」

――昨秋に前フル作を出したのもひとつの成長のステップだし、メンバーチェンジもひとつのステップ。そしてそれを経ての新しい展開や開き直り、悟りに至った。1年の間に3つのステップを踏んでるなんてスゴいですね(笑)。
「そうなんですよね。バンドのなかにいるぶんにはバタバタと過ぎていったんですけど、これが友だちのバンドの話だったら大変そうだと単純に思いますよね(笑)」



――さらなる前進ということで、3曲入りのライヴ会場限定販売シングル『FIGHTING FATE』が出ます。このうち2曲を先行で無料ダウンロード配信してます。自分の書いた曲を守るのがアーティストとしての立場だと思うんで、無料ダウンロードというのはかなりの決断かと。賛否両論な方法だと思うんですけど、今回の新音源で、なんでそういう方向に?
「みんなで次はどうしようという話をしてて、シングルにするなら会場限定なのか流通させるのか、流通させてプロモーションしてそれがどこまで広がるのか、今までと同じ方法論でいいのか、スタッフを交えてああだこうだやってたとき、西くんが業を煮やして“タダで配っといたらええやないですか!”と言い放って(笑)、みんながなるほどと思ったんですよね。オレのなかじゃアンディ・ウォーホル(アメリカの画家・版画家・芸術家)の発想に近い。あの人はそもそもあるキャンベルスープ缶をシルクスクリーンでプリントし、さも新しい芸術のようにして打ち出した。スーパーで売ってるものをあえて再構築し、しかも版画だから何枚でも作れちゃうからどんどん買ってくれと。大量消費を逆にアートにしちゃったみたいな、そういうポップアートがあったじゃないですか。タダで配信するということが、逆に業界に対するアンチテーゼになるかなと思ったんですよね。今、CDなのか音源データの配信に移行なのか…どっちが好きとか嫌いということはそれぞれあると思いますし、そこに是非はないと思います。オレもどっちも使ってますし、どっちも好きですから。だからメジャーのメーカーさんやハードを作ってるメーカーさんも含めての、メーカーへの挑戦状といいますかね」

――だけどやっぱ音源というのはアーティストにとてつもなく大事なものです。
「命といっても過言ではないですね」

――いくら西さんが言い放ったとしても、ホンの少しでも抵抗はなかったですか?
「スタッフは“法律的な手続きはどうするんだ”って抵抗してましたけど、オレやメンバー的にはなかったです。むしろ人柱になってみようっていう発想に近いのかもしれません。映画『300(スリーハンドレッド)』(2007年)みたいに少人数で戦ってて敵が巨大なハードメーカーだとしたら、武器は自分たちの演奏や音楽だけ。それで生身でいくしかないんじゃない? みたいなところを、みんなロマンに感じてた節もあります」

――これまでメジャーでの作品発売を経て、今回は自分たちでやるというところにたどり着いた。日高さんがBEAT CRUSADERSで通ってきた道の真逆をやってるわけです。DIYですよね。DIYというのはカッコいいですけど、やるのはスゴく大変。バンドが成長・発展・進化してるときに、なぜあえて大変な道をいこうとしたんです?
「ドラえもんに“苦労みそ”って話があるんです。簡単に目標を達成できないというみそで、のび太のパパがなめると、タバコが吸いたくても全然吸えなくなる。ライターは切れるし、木で火を起こそうとすると雨が降ってくるし、マッチをもらいにいった喫茶店が休みだし、とか(笑)。一日かけてタバコをやっと1本吸うんですけど、それがスゴくイイ話なんです。文明ってそんなに便利なものじゃないという、警鐘を鳴らしてるというか。オレたちもそういう気持ちですよね。不便なことをやることで自分たちのなかで便利さも見えてくるし、アンチテーゼとしての打ち出しもできるんじゃないかと。その苦労を押し売りする気は全然ないんですけど、それをどういうふうにスルーされるのか、あるいは受け止めてもらえるのか、実際に自分たちで見てみないと…とは思いますよね。それがDIYの本当の意味のような気がします。手作りという行為自体も大事なんでしょうけど、ちゃんと痛みを伴ってやることですよね。痛んでみてわかることがあるというか、そこがDIYの真髄のような気がします」

――メジャーに対するアンチテーゼ、挑戦状ということですけど。
「そもそもオレ、大前提としてメジャーが好きじゃないですから。だけどビークルのときもそうだったんですけど、実際にいってみないと文句を言えないと思ったんです。そもそもインディーズのレーベルCR JAPANやLD&Kで働いてたので、メジャーに対してずっと敵対心をメラメラ燃やしてた(笑)。今は大人になったんでそんなに子供っぽい敵対心はないですけど、メジャーの文句を言うなら1回メジャーと仕事をしなきゃダメだなと思ったんです。蚊帳の外でやいのやいの言うのは簡単じゃないですか。それって配信もまったく同じだなと思ったんです。もちろんオレもアナログやCDの方が絶対に好きなんですけど、そのよさを説くには一回配信も自分でやってみないと。なにがよくてなにが悪いか、メリットとデメリットをちゃんと知りたいなと思った。だから西くんがタダであげたらいいじゃないですかと言うのも、逆に腑に落ちたんですよね。やってから文句を言おうと」

――それは理にかなってますね。やってこう思ったから言ってるんだと、筋が通る。
「そうですよね、自分的な筋を通したいというのはあります」



――その3曲聴きましたけど、カッコいいですね。DIYということが影響してるのか、前フル作に比べて生っぽい。これは今回の主題のひとつでもあるんですか?
「そうですね。今回新しく組むエンジニアさんに録ってもらったんですが、録り方がまず変わってる。実はこれ、現代的なやり方なんですけど、ドラムだけスタジオで録り、ギターなどは家で録った音をプロトゥールスに流し込むというやり方を今回初めてやってみました。これもやってから文句を言おうというパターンですよね。そういう方法論はどうなんだろ? と思ってたんです。今年、Gacharic Spinをプロデュースしたときそういうやり方で録ったんです。ドラムだけスタジオで録り、あとはメンバーが自宅で録ったものを送ってくるから、全然プロデュースしてる感じがない(笑)。ドラム録りだけ見て、1週間後にはもうミックスなんです。全然レコーディングした感じがなくて(笑)!  でも仕上がりは超絶に良かったので、自分たちでも試そうと」

――3曲ともTHE STARBEMS節で、生っぽくて相変わらず速くて攻めてますね。この1年間で3つのステップをバンドが経験し、音楽的な部分でこういうことをやってみたいという新しい発想は今回あったんですか?
「ポジティヴな曲を作りたいとはみなさん言ってるし、言うのは簡単ですけど、なにを持ってポジティヴなのかというのは、スゴく難しい。響きの違いなのか、声質なのか、音のうるささなのか。そういうなかでTHE STARBEMSを考えると、オレの声はなにを歌ってもどうしてもエモくなっちゃう。だからそのエモさを残しながらも、今までよりも突き抜けて明るい曲にしようとは思いました。ハードコアというよりポップパンクっぽくに聴こえちゃってもいいか、という開き直りもあったかもしれないですね」

――10月10日の札幌公演からツアー、CLICK OR TREAT 2015が始まります。先行配信の2曲を聴いてくれた新しいファンもライヴにきてくれるでしょうし、会場限定でもシングルを発売する。そうして11月中旬まで駆け抜けていくわけですけど、今回のツアーをどう見てます?
「潤が正式メンバーになって最初のツアーなんで、転べないなという緊張感はありますね。これでまた誰か辞めるだの交代だのってことになったらいよいよ終わりだろうなと思うんで(笑)。あとひそかに抱いてる野望としては、このツアー中にさらに新曲をライヴでやりたいと思います。ちゃんと次作に向けて動いてるっていうのを…実際に動きたいんですよ。ただみんなそれぞれ仕事があってなかなかスタジオに入れないんですけど。1ヵ月半ぐらいの長めのスパンでとってあるんで、合間にちょいちょいスタジオに入り、いけたらライヴで試したいなと。ここから始まる感はスゴくあります。そういうワクワク感はみんなにあると思います」

――年が明け2016年、日高さんが思い描くプランとは?
「来年は確実にフル作を出したいと思ってます。今年出したものは今回の音源しかないんで。アニメの挿入歌をソロでやったりはしてますけど、THE STARBEMSの音源はこれしかないんで、来年はフル作をいきたいです。タイミングは考えてないですけど。今ってタイミングも難しいんですよ。みんな夏フェスの出演前後に新音源を発売してツアーするんで、そこをズラしたいと思ってるんですけど」

――音楽的にまた新たなところにリーチする可能性はあります?
「あると思います。今回の2曲目のクリスマスソング“JINGLE JANGLE SONG”なんか、ちょっとジングルっぽいというか遊びがある感じ」

――ツアータイトル(CLICK OR TREAT 2015)もなんとなくハロウィンっぽいですよね。
「そうですね。そういう遊びをやっとできる余裕が今のメンバーで出てきたんで。外しを入れないと王道も見えないというか。そういう作品になったらいいなと思います。それこそ篤(菊池篤/g)がフルで歌う曲があってもいいんだろうし。そういう外しがあることで自分の声の強さがまた改めて出るのかもしれない。曲によってはパートチェンジしてもいいのかもしれないですよね。そうやってどこまで遊べるかが勝負かなと思います」

――ビート・クルセイダーズ時代から日高さんの話には遊びという言葉が必ず出てきますよね。本人たちが楽しめば、新しいリスナーにも昔からのファンにも楽しんでもらえるという自信があるんですよね。
「そうですね。そもそも音楽が大好きなんで、そこが揺らがない限り大丈夫かなと思いますね。還暦を越えて耳が痛いのを無理してやってたら嘘になっちゃうかもしれないですけど(笑)。音圧とかラウドさじゃなく、アティテュードとしてパンクロックが保てれば、基本なにをやっても楽しくなると思うんで。過去のさまざまなパンクロックバンド、みんなそうじゃないですか。THE TOY DOLLS、THE ADICTS、NOFX…みんなアティテュードとしてのパンクロックを外さない、そこの筋にみんな魅かれる。パンクのそういうとこ大好きなんで、そういうバンドでいたいなと思いますね。もちろんサウンドががっちりパンクロックな人を否定するわけじゃなく、自分にはたぶんそういう方が向いてる。そういう自由度の高いパンクロッカーでありたいと思いますね」

新曲2曲のダウンロードはこちらから

text by Hiro Arishima


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