混沌としたエンターティメントを発信する
異能集団、Vampilliaへの初インタヴューが実現

混沌として凶暴でありつつ、高いドラマ性と芸術性、エンター
ティメント性を内包した、真のオルタナティヴ・ミュージックを
轟かせる「ブルータル・オーケストラ」ことVampillia。次々と
発表される音源にツアーにと話題を振りまき、アンダーグラ
ウンドからJ-POPシーンまでをじわじわと侵食している。
今回、ライヴのステージはおろか写真にも登場しないが、裏
ですべてを掌握しているリーダー(名前も非公開)に、インタ
ヴューを実施。音楽性だけでなく、成り立ちからスタンス、今
年リリースしたアルバムや、無料配布音源『You should go
first』にいたるまで、すべてが異端な彼らについて、詳しく話
した。


――Vampilliaの結成は2005年だそうですね。それ以前に、メンバーそれ
ぞれは音楽活動をしていたんでしょうか?
「いや、全然ですね。吉川豊人(ds)だけは元ボアダムスで、当時はグライ
ンド・オーケストラをやっていましたけど、それ以外のメンバーはほぼ全員、
素人でした。僕自身、楽器は何もできないですし」

――ほぼ全員が素人…ですか? なぜ音楽をやろうと思ったんでしょう?
「単純に、自分の聴きたい音楽を自分でやろう、という気持ちでした。当時
は、90年代後半に出てきたGODSPEED YOU! BLACK EMPERORから
影響を受けてやっているポストロックやインストゥルメンタルのバンドが多
かったんですよね。僕はそのGODSPEED YOU! BLACK EMPERORと、
APHEX TWINをミックスしたような音楽がやりたかった。でもWORLD'S
END GIRLFRIENDが、先に日本でそういった感じで、しかも誰もやって
いない音楽をやっていたんです。それじゃあ、自分はどうしようと。僕は当
時、ブラックメタルを究極の芸術表現だと思っていて、同時にポストロック
も好きだったんですけど、そのころのポストロックというものは繰り返しや
模倣ばかりで、発展性がなくなっているように感じたんです。だからポスト
ロックにブラックメタルが混ざったら面白いだろうな、というのが始まりです。
はかなくて美しいけれど、同時にいろいろなものが内包された音楽を作り
たかった」

――メンバーはどうやって集めたんですか?
「大阪の高槻という街のCDショップで働いていたんですけど、そこに中学
生のころに通っていた子に、声をかけたんですね。そうしたら“ついにその
ときが来たんですね!”って言うんですよ。僕は昔、その子にいろんな音楽
を教えながら“いつか俺が言う音楽を作ってくれ”と言ったらしくて。ぶっちゃ
け忘れていたんですけど(笑)。で、近所の本屋にボアダムスの人がいる
じゃないかということで、ダメもとで吉川さんに“ドラムを叩いてくれません
か”と誘ったら、OKしてくれて。そこからですね」

――音楽的な経験がない人ばかりで、作曲はどうやって?
「僕が聴きたい音楽を、まずメンバーに伝えるんです。例えば“きれいなメロ
ディにブラストビートをつけて”…とか。当然、僕のこうしてほしいというものを
メンバーに伝えても、なかなか共有できなかったりもするので、まずアイディ
アを伝えて、メンバーからあがってきたものに修正を加えて…とアレンジをし
ていきます。やり方はずっと同じですね」

僕が初めてVampilliaのライヴを観たのは、2009年の元SWANSのJarboe
の来日公演のときでした。あれ以降、NADJAやALCEST等、いろいろなアー
ティストを日本に呼び寄せていますよね。
「自分たちのイベントをやるときは、本当に好きだったり、興味のあるバンドだ
けを呼んでいたんですよ。ときにはお笑い芸人にも出てもらったりして。その
流れで、自分の好きな海外のアーティストを呼ぶしかないなと思ったんです。
Jarboeにオファーを出したら、僕たちの音楽に特別に感じるものがあったそ
うで、来日と『ALCHEMIC HEART』でのコラボに至りました。NADJAは最初、
楽曲のリミックスをお願いしたんですよ。そうしたら日本に興味はあるけれど、
まだ行ったことがないと言うから、じゃあおいでよ、と」

――日本に呼び寄せたアーティストとコラボした作品を作るのは、もはや恒
例ですね。そうやって外部からゲストアーティストを迎える場合は、どうやっ
て曲を作るんですか?
「自分たちの音楽的な引き出しから、相手にフィットしそうなものを提示する
こともあれば、向こうが作った曲に僕たちが参加するケースがあります。20
12年にNADJAといっしょに『Primitive World』を作ったときは、僕たちの曲
に彼らが参加してくれました。5月の再来日の際は、今度はNADJAの曲に
僕たちが入っていく形でコラボしました」



――様々な形式の音源の多数の発表を経て、今年の4月にはツジコノリコ
やBiSほかとのコラボ曲をまとめた『the divine move』をリリースしましたね。
そのときに出せるものを出していく…という感覚なんでしょうか?
「BATTLESが、デビュー時にいろんなレーベルからシングルを乱発していた
じゃないですか。僕はあれは面白いなと思っていて。僕たちはUKのCandle
Light RecordsやWarp Records、ほかにもカルトなブラックメタルや実験音
楽等、いろんなレーベルから作品を出せる。すごくアンダーグラウンドなメタ
ルのレーベルと、オシャレなテクノ系のレーベルから同時に作品がリリース
できることは、僕は面白いと思うし、やりたかったことなんです」

――『the divine move』の後、1stアルバム『my beautiful twisted night-
mares in aurora rainbow darkness』をリリースしましたね。
「僕たちはもともと、海外でやりたいという気持ちがすごく強くて、結成から1年
くらい経ったころ、アメリカをツアーしたんです。そのとき、ANIMAL COLLEC-
TIVEなんかをプロデュースしたラスティ・サントスにすごく気に入られて、いっ
しょにやることになったものの、いかんせん僕たちが素人でなにもわかってい
なかったせいで、揉めて流れてしまった。その後2008年頃に、結成から3年
になるのに、音源が何もないことに気付いて、『Spears』というEPを出しまし
た。正直、『my beautiful~』も1stというより、コンセプチュアルなもののつもり
だったんです。でもツインドラムになって、真部脩一(g/元相対性理論)が加
入して初めてのパッケージだったので、ここが区切りになるのかなと思って」

――本作はCandle Lightからも『some nightmares take you aurora rai-
nbow darkness』とタイトルを変えてリリースされています。この2枚にはツジ
コノリコの不参加等、いくつかの違いが見られますが…。
「楽曲のレコーディングはアイスランドで行ったんですけど、『my beautiful~』
はWORLD'S END GIRLFRIEND がミックスしています。Candle Lightから
リリースしたヴァージョンはベン・フロストによるミックス等で、100%アイスラン
ド産なので、別の何かが入っているかもしれないです(笑)。自分たちとしては個
別の作品として捉えているのですが、ほかの人たちにはどう聴こえるのか…
なので直感で選んでもらえればと思います」



――8月15日より、『You should go first』を収録したCDをライヴハウス等で
無料配布していますね。これも歌詞やPV等を見ると、相当ブラックなユーモア
とともに、いろいろなものへの「アンチ」のメッセージが込められているように
思います。『You should go first』配布店舗一覧

「本当のことを言うと、これはVampilliaのカタログに加わる楽曲ではないんで
す。作曲とレコーディングを3日、PV制作を24時間で終わらせたんですけど、
そこまでして世に出して、みんなに知ってほしいという理由がありました。現代
の日本で生活していると、無知と無関心は本当に恐ろしいことだと思うんです。
そのふたつによって、大きく時代が変わってしまう。それに巻きこまれずに、自
分たちは何かをやったんだという足跡を残しておきたかった。伝わりにくいかも
しれませんが、同じバカでもハッピーに生きていくバカになりたいんです」

――Vampilliaは、ライヴでメンバーが自分の持ちネタをやったり、笑いを起こ
すところも特徴ですよね。
「そのせいでドン引きされるんですけどね(笑)。自分たちのハードルを上げた
かったんです。ドン引きされても、それを音楽で覆すくらいじゃなければダメだ
と。結成当初、今とは別のピアニストがいたんですけど、練習のときにギター
の音にビックリして、逃げてしまって。仕方がないから、その直後ライヴでは
同期を流して、別の人にステージでピアノを弾いているフリをしてもらったん
です。ライヴが終わった後、じゃあこれからピアノを探そうかと思ったら、その
フリをした子が“私、ピアノ弾けるけど”って(笑)。それが今のピアニストなんで
すけど、ほかのバンドに楽曲提供をすることが決まっていたりするんです。そ
ういうのが大好きなんですよ。僕たちにとってすごく重要なのは、笑えるかど
うか。遊び心に近いですね。それを叩く人もいますけど、そういう人たちよりも
僕たちはよっぽどストイックだし、リスクも背負ってやっているつもりです」

――Vampilliaをやるうえで、禁じ手や、やってはいけないことはありますか?
「口ではNGと言ったとしても、面白いと思ったらやっちゃうことが多いです(笑)。
作品を出したときに“以前とは音楽性が変わった”と思われるのはイヤなので、
いつも何かしらの布石は打っておきたいんです。だからNGはあるようでない
けど、ただのBGMとしての音楽は絶対に作りたくない。僕たちは手間も時間
もお金もかけて音楽を作っていますけど、安易に作られたものといっしょにさ
れたくないし、ちゃんと守りたいという意識はゆずれないですね」

――作品やライヴに触れていると、独自のエンターティメントを表現している
ように思うんですよ。Vampilliaならではの、ほかでは味わえない楽しみ方が
あるというか。
「それは絶対にありますね。同業者からは“何をしてんねん、お前ら”っていう
感じでしょうけど(笑)。でも普通のバンドではできないようなことをやっている
ので、マジメにやるだけがバンドじゃないぜ、とは思っています(笑)。もちろん
マジメにやって、それを続けることがどんなに難しいかもわかっていますし」

――活動していく上での、指針や目標は?
「僕の当初からの目標として、本国アメリカのMTV Video Music Awardsに出
たいんです。自分たちのやっていることが認められたというゴールのひとつと
いうか、象徴的なものとして。あれに昔NIRVANAが出たときや、LIMP BIZKIT
とRAGE AGAINST THE MACHINEが揉めたときなんて、めっちゃくちゃ面白
かったじゃないですか。正直、あそこに日本の売れているアーティストが出て
も、日本人が出たということはともかく、音楽的にそこまで驚くべきことではな
いですけど、ボアダムスや僕たちなんかが出たら、それこそカルチャーがひ
っくりかえるような事件じゃないかと。ボアダムスを更新しないことには、日本
では面白い音楽は生まれないと思っているんです。それなのにお笑いネタを
やるからどうしようもないんですけど(笑)」

――今後の予定や構想を教えてください。また予想もつかないものが飛び出
してきそうですが…。
「今いろんなことをやって、導火線に火をつけているような感じですね。いわゆ
る大きなフェスなんかにも、僕たちは出たいんですよ。出たら何かを起こす自
信はあります。音楽で、人の感情を解放させるのが理想なんです。リミットを
越えたら、感覚がものすごく広がるじゃないですか。自分たちの存在を、そこ
に持っていきたいと思います」



text by Yusuke Mochizuki


シェア

▲ TOPへ戻る /   ◂前の記事へ/ ▶次の記事へ