血を吐く様な暗黒のサウンドとともに、
isolateが綴った“ヒビノコト”とは?

初めてisolateのライヴを観たとき、金縛りにあった。音がでか
いとか、モッシュが激しいとかそんな次元ではなく、ステージか
ら発せられる剥きだしの殺気に圧倒されて、身動きが取れなく
なった。先日、初のフルアルバム『ヒビノコト』をリリースし、その
レコ発ツアーを開始した彼ら。ブラストビートに悲痛なメロディと
スクリームが轟く、壮絶で激烈なハードコアをもって、全国各地で
殺気を振りまいているところだ。まさに渾身作である本作ついて、
そしてバンドのこれまでとこれからについて、メンバー全員から
話を聞いた。


――バンド結成は2007年だそうですね。どんな経緯だったんでしょうか?
Ando(vo)「僕が就職のために上京してきて、前身バンドを結成したのが
2006年ですね。その後TH(g)が加入したんですけど、2007年になるあ
たりでメンバーがごっそり抜けて、当時ベーシストだった僕とTH、それに
ヴォーカルだけになっちゃったんですよ。それで前ドラムとIwata(g)が入
り、しばらくして僕がヴォーカルに変わって、前ベースが入ったという感じ
です。そのメンバーで2007年末にデモ音源を作った頃からisolateになり
ました」

――その時点で、今のようなサウンドだったんですか?
Iwata 「いや、全然違いました。違いすぎて、当時の曲はもう弾けないで
すね(笑)」
Ando 「ギタリストふたりが、もともとメタルコアが好きなんですよ。デモの
後、前EP『limitasolation』の“tragedy of the ruin”ができてから、ブラスト
ビートを取り入れたりと、今に通じるサウンドに変わっていきましたね」
TH 「当時はパワーヴァイオレンスとかが好きで、その流れで色んな音源
を掘り下げていたんです。僕が作る曲は、そのときに好きなものの影響が
出て(笑)。ブラックメタルにしてもハードコアにしても、かっこいいものは
かっこいいですから。毎回“ああいう曲がいいな”と思って作り始めるんで
すけど、それまでに聴いてきた音楽の影響もあって、絶対にそのものに
はならず、混ざり合ったものになるんですよね」

――これまでの活動のなかで、TAKENやDEAFHEAVENのといった海外
アーティストのサポートを務めましたし、去年の秋には自主でイタリアから
THE SECRETを招へいし、日本ツアーを企画しましたよね。そういった経
験から、学んだことはありますか?
Kokeguchi(b)「例えばTHE SECRETに関しては、ツアーで場数を踏ん
できたバンドの余裕や慣れは感じましたね。とにかくライヴのクオリティが
高かったです」
Ando「彼らも普段は別の仕事をやりつつ、あれだけ世界中をツアーしてい
るのは尊敬できるし、見習わなきゃと思うんです。まだまだ俺たちもやれる
ことがあるんだと教わりました。あのツアーの前からアルバムを作ることは
決まっていたんですけど、THは当初、古い曲の再録と新曲が混ざった、集
大成的な作品にしたいと思っていたそうなんですよ。でもTHE SECRETの
メンバーに話しを聞いた結果、THが新曲を全部ひとりで頑張って作ること
にして。それで持ってきたものはシンプルでムダもなかったし、いけると思
いましたね」

TH 「THE SECRETのメンバーといろいろ話したときに、“方向性をフォーカ
スしたほうが、作品のカラーが出しやすくなる”と教えてもらったんです。そ
れで全部新曲で、絞り込んだ内容にするにあたって、レコーディングを担当
してくれたエンジニアに音作りから相談したんです。それで、2本のギター
でメロディを弾くのではなくて、コードをぶつけあうことで、塊というか、壁の
ようなサウンドを目指しました。そのコードも限定することで、全体の音に統
一感を持たせることを意識したんです。結果、複雑すぎず、曲としてもまとま
りがあって、わかりやすいものにできたと思います。欲を言えば、もうちょっ
と時間があったらよかったんですけど(笑)」
Ando 「たしかにもう少し時間があればよかったけど、逆に言えば、時間があ
るとダラダラして、生産性が落ちてしまうんですよね。それを今回は変えたかっ
たんです。最初にレコーディングを始める日にちを決めて、発売日と完成の締
め切りを設定して、そこからツアーもブッキングして。もう全部決まっているか
ら、そこに合わせなきゃならないという状況を作りました。でも、みんないいも
のを作りたい気持ちは秘めていたし、お金も時間もかけているから、こけたく
なかったんですよ。エンジニアも問題作を作りましょうって煽るから、じゃあや
るしかねえなって (笑)」
Iwata 「そのエンジニア自身も、めちゃめちゃうまいギタリストなんですよ。お
かげで弦楽器は何回録り直したか(笑)」



――そうしてできた新作は、これまでのハードコア×ブラックメタル×ポスト
ロック的なアプローチは引き継ぎつつ、ファストで、ヘヴィで、すごく切迫感
と緊張感がある作品ですね。同時に、混沌としていつつも情感的で。
Ando 「録り終わったとき、すごく安心しましたね。終わった後に飲んだビー
ルが、あんなにうまいなんて(笑)。それぞれ普段の仕事の関係もあって、
Ikeya君なんかフレーズが何にも決まってない状態でスタジオに入ること
になっちゃったし」
Ikeya「でも、やりかたがよかったんだろうね。ドラムは上半身と下半身を
別々に録っているんです。その場で浮かんだフレーズをすぐ試せるし、
ドラムのパーツ同士の音がぶつからないから、最終的な音もすごくクリア
になって」

――歌詞はストーリー性がありつつも、アルバムのタイトル『ヒビノコト』の
通り、日常生活に通じることが書かれていますね。
Ando 「音に統一感を持たせようとしているから、歌詞もコンセプチュアル
にして、最初から最後までつながっていつつ、単体でも存在できるように
書いたんです。僕の歌詞が入っているのは11曲あるんですけど、最初の
4曲が導入で、その後の7曲が、そのまま七つの大罪になっていて。『ヒビ
ノコト』というタイトルも、歌詞を見直したときにすぐ出てきました。自分の
不満がすべて詰まっていて、すごく嫌いな人間の像が浮かび上がってい
るし。これまでは暗い歌詞でも、最後に希望を持たせていたんですけど、
今回は暗いままで終わります。今の僕が頑張ろうぜ! なんて歌うのも嘘
くさいと思ったし。でも、はじめは歌も歌詞も全然できなかったんです。3
月に実家に帰って、母親がテレビを見ている横で叫び声をあげて“うるさ
い!”って怒られながら、3日で書きました(笑)」

――新作は内容とともに、音質の高さも特筆すべきものですよね。CDでも、
ポータブルプレイヤーでも、ヘッドホンでもスピーカーでも、どんな状況で
聴いても、クリアで立体的な音がものすごい勢いで迫ってくる。
Ando 「どんなアルバムがにしようか話しあったときに、僕はenvyの『君の
靴と未来』のような、世代を超えて聴き続けられるようなものを作りたいと
言っていたんです。そのためには曲はもちろん、音もほかとは差別化す
べきだと。なので狙っていたものではあるんですけど、自分たちが一番
ビックリしています(笑)」
TH 「ほかには絶対にないものを出しているバンドって、いますよね。この
バンドのこの作品を聴かないと得られない高揚感というか…。isolateとし
て、それを作りたかったんです」
Ando 「音そのものにレンジがありますからね。大きなスピーカーで爆音
で再生しても潰れないし、小さなイヤホンで聴いても、全体の輪郭はぼや
けない。マスタリングはメジャーからインディーまで、それこそSLANGか
ら西野カナまで担当しているところなんですよ」

――この音源に負けない、殺気だった空気のライヴも魅力ですよね。
TH 「良くも悪くも、音源とライヴが違うバンドっているじゃないですか。僕た
ちは、ライヴでは暗くて、悪くて、へばりつくような感じのものが音源以上に
出せていると思うので、そこも体感してほしいですね」
Ando 「ライヴで一番人が変わるのはIwataとKokeguchiなんですよ(笑)」
Iwata 「記憶がないんだよね(笑)」
Kokeguchi 「もう、わけがわかんない(笑)。白目むいてるし(笑)」
Ando 「逆にあれで記憶があったらやばいよね(笑)。でも、お客さんはお金
を払ってライヴに来ているわけですから、ぬるいことはしたくないんですよ。
もちろんその日の状況で変わるものはあるけど、前に出す気持ちとか、感
謝を減らしたくないし、すかした感じにもなりたくない。毎回、持てるものを
全部出すつもりでやっています」

――ちょうど12月まで続くツアー中ですね。
Ando 「レコ発で10本にイベント出演等が3本あるんですけど、ファイナル
は渋谷のeggmanなんです。eggmanはやっぱり名のある箱だし、今後
もバンドを続けていくつもりなら、これくらいのところではできなきゃダメだ、
というくらいの気持ちです。自分たちで時間も金もかけて作ったんだから、
それをきちんと評価してもらえるようにやりたいし、先々はもっと大きなとこ
ろに挑戦したい。アルバムができたから終わりではなくて、ここから始める
んだという気持ちです。もっとバンドのことを知ってほしいし、盛り上がって
ほしいし、盛り上げたいですから」
TH 「そのためには、さっきも言ったように、このバンドでなければ得られな
いものが絶対に必要なんですよね。もちろんヘヴィなリスナーは大切です
けど、You Tubeでたまたま観たとか、そういうライトな感じから入ってくれ
ても前々かまわないので、音源をチェックしたり、ライヴに来てくれたりす
るとうれしいですね」



text by Yusuke Mochizuki


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 isolate
 『ヒビノコト』
 KEEP AND WALK RECORDS
 KAW-7 / 発売中

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