この夜、BABYMETALはついに日本の頂きへと到達した!

BABYMETAL
September 19th, 2016 at TOKYO DOME, Tokyo

9月19日夜、BABYMETAL WORLD TOUR 2016 LEGEND-METAL RESISTANCE-RED NIGHT & BLACK NIGHTの、RED NIGHTを観た。 アーティストが日本武道館のステージに立つことを指して、昔からよく「檜舞台に立つ」と言われたものだ。今もその意味合いや誉れは変らずで、すなわち成功を手にした者のみが享受できる、非常に限られた機会だ。BABYMETALは今から2年半前にすでにその“檜舞台”を2夜連続で踏んでる。そして昨年暮れの横浜アリーナ公演2連発ソールドアウトを経て、ついに“頂き”と言うに相応しい東京ドームのステージに立ったのだ。キャパ的には日本武道館、横浜アリーナのほぼ5倍だ。SU-METAL、YUIMETAL、MOAMETALはその夜どういう想いを胸に抱き、なにを背負ってステージに上がったんだろう。超満員の客席、場内はどんな景色に映ったんだろう…。

エンタテイメントの限りをつくしにつくし、これでもかこれでもかと言わんばかりに“大技”“小技”を繰り出してくるパフォーマンスはまさに見応え十分、圧巻だった。あのデカすぎる場内、そしてあふれんばかりの大観衆を90分の間どう始終手繰り寄せ、惹きつけ、酔わせるのか、が観る前に気になったことのひとつだった。ステージはアリーナのド真ん中に組まれ、3方向に花道が伸びてた。かつてDEF LEPPARDが4枚目『HYSTERIA』(87年)のワールドツアーで初めて披露、実践し、「こんなの観たことない、まさに前代未聞だ!」と世界中を仰天させた、あのセンターステージセットを思い起こした。なによりも驚いたのはステージ真上高くに設置された360度スクリーン。客席のどこから観ても、誰にでもSU-METAL、YUIMETAL、MOAMETALが自分のいる場所から真正面で歌い、ダンスしてるように映る。こういうのを初めて目の当たりにした。この効果は計り知れなくデカく、最初から最後まで会場とBABYMETALを合体させてた大きな要因のひとつだった。ときに突き刺すように鋭く、またときに四方八方に荒々しくなるライティングも実に色鮮やかで、時折目がチカチカするほど強烈だった。所狭しと動き回るなんていう表現があるけど、ステージがあまりにも巨大でダダッ広いゆえ、さすがにそういうふうにはならずも、SU-METALもYUIMETALもMOAMETALもみな曲ごとに、また場面場面でその広さ、大きさをうまく使ってた。ときに長い花道を疾走するときもあった。間違いなく今春のウェンブリー・アリーナ公演や、今夏のヨーロッパ開催のビッグフェス参戦を経験し体得した数多くのことの賜物だ。『BABYMETAL』(2014年)収録曲も新作『METAL RESISTANCE』(2016)収録曲もライヴ仕様に少しアレンジが加えられてたことも楽しめた。「まだ上がるんかい」と思えたほど火柱が上がりっぱなしだったし(笑)、チケットホルダー全員に入場の際に配布されたスケルトンコルセットが後半一斉に光り、あたり一面が光のじゅうたんのようになったのも見事だった。そして最後の最後にパイロが炸裂し終演を迎えた。

いつもと同じようにアンコールなし、MCもなし。アンコールなしはまだしも、MCなしというのはやはりスゴいと言わざるを得ない。アーティストにとってMCとはお客さんとのとても大切なコミュニケーションツールだ。そのMCをすることでお客さんをさらに煽り、引き寄せ、距離感を縮め、よりつながりを強くし、ライヴ空間ならではの世界観を作り上げていく、というのが常套手段だ。そう、アーティストにとってMCとは武器のひとつなのだ。BABYMETALは自ら進んでその武器を放棄してる。事と場合によっちゃお客さんを突き放してしまうことにもなりかねない。だけどそんな危惧は無用、不要で、この夜場内を大きく盛り上げ、ときにスタンド席が揺れるほどの熱さをも誘発させ続けてた。日本ではもう、完全に向かうところ敵なしだ。

『QuickJapan』vol.125、BABYMETAL表紙・巻頭大特集号に寄稿した。そして、こう書いた。90年代初頭~中盤にかけての頃、欧米で猛威を奮ってたグランジ/オルタナティヴロックなどのモダンロックがなかなか日本に根づかず、メタルが揺るぎない人気、評価を得てたことがネックだ、とイラついたときに口を突いた一言だ。

「(メタルの)“様式美”なんて崩れてしまえばいい」

が、しかし、だ。CDセールスも含めてここまで日本で頂きへと一気に駆け上がり、さらなる大成功を収めた今、今度はBABYMETALが音楽シーンにおいてまったく新しい模範、規範となり、つまるところの“新たなる様式美”ともなる。この“新たなる様式美”を崩すのは容易なことじゃない、ほぼ不可能だ。そして、それが日本発信で世界中への拡散、浸透であることを日本人としてひとえに誇りに思う。SU-METAL、YUIMETAL、MOAMETAL、そして神バンドみなが実に凛々しい。



text by Hiro Arishima
photography by Taku Fujii