台風が迫りくるなか、バンドたちが
意地と底力を見せたBAY ROCK 2014!!

BAY ROCK 2014
October 13th, 2014 at YOKOHAMA BAY HALL, Kanagawa

「こんな台風の日に集まるなんて…さてはお前ら、ロックバカだな!?」
「台風だっていうのにここに来たみんな、マジで精鋭のなかの精鋭だよ!」
前者はTHE STARBEMSの日高央(vo)の、後者はNUMBのSENTA(vo)
がステージで発した一言である。観測史上最大と言われた台風19号が
日本列島を縦断中で、関東地方にも迫ってきていた10月13日。横浜の
BAY HALLで行われたBAY ROCK 2014は、まさにロックバカの精鋭だ
けが集結した1日だった。

T.C.Lが昨年から主催し、KYONO(vo)にYAMADA(vo)が「秋のロック祭」
と語るこのBAY ROCK。当日は天候の不安こそあったが、そのぶん濃密
なものになったのは間違いなかった。

雨が降り始め、台風の足音が聞こえてこようかという14:30、まず先鋒と
して打って出たのはWAGDUG FUTURISTIC UNITY(WDFU)。僕自身
も前回観たのはいつだったかをもう思い出せないくらい久しぶりだった。
実はこの日、T.C.Lでも叩いていたドラマーのSHIBUYA(元THE CREA-
TOR OF)が脱退し、後任としてWRENCHやABNORMALSでも活躍す
るMUROCHINが加入して初のライヴでもあった。結果としては、メンバー
チェンジなどものともしない、強烈なライヴを展開。ヘヴィかつパワフルな
サウンドを軸にしながらも、キャッチーなメロディが満載で、プログラミング
もビシバシ切り込んでくる。見応え充分だった。MUROCHINも、WREN-
CHでロックとテクノやトランス等の融合を追及してきただけに、WDFUに
はよくフィットしていたと思う。T.C.Lでの活動も多いKYONOだが、WDFU
もより活発な動きに期待だ。

続いたのが反好旗。「YOKOHAMA CITY REBEL MUSIC」を標榜するバ
ンドだ。全編日本語歌詞でスポークン・ワードからガナリ声まで織り交ぜた
ヴォーカルに、伝統的なジャパニーズ・ハードコアに激情ハードコア、クラ
スト等がルーツと思われるサウンドで駆け出すが、ふと美麗なアルペジオ
や切り裂くような高音トレモロで、静的なパートへと切り替わる瞬間も。かと
思えばレゲエも取り入れたりと、テクニックもバックグラウンドも計り知れな
いものがある。クリアな音響で激を飛ばしてくる様には、単にアンダーグラ
ウンドな存在では終わらない、力強さと可能性を感じた。この日会場を後に
してから、すぐに発売されたばかりのアルバム『neverfade』をチェックした
のは、僕だけではないはずだ。

三番手に出てきたのは、THE STARBEMS。11月12日にリリースする新作
『Vanishing City』の制作を終えたばかりだ。僕自身も彼らを観るのは初め
てだったので、楽しみにしていた。6人組、トリプルギターという編成だけあっ
て、アンプがずらりとならんだステージも圧巻だが、ライヴもまたすごい! 
人数が多いぶん、音の厚みはかなりのものだけど、それをパリっとしたプレ
イに載せて、全力投球でぶっ飛ばしてくるのだ。日高の歌う、エモーショナル
だけど辛口なメロディ、全員で放つ男臭いコーラスもたまらない。濃厚な味
わいだけど、後口はスッキリ。ハードコアもパンクもメロコアもメタルも、とに
かく全部通ってきた人間が、好きなものすべてを凝縮するとこうなるのだ。
この日は新曲だけでなく、“WISE BLOOD”でKYONOがコラボする場面も。
来たるアルバムに向けて、バンドのコンディションは絶好調であることを見
せつけた。

そこから東京ハードコア・シーンのドン、NUMBが場を引き継ぐ。SENTAが
ビニール傘を手に登場し笑いを誘ってスタートしたかと思えば、渾身の力で
繰り出されるサウンドは、まさに極悪ハードコアを体現。メンバーのガタイそ
のままの、屈強で筋肉質なグルーヴで、観客の耳をねじ伏せにかかる。
ニューヨーク的なストロング・スタイルなハードコアで突き進むことで、フロア
前方は危険なモッシュピットと化すが、SENTAは自虐ネタだったり、ヒップ
ホップやレゲエ風の掛け合い(やってみたかったらしい:笑)だったりを盛り
込むMCで、ステージとフロアの間の距離感を取り去ろうと積極的にアピー
ル。ともすれば閉鎖的になりがちなシーンにおいて、彼らは意識が外を向い
ているからこそ、長きに渡って生き抜いてこられたのだ。いい意味で重鎮感
のない、極悪だが楽しいライヴだった。

ずっしりとヘヴィなNUMBから一転。HUNKING BEEがステージに立った。
磯部正文(vo,g)の「じゃあHUNKING BEE、始めます」という一言に続いて、
最初の音が鳴った瞬間、胸にぽっと火が灯ったような感覚になった。疾走
感や音圧で押すのではなく、あくまで歌を主体にしていて、デリケートなメロ
ディと繊細な和音の絡みが、じわじわと耳と心に沁みていく。WEEZERだっ
たり初期SUNNY DAY REAL ESTATEのような、不器用で愚直だけど…い
や、だからこそ胸を打つサウンドがそこにあった。とはいえ日本のパンクロッ
ク・シーンを切り開いてきたバンドのひとつだけあって、根っこには強く、たぎ
るような熱、そしてわびさびがこもっているのだ。“欠けボタンの浜”での、涙
腺のゆるみようと言ったらなかった。台風が近づいていることをひととき忘れ、
優しく温かな雰囲気で、BAY HALLを柔らかく包み込んでくれた。

次もまた重鎮、山嵐だ。セットチェンジをなんとなく眺めていると、YUYA OG-
AWA(g)の手にはなんと8弦ギターが。驚くとともにどんなことになるかとおの
のいていたが、実際に始まったライヴでは、KOJIMAとSATOSHIのふたりが、
速射砲のごとくラップを放射するなか、図太い低音が耳をえぐるように突き刺
さってくる。もともとラップコアやミクスチャー・ロックの流れの上にあり、日本の
KORNとまで言われていたバンドだが、ポップなメロディやプログラミングだけ
でなく、最新の機材まで取り入れて進化し続けているのだからすごい。最終的
な出音はヘヴィに尖った要素とポップな要素が絶妙なバランスを保っているけ
れど、エフェクトやプログラミングにはけっこう実験的なアプローチもあったりで、
また改めて聴いて足を運んで、細かいところまで体感するべきだと思った。

いよいよ大詰め、NAMBA69だ。難波章浩(vo,b)が9月に医療事故により喉を
負傷し、その治療のためにしばらくライヴをキャンセルしていたが、復帰を果た
したばかり。難波が「メロディック・パンクは死なないぜ!」と叫ぶとともに、一気
に滑走していった。昨年からフェス等で何度も観ていたけれど、K5(g)、SAM-
BU(ds)という優れたプレイヤーがいるからこそ、3ピースというHi-STANDA-
RD(ハイスタ)と同じ編成で挑むことができるのだろう。“MY WAY”等ソロ時代
からプレイしている曲も含めつつライヴは進んだが、どの曲も親しみやすくて
スカっとしたメロコアは、難波節…いやNAMBA69節と言いたくなる、珠玉の輝
きを放っている。この日は難波にとって必殺技である、ハイスタの“Stay Gold”
も敢えてなし。12月にNAMBA69として初のアルバムを控えているからこそ、
自分が進もうとしている“次”を提示してみせたのだろう。彼らがいる限り、メロ
ディック・パンクが死ぬことはないのだ。

そしてラスト、T.C.Lだ。配信で発表した新曲のうちのひとつ“NEW BEGIN-
NING”で、いきなり硬質のグルーヴをうねらせてみせる。そのまま“BURST
& RISE”、“DIS THE POWER”と続けていくが、夏の京都大作戦のときより
も、現在の編成でのライヴが馴染んだ印象だ。やはりメンバーチェンジ後、
作曲とレコーディングを行ったことが大きいのだろう。音の破壊力はもちろ
ん、KYONOとYAMADAのヴォーカルのコンビネーションも、かなりこなれて
きたように思う。
KYONOは何度も、台風のなかで足を運んだ観客に感謝の言葉を述べてい
たが、攻撃の手は緩めず。というよりも、こんな状況でも来てくれたからには、
全力以上のパワーでぶつかって粉砕しにかかった…と言うほうが正しそうだ。
KENJI(ds)も、これまでT.C.Lでは使っていなかったブラストビートまで導入。
配信の2曲を経て、凶暴な音塊にはさらに磨きがかかっていた。次なる動き
がどうなるか、もう楽しみでしかない。大トリとして、そして主催者として、場を
ビシっと締めてくれた。

台風がいよいよ間近に迫り、横浜地区に避難勧告が出るほどの事態となっ
たため、残念ながらアンコールもなく、イベントはお開きに。あいにくの天候
に見舞われこそしたが、そのぶん濃厚な1日となったBAY ROCK 2014。来
年こそ、万全の状態での開催を望みたい。そのときには、ロックバカの精鋭
がどれだけ集まるだろうか。


text by Yusuke Mochizuki
photography by Masanori Naruse


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