FEAR FROM THE HATEがアクシデントを
乗り越え挑んだ、リリース・ツアー・ファイナル!!

FEAR FROM THE HATE
March 15th, 2015 at Shibuya Milkyway

昨年12月に2ndミニアルバム『RETURNERS』をリリースしたFEAR FROM THE
HATE(FFTH)。そのリリース・ツアーは、ファイナル・シリーズと銘打った東京、大
阪、名古屋の3公演で大団円…となるはずだった。。しかし、その直前にHiro(b)
が左手を骨折するというアクシデントが発生! そんな波瀾含みの展開は、2008年
に結成してから数々のメンバー・チェンジを乗り越え、常に音楽面では挑戦を繰り
返してきたFFTHらしいと言えば、らしいか…と言ったら、メンバーたちから猛抗議
されるに違いない。しかし、逆境に追い込まれた時こそバンドの真価が問われるも
のだ。果たしてピンチの直面したFFTHはどんなライヴを見せてくれるのか?! そん
なちょっと意地悪な興味を抱きつつ、東京公演に出かけていった。

この日、FFTHをサポートしたのは計4バンド。旧知の仲もいれば、初共演もいると
いうその4組を改めて振り返ってみると、なかなか多彩な顔ぶれが揃っていたと思う。
トップバッターは埼玉からやってきた3人組、Bloody Cigarette。「アゲていこうぜ!」
と声を掛けながら、彼らが演奏するのは80年代調のメタルとスクリーモ/メタルコ
アの見事な折衷。ベースを弾きながら歌うヴォーカルの両脇でギタリストふたりが
フレーズをハモらせながら、モッシュやツーステップを誘う。それぞれにちょっとず
つ何かが足りないと思わせるものの、昨年、本格始動したばかりという若いバンド
だ。ステージングも含め、さらなる成長に期待したい。新曲のメランコリックなメロ
ディが印象的だった。

そのBloody Cigaretteからバトンを受け取り、「ひとつになろうぜ!」と客席に訴えかけ
たGive Nothing Backも、昨年9月に結成された若いバンドだ。ふたりのヴォーカリス
ト(ひとりはシンセを兼任)を含む6人が乱舞という表現がぴったりの激しいアクション
を交えながら、爆音を鳴らしたオープニングには、いきなり度肝を抜かれた。身上は
Fear, and Loathing in Las Vegas以降とも言えるエレクトリーモ・サウンド。さまざま
な要素が絡み合うカオティックな楽曲の数々は、結成6ヶ月の若いバンドとは思えな
い熱量を放っている。演奏もなかなかにテクニカルだ。それだけに「ひとつになろう!」
という熱い想いが客席に伝わらず、若干、空回りしていたように見えたのが残念だっ
た。Bloody Cigaretteにも言えることだが、キャリアの浅い、若いバンドはひとつにな
ることよりもまず自分たちが懸命に、あるいはとことん楽しみながら演奏している姿を
見せるべきだろう。そうすれば、おのずと一体感も生まれるはず。次は、元々持ってい
るスケールの大きさを2倍にも3倍にもできるようなライヴを、ぜひ見せてほしい。

決して盛り上がっていないわけではないんだけれど、バンドと観客の気持ちがいまひ
とつ嚙み合わないまま、なんだかもやもやとした空気に突破口を空けたのが、MAKE
MY DAYだった。エレクトロニックなサウンドをアクセントに使いながらもIsamu(vo)の
シャウトとJulian(g,vo)のクリーン・ヴォーカルを軸にした正調スクリーモ/メタルコ
ア・サウンドは、この日、一番シンプルだったかもしれない。それでも物足りなさをこれ
っぽっちも感じさせなかったのは、精力的なライヴ活動とともに築いてきたキャリアに
裏打ちされた自信が感じられたからだ。前身バンド時代はギミックも効果的に使って
いるイマドキのバンドという印象だったが、今や彼らは抜き身のサウンドで勝負するス
トレートなバンドに生まれ変わったようだ。ラストはIsamuに促され、観客全員が突き
立てた中指を高々と掲げるという壮観な景色が出現した。

FFTHのLidy(vo)曰く「まさか出てもらえるとは思わなかった」というBACK-ONは2002
年結成の4人組。ラップ担当のMCがメンバーにいるせいか、便宜上、ミクスチャー・バ
ンドとされているようだが、爽やかなポップ・ロック・ナンバーの数々は、いわゆるミクス
チャー・ロックとは明らかに異なる個性を印象づけると同時にラウド・ロック系のバンド
が顔を揃えたイベントにおけるアクセントとして、広がりを作り出す役割を見事、果たし
ていた。

そして開演から3時間。この日の主役であるFFTHは前述したようにベースを演奏で
きないHiroがシャウト・ヴォーカルを務めるという変則的なパフォーマンスで挑んだ。
この日を迎えるLidy、Kouichi(g,prog)、Hiroたちメンバーの心境は複雑だったに
ちがいない。リリース・ツアーのファイナルだ。万全の態勢で臨みたかったはず。しか
し、キャンセルや誰かにピンチヒッターを頼むという選択肢は、最初からメンバーたち
にはなかったんじゃないか? 前作からほぼ2年ぶりとなる『RETURNERS』をリリー
スしたことで、ようやく速度を上げはじめた活動をさらに加速させるには現在のライン
ナップで今回のピンチを乗り越えることが一番という気持ちもあったかもしれない。

1曲目“Do You Hate Me?”から怒涛の2ビートでたたみかけ、そこから“Silverwalker”
“King Boy & Queen Girl”など、『RETURNERS』の収録曲を中心にシンセがギラギ
ラと鳴るディスコ・ナンバーやブレイクダウン・パートを含むメタルコア・ナンバーといっ
た、彼らがこれまでさまざまな挑戦を繰り返してきたことを物語る変幻自在の曲をつな
げていくと、「待ってました!」とばかりに観客はモッシュ・サークルやツーステップで応え、
バンドとともに大きな熱気を作り出していった。
アコースティック・バージョンも作られた“Alice”ではストリングスやピアノの音色も用い、
壮大な世界観もアピール。大音量や激しい演奏で圧倒するだけではなく、こういう耽美
的な魅力も味わわせ、ぐぐっとその世界にひきこむところもまた、FFTHのライヴの醍醐
味だ。
ベースがないことを感じさせないライヴだったとは言わない。しかし、マイク片手に暴れ
まわったHiroのがんばりもあって、物足りなさはなかった。熱演からもLidyのMCからも
真摯に音楽に取り組む、彼らの熱い想いが伝わってきた。アンコールの“Human VS.
Creature”でライヴを締めくくったとき、メンバーたちもこういう形でライヴで臨んだことに
悔いはなかったにちがいない。

4月から3ヵ月連続で会場限定のシングルをリリースすることを発表したLidyは次のシン
グルが「歌ものが続いたから激しいものになる」と予告すると、「8月か9月にフルアルバ
ムをリリースする」と宣言。「これから曲作りの苦しい日々が始まる」と苦笑いしていたが、
メンバー一丸となってピンチを乗り越えたこの日のライヴがそんな活動をさらに勢いづ
かせることはまちがいない。


text by Tomoo Yamaguchi
photography by yuki



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