SLIPKNOTも影響を受けたモンスター・バンドが
初来日。凄惨でファニーなライヴを展開!?

GWAR
March 7th, 2014 at Akasaka Blitz, Tokyo

3月23日、GWARのフロントマンであるオーデラス・ウランガスことデイヴ・ブロッ
キー氏が急逝されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。3月初旬に行われ
た初の日本公演が、GWARとしては最後のツアーとなりました。このツアーより、
東京の赤坂BLITZ公演のライヴリポートを、ここに掲載いたします。


1988年のデビュー以来、おどろおどろしいヴィジュアルと、場内に血しぶきが飛ぶシアト
リカルなパフォーマンスによって欧米で絶大な人気を誇るGWAR。SLIPKNOTやLORDI
にも影響を与えた元祖モンスター・バンドが、約30年の時を超えて3月6、7日に初来日。
東阪で圧倒的なライヴを観せてくれた。
彼らについてもう少し説明すると、彼らは地球に追放された異星人(という設定)。人類を
滅亡させて地球を滅ぼすことを目的とし、ステージでは血湧き肉踊るメタル・サウンドとと
もに、さまざまなキャラクターの処刑が行われていく。さらにはGWARを倒そうとする敵と
戦う場面もあり、ライヴはさながらメタル版グラン・ギニョール、あるいはSFスプラッタ・オ
ペラといった様相。気がつくと自らもモンスターたちに感情を支配され、快楽の奴隷となる
しかない。

実はかくいう筆者も、この日がGWARのライヴ初体験。どんなオーディエンスが集まって
くるんだろうと開場直後に赤坂BLITZに着くと、グッズ売り場はすでに「奴隷」たちで長蛇の
列。場内にも思い思いのメタル系Tシャツにそれぞれの美学を感じさせる観客が多く、何よ
りもガタイのいい外国人の姿が目立った。加えては「演出で赤い塗料の入った水が撒かれ
ます。付着したとしても洗い流せるものであり、人体に影響を与えるものでもありません」
といった場内アナウンスも、まだ観ぬ狂宴への期待をさらに膨らませた。
開演の時間が近づくにつれ、空気の密度が濃くなって熱気を帯びていくフロア。GWARに
対する観客ひとりひとりの思いは強く、奴隷の格好をしたスタッフがステージを横切った瞬
間、もう待ちきれない! といった様子でフロアは早くもひとつに。あちこちで手拍子とともに
拳が突き上げられ、野太いGWARコールも場内がすでに臨戦態勢であることを物語った。
フロア前方では早くも肩と肩を激しくぶつけ合う野郎と外国人の姿が。そしてSEが流れると
同時に突き上げられるメロイック・サイン。そして妖しく照らし出されるバンド・ロゴ。悦楽の
スペクタクル・ショーの始まりである。

「(日本ツアー実現を)ずっと待っていたぜ!」。
さらにオーデラス・ウランガス(vo)は、四文字
言葉を巧みに使いながら場内を挑発。ライヴ
は、地球に追放される前のGWARについて
歌った“Madness At The Core Of Time”で
スタート。モンスターというより戦記物のファ
ンタジー映画に登場するキャラクターといっ
たメンバーは、その風貌と叩き上げのダイナ
ミズムによって冒頭からオーディエンスを手
中に収めた。
ともすればキワモノといったイメージを抱かれ
がちなGWARだが、サウンドは奇をてらうこと
なくオーセンティック。メタルのドラマ性にハー
ドコアのアグレッシヴさが相まっての楽曲は、
どれも小気味好くライヴ映えするとともに歴戦
で培った含蓄が滲むもの。モンスターたちもラ
イヴ・バンドとしての面目躍如を観せた。
それこそ持ち前のヴィジュアルやコンセプトが
なかったとしても十分に勝負できる楽曲があり、
各人も職人のごとくバンド内での役割を果たし
てGWARの音世界を構成。特にジズマック・ダ・
ギャシャーの躍動的なドラムからは派手さは感
じられないものの、劇的なダイナミズムの推進力としてキッチリ機能。また、オーデラスのダミ声
に絡むビーフ・ケーキ(b)のサイド・ヴォーカルも、楽曲をより立体的に聴かせることにひと役買っ
ていたと言える。

そして待望(?)の生け贄は“Salaminizer”で登場。GWARのしもべである奴隷に扮したスタッ
フに連れてこられたのは、IRON MAIDENのマスコットであるエディを彷彿とさせるキャラク
ター。悲しき犠牲者は胸から、さらにはオーデラスに頭をはねられた首元から血しぶきを大
量発射。その横ではプストラス・マキシマス(g)が、エモーショナルなソロをプレイ。オーデラ
スも挑発的な言動で場内にGWARコールや拳を求めた。ステージ前に陣取った観客たちは
血しぶきを浴びながら、舞台上で繰り広げられる出来事に呼応。筆者はこうした光景を目の
当たりにして、メモに“背徳のロックンロール・パーティ”と記入。さらにアンダーラインを引いて
いた。
その後もさまざまな生け贄の処刑が続いた。ポリスの格好をしたブルドッグといったキャラク
ターは、血を散々まき散らした後に背中に棒を突き刺され、丸焼きにされる豚のごとくステー
ジを後に。また、ミイラ化の進む車イスの老女といったキャラクターは、腕に内蔵を抱えなが
ら奴隷に顔の皮をはぎ取られ、さらには奴隷や亀のモンスターと小競り合いを繰り広げたり
もした。

だが、ただ血生臭く凄惨なだけのライヴなのかと言えばそう
とも限らず、見せ物小屋を思わせる猥雑さやB級感で、どこ
かファニーな雰囲気が憎めないのもまたGWARだったりす
る。登場したキャラクターがリード・ヴォーカルを取りはじめ
たり、キャラクター同士の関係性がハッキリせず、頭に“?”
が浮かんだりする場面も何度となくあったが、逆にそんなグ
ダグダ感も熱狂のうちには人間臭く(?)映って、なんとなく許
せてしまう。

「We Wan’t More!  We Wan’t More!」。本編だけでも十分
に濃密だったが、人間はつくづく欲張りである。もちろんバン
ドもまだまだ余力を残しており、オーデラスが自らのイチモツ
を振ると血しぶきがドバー。アンコールでBILLY OCEAN(80
年代に活躍した英ブラック・シンガー)の“Get Outta My Dre-
ams, Get Into My Car”からTHE WHOの“Baba O’ Reilly”
へと展開するカヴァーを持ってくるセンスにも思わずニヤリ
だが、フロアを見ると奴隷役のスタッフがあちこちでオーディ
エンスにちょっかいを出している。オーデラスの血しぶきも勢
いを増し、そして場内はカオスな熱狂と悦楽のクライマックス
を迎えた。

興奮冷めやらぬ中、ステージとフロアを分ける柵の間に姿を
現したメンバーに観客が「Come Back Japan!」と声をかけた。よほど今回の来日に手応え
を感じたのだろう。当然のごとく観客が去ったステージ前のフロアにはどす黒い血だまりが
広がり、そこに陣取っていたオーディエンスも頭から血まみれで汗だく。だが、誰もが満面の
笑みで全身に残る余韻を楽しんでいるかのようで、会場のそこここからも「自分たちはすごい
ものを体験した」という連帯感からなのか、凄惨なライヴの後だというのに和やかな空気を感
じたりもした。まあ、常識ある大人としては青少年には観せたくないが(笑)。


文・兒玉常利/text by Tsunetoshi Kodama
photography by Takumi Nakajima


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