全国を駆け回った野獣5人組が
迎えた、東京でのツアーファイナル!!

HER NAME IN BLOOD
September 26th, 2014 at SHIBUYA TSUTAYA O-WEST, Tokyo

久しぶりのアルバムにしてセルフタイトルを冠した作品をリリースしたHER NAME
IN BLOOD。それに伴うツアー「RETURN OF THE BEAST TOUR 2014」を、9月
26日をもって終了させた。後述するが、アルバムリリース当日にTJ(g)が負傷し、
急遽サポートメンバーを起用する等波乱含みのツアーではあったが、いやはや、
最後に男(オス?)として、キッチリと落とし前をつけてくれた

ほの暗い照明で照らされていたフロアが暗転したのは、定刻を10分ほど過ぎた頃
のこと。映画『ターミネーター』のテーマ曲をバックに、まずバンドロゴのフラッグが
せり上がってくる。そのフラッグを背に、メンバーが姿を現し、所定の位置についた。
最後に、レザージャケットに身を包んだIkepy(vo)が登場。そのゴツい体格と相まっ
て、なんだか格闘家のリングインみたいに見える(笑)。
そして硬質のリフがすり足でにじり寄ってくるかのような“Zero (Fucked Up World)”
の一撃で、ライヴをスタート。早々にステージ前のセキュリティの目をかいくぐって
ステージダイヴを敢行する者が現れるなか、“Gasolines”、“Revolver”と続ける。と
にかく音の強度と密度が尋常ではないが、同時にメンバーの表情や立ち振る舞い
からは余裕さえ感じられた。
「オレたちとお前たち、1対1の勝負だ!」
Ikepyの挑発的な一言とともに放たれた、彼らの曲でも随一のブルータルさを誇るデ
スメタリックなチューン“Impulses Within”で、フロアはさらにカオス化していく。また
“Revolver”ではBEFORE MY LIFE FAILSのMatsunoが、“This is Retribution”では
CRYSTAL LAKEのRyoが音源どおりにゲストヴォーカルとして登場し、華を添える
場面もあった。

フロアを見渡してみると、以前よりも随分と屈強な男性ファンが増えた印象だ。まだ
キャリアが浅い頃は、メンバーと同年代の若い女性や、エモ/スクリーモ流れのファ
ンが大半を占めていたが、今や、明らかに年季の入ったメタルやハードコアのリス
ナーと思われる人も少なくない。もともとUmebo(ds)を筆頭に演奏テクニックには
定評のあるバンドだったが、サウンドから余分なものを削ぎ落とすことで、メンバー
の持つバックグラウンドがより豊かに反映されるようになった結果だろう。勇壮なハー
ドロックから残虐なデスメタル、叙情的なメタルコアまで、一本の芯を通して骨太に
プレイし切ってみせることができるようになったのだ。ライヴと制作を重ねることで、
サウンドの強さとともに、説得力が増していることの、何よりの証拠だ。これをやって
のけているのは、シーンを見渡しても、彼ら以外には見当たらない。

またこのツアーファイナルシリーズ最大の懸念事項は、やはり先述のTJの件だ。
『HER NAME IN BLOOD』発売のまさに当日に、転倒により左腕を骨折。その日
のライヴはDaikiのみのシングルギターで急場を乗り切り、それ以降はSAILING
BEFORE THE WINDのbitoku(本来はベース)、The Winking OwlのYoma、
そしてCyclamenの勝乗貴志らを代わる代わるサポートに迎え、ツアーをこなして
来た。3人とも腕のあるプレイヤーだったこともあって、ツアーそのものは成功した
と言えるが、TJはライヴという現場から離れたまま、治療とリハビリに専念する時
間ばかりが過ぎていった。そして今回の東名阪のファイナルシリーズから、やっと
こさ復帰。この最終日を迎えたというわけだ。正直、ライヴが始まるまでは不安な
気持ちが強かったのだが、いざ始まってしまえば、TJは見事にバンドのピースとし
てカッチリはまっていた。たしかにところどころのキメ等、心もとない部分はあった
が、150日ぶり、ほかのメンバーとの場数の違いは17本ということを差し引いても、
しっかりと下準備をしたうえで臨んでいることが見て取れた。

また特に印象的だったのが、中盤だ。Ikepyが一度引っ込み、インストゥルメンタル
の“Dusting”を披露。そしてそのままUmeboのドラムソロへと流れていく。そして再
びメンバーが戻ってきたかと思いきや、METALLICAの“Seek And Destroy”を途中
までカヴァーしてみせた。今回はワンマンということもあっての、小休止の意味も含
んだお遊び的なひとときとなっていたと思う。以前からSLAYER等の名曲を、あくま
で一部分だけプレイしていることもあって、毎回何をやるのかが少し楽しみだったり
もしていたのが正直なところだ(笑)。ちなみにこの日はPANTERAの“Domination”
も一部分だけプレイしていた。

“Unshaken Fire”に初期の名曲“Decadence”、そして“HALO”でウォール・オヴ・デ
スを巻き起こし本編は終了したが、当然食いたりないとアンコールが沸く。それに応
じて登場したIkepyが「お前らからアンコールって言ったんだから、容赦しねえから
な!」と再び挑発。発表以降、すっかり定着したLady Gagaのカヴァー“Poker Face”
で、ついにビーストが暴れまわる100分が終了したのだった。

MCで「今後のことはノープランだが、来年には音源をリリースしたい」と語った彼ら。
今回のツアータイトルの通り、全国を廻ってビーストとなって帰ってきたわけだが、
ここで手を緩めるはずもない。次なるアクションで、ビーストはまたとんでもない進
化を見せてくれるに違いない。
ちなみに終演後、来場者には“Poker Face”を再録した非売品CDがプレゼントされ
た。こういった粋な気遣いをみせるのも、彼らが愛されている所以のひとつなのだ。


text by Yusuke Mochizuki
Photography by NOBUYA FUKAWA


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