激しく混沌、そして楽しいライヴは、
エクストリームメタルにして米ハードコアを彷彿!?

IN DREAD RESPONSE
February 20th, 2016 at Ikebukuro KINGSX TOKYO, Tokyo

GrindHouseがTOWER RECORDS、池袋KINGSX TOKYOと手を組んだ、来日ショウケース・ギグ・シリーズ「FOUR unite ONE(FuO)」第6回が、2月21日(土)に開催。今回はニュージーランドのエクストリームメタル5人組、IN DREAD RESPIONSEがKINGSX TOKYOを熱狂の渦に叩き込んだ。ヴォーカルのベン・リードは以前日本に住んでおり、ライヴ中もMCは全編日本語。GrindHouseの望月裕介氏とも、その時からの仲だという。ここに当日の模様を徹底レポートしたい。

この日トップバッターを務めたのは、プログレッシヴ・マス・メタルコア・バンドとして鳴らすArise in Stability(AiS)。ベンとは「彼が日本に住んでいた時、AiSが関西にツアーする際に(車の)運転手をしてもらった」(Masayoshi Onodera/g)ことがあるんだとか。
ライヴは、スペクタクルな映画の幕開けを彷彿とさせる“Maverick's wind”のイントロから、面目躍如な“Magnet clock”へとドラマティックに展開してスタート。冒頭から濃密なグルーヴが圧巻だった。
モニターに足をかけ、高い技術に裏打ちされたフレーズを奏でるOnodera、Tatsuya Kobayashi(g)。Housuke Taniguchi(vo)は、内に秘めた感情を一気に吐き出すように咆哮。メロウ・パートでは情感的なヴォーカリゼイションで迫ってくる。バンドも冒頭からジェットコースターのようなメタル絵巻を繰り広げ、こちらとしては目まぐるしい展開に身も心も翻弄されるばかり。加えては、真摯なパフォーマンスも印象的に映った。
「ライヴでやるのも2回目だし、ましてや現メンバーでは初めて。ちゃんとできるかな(笑)」(Taniguchi)とプレイしたのは、“額紫陽花”。だが、確かなテクニックと練られた構成が支える同曲は激しくスリリングに響き、劇的な展開は脳裏に映像的なものを喚起するようでもあった。その証拠にフロアには、ステージ上を見入るといったオーディエンスの姿がちらほら。長尺の曲の連続に続いて「短い曲をやる」(Taniguchi)と披露された“Left Infinite Time”では、逆にストレートな突進力が高揚感を生んだ。
ラストも、8分を超える“Creation of Ruin”でAiSの世界をダメ押し。3月13日の立川BABEL公演を最後にKobayashiが脱退してしまったのは残念だが、新ギタリストを迎えた彼らの活動は今後も要注目だ。

続くHONE YOUR SENSE(HYS)は、ジャパニーズ・シンフォニック・デスメタルの雄、Serenity in Murderが2015年7月に開催したRedruM Festで、IDRが初来日した際も共演。筆者は転換時、昨年3月に同会場で行われた同じくGrindHouse主催の「good evening with…CANCER BATS」で、がむしゃらにゲスト・アクトを務めるHYSの姿を思い出したりもしていた。
ライヴの始まりに向けて、ステージ最前列に詰め寄るオーディエンス。それだけでも様子見の観客が少なくなかった約1年前とは状況がずいぶん違う。HYSも一発目の音が鳴った瞬間から気合を漲らせ、完全に臨戦態勢。Kousuke Matsuzaki(g)は小手調べに軽くジャンプ。Kenta Baba(g)もギターをマシンガン代わりに乱射するアクションを決め、バンドは一丸の力技でのっけからフロアを掌握した。
自分もHYSを観るのは1年ぶりだったが、持ち前のブルータル&スリリングなダイナミズムに磨きがかかり、各人の一挙手一投足からは現在のHYSに対する自信のほどがうかがえた。中でもToru Bara(vo)のパフォーマンスには想わずニヤリなふてぶてしさ(?)が加わり、アジテートするようにフロアに対する姿は改めて強い説得力を感じた。
HYSという名の戦車が突進を続け、濃密な空気が場内を支配する。その一方ではキャッチーさや人間味が随所に息づくのもまた彼らの持ち味だ。コール&レンポンスを求め、「(イベント・タイトルどおり)もっとユナイトして、ライヴしようぜ!」とフロアに気を吐くBara。Kentaにおどけた表情を見せるSatoshi Matsushima(b)。足をガッと開いた腰低い体勢でヘヴィなサウンドを奏でるKenta、Matsuzaki、Satoshi。そして激烈なグルーヴに頭を揺らすオーディエンス。激しく楽しい全8曲約40分はあっという間だった。
「正月からこもってレコーディングしていて、今現在もやってる。夏前にはいろいろいいニュースが発表できると思う」とBara。この日の圧倒的なライヴからして、新作にも期待がかかる。

そしてIDR。誤解を恐れずに結論を言うならば、音源の印象ともちょっと異なり、ライヴにはガキが逆ギレしてスパークしたかのようなドタバタの(?)疾走感があり、80年代のアメリカン・ハードコアに近い感触を抱いた。
最新アルバム『HEAVENSHORE』の日本盤ボーナストラックでは、現ZAZEN BOYSの向井秀徳(vo,g)がかつて率いたNUMBER GIRLの“I Don't Know”とともに、envyの“A Far Off Reason”をカヴァーしているIDR。実際、envy自体がアメリカン・ハードコアをベースにポスト・ハードコア/ポスト・ロックへと進&深化していったことを考えると、IDRはenvyを通してアメリカン・ハードコアの要素を血肉化したのだろう。 さらには、ニュージーランドというお国柄からか、はたまたパフォーマンスからも滲みでる人の良さか。たとえエクストリームなメロディック・デスメタルをプレイしても、どこかカラッと大らかな印象が。そこがまた、アメリカン・ハードコアを彷彿とさせるところだと言える。

セット・チェンジの際も、オーディエンスが声をかければフレンドリーに対応するメンバー。暗転するとフロアからは野太い歓声。赤いライトはステージを照らし、ドラムの両脇に建て替えられたバックドロップのバンド・ロゴを浮かび上がらせた。
改めての登場とともに観客にハイタッチして回るスティーヴ・ボーグ(b)。オープニングSEとして流れる“Divination”に合わせて拳を突き上げ、「Oi! Oi!」と場内を扇動するベン。そして邪悪なシャウトを合図に、バンドは『HEAVENSHORE』同様、“Earthen Bonds”へとなだれ込んでいった。激しくカオス、その一方で底抜けに楽しいライヴが続く。それこそ猪突猛進型のダイナミズム、真っ直ぐさの滲むパフォーマンスには憎めないものがあった。
実際、大きな体でバタバトとドラムを叩くコリィ・フリードランダーは、駄々をこねる子どものよう。あやふやな日本語MCがご愛嬌のベンも、顔を真っ赤にして咆哮。その横ではトラジャン。シュウェンケ(g)が頭のネジの弾け飛んだかのようなアクションを見せ、マイクに向かってシャウト。ベンと共鳴する。スティーヴもオーディエンスとの距離を詰めるように前に出、ウィリアム・クリーヴァードン(g)は、クールにテクニカルなソロを決める。
そうしたバンドのひたむきさに、オーディエンスも呼応。ステージ前では観客の頭がヘッドバンギングで激しく波打ち、フロア中央ではプリミティヴな衝動に任せたおしくらまんじゅうが始まった。
一体感が場内をさらに熱くする中、“Myrrhbearer”にはSerenity in MurderのEmi Akatsu(vo)がゲスト参加(彼女はスタジオ盤でもフィーチャリングされている)。情念的なブルータルさでベンと渡り合った。加えてはベンがフロアに降りていったり、望月氏がステージ・ダイヴを敢行する(おいおい!)場面もあり、ライヴは“Multiplex”で濃密なクライマックスを迎えた。

爽快な余韻の中、5人は「ミナサン、写真撮ッテイイデスカ?」(ベン)と、オーディエンスをバックに記念撮影。終演後のサイン会が行われるロビーでは、彼らと直に触れ合うことで「よりいっそう(IDRを)好きになった」という声も聞こえてきた。
なお、5月21日(金)の同ライヴハウスでは、CANCER BATSに続く“good evening with…”として、カナダのスクリーモ/ポスト・ハードコアの雄、SHREDDY KRUEGERを迎えた“good evening with…SHREDDY KRUEGER”が行われる。


text by Tsunetoshi Kodama
photography by Kana Tarumi


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