キャリア50年の重鎮からデジタル・ロック系の
新進気鋭まで、今年の鋼鉄宴をレポート!

LOUD PARK 16
October 8th & 9th, 2016 at Saitama Super Arena, Saitama

昨年、SLAYER、MEGADETH、ANTHRAX、ARCH ENEMYらの出演により、開催10周年を華々しく飾ったLOUD PARK。2016年は正統派をフィーチャーしながら、さまざまなスタイルの全39組がさいたまスーパーアリーナに集結したと言える。そんな中、昨年同様に会場のメインアリーナには交互にライヴが行われる2ステージ、加えてコミュニティアリーナにも1ステージを設置。2日間にわたってSCORPIONS、WHITESNAKE、SHINEDOWN、NIGHTWISH、KILLSWITCH ENGAGEらが、キャッチコピーである“日本最大にして唯一のメタル・フェス”にふさわしいライヴを繰り広げた。

SONS OF TEXAS

筆者は、ULTIMATE STAGEのSONS OF TEXASから参戦。8月の日本発売以前より1stアルバム『BAPTIZED IN THE RIO GRANDE』で彼らは、早耳のリスナーを中心に注目を集めていた。実際、オールド・スクールなアメリカン・ロックを下敷きにしたヘヴィ・グルーヴ、そしてがむしゃらなアグレッシヴさは、今後のさらなる活躍を期待させるに十分。マーク・モラレス(vo)のライヴ・アクトは、バンドとして引き合いに語られることの多いPANTERAのフィル・アンセルモを彷彿させたりもした。

ZARDONIC

さらにBIGROCK STAGEは、新進気鋭のDJ/サウンド・クリエイターとしてプレデター風の近未来的マスクでも注目のZARDONIC。登場するなり彼は、観客との距離を詰めるようにステージ前方で日の丸を振り、不穏な空気をはらんだデジタル・ロックで午前中のまったりモードを切り裂いた。正直、メンツからもアウェイな感はあったが、DJブースでツマミを操作する表情を読み取ることができず、逆に不敵で得体の知れない印象も残った。そんな中、デジタルなヴァイヴの大波小波にフロアではいつしかおしくらまんじゅうも始まり、彼は確実に「爪痕を残した」と言える。

CANDLEMASS

ドゥーム・メタルのパイオニアとして30年以上のキャリアを誇るCANDLEMASSは、今年のラウパが初来日。自分も今回のラインナップで最も観たいバンドだった。彼らは、最新シングル“Death Thy Lover”でも見せた、出自に立脚しての懐の深いライヴが強力。ヘヴィなグルーヴにモダンなテイストを加味しながら緩急巧みだった。4年の活動を経た今年、正式メンバーとなったマッツ・レヴィン(YNGWIE MALMSTEENなどの活動で知られる)も多面的なヴォーカリゼイションで場内を扇動。そして後半では、持病のために来日を見合わせたはずのレイフ・エドリング(b)も登場。実は病気を押して来日していたそうだ。こちらの予想を遥かに超え、というか、快く裏切る形のライヴとなった。

ARMORED SAINT

ARMORED SAINTは、ANTHRAXでも活躍したジョン・ブッシュ(vo)らによる82年結成のベテラン。初期は鎧のコスチュームでライヴを行っていたりも。彼らもCANDLEMASS同様、今回が初来日。派手さはないが、カラッとアメリカの正統派らしいサウンドと気合のこもったパフォーマンスでオールド・スクールの懐の深さを見せつけた。ジョンは後半、フロアを分け入って観客を扇動。こちらとしても気がつくとバンドの術中にはまっていった感があった。最後の“Can You Deliver”には、小学生ぐらいの男のコ(ジョンの息子か?)もギターでゲスト参加。

EXODUS

続くEXODUSは、音の悪さも功を奏した(?)ドタバタとやさぐれたスラッシュ・メタルが痛快だった。
まあ、SLAYERと兼任のゲイリー・ホルト(g)が不参加だったのは残念(そのことを皮肉るようにSLAYERの“Raining Blood”のイントロをプレイする場面も)だったが、スティーヴ“ゼトロ”スーザ(vo)のダミ声ヴォーカル、そして観客に対する挑発的な言動を前面に、バンドは突進に次ぐ突進。そんなブレーキの壊れたトラックの勢いに負けまいと、フロア前方では左右2つのモッシュが荒々しく渦を巻き、拳で人海が激しく波打った。
最後は熱狂のさらに先の風景を見るにはうってつけの“Strike Of The Beast”。カオスな盛り上がりを見せるフロア。そんな観客に「ヘヴィ・メタル、フォーエヴァー! アリガト!」とゼトロ。終演後、場内を熱っぽい余韻が支配したことは言うまでもない。

SHINEDOWN

そんな力業のEXODUSに対してSHINEDOWNは、細部にまで計算の行き届いたステージ構成に瞬間瞬間のエモーションが交錯しての、メリハリの効いたパフォーマンスが圧巻だった。
メタル・フェスにあってモッズ/ガレージ・バンドを思わせるスーツ姿で小粋に決めたバンドは、多分に芝居がかったブレント・スミス(vo)を中心に、小気味好くアグレッシヴなダイナミズムで場内を掌握。ブレントのヴォーカルにも説得力があり、キャッチーなメロディが胸に強く響いた。
エリック・ベース(b)によるアコギの効果的な使い方や、絶妙なタイミングでのフロント陣のドラム台からジャンプ等々。一見すると各人の協調とせめぎ合いで濃密なライヴを繰り広げているように見えるものの、冒頭でも触れたように見せ方聴かせ方、そして盛り上げ方はきっちりと心得ている様子。ブレントは後半、フロアに降りて続くCHLDREN OF BODOMを待つBIG ROCK STAGE側にまで煽りに行く場面も。最後まで心難かった。

SCORPIONS

もちろん1日目のトリは、50年のキャリアを誇るメタル界の重鎮、SCORPIONS。活動終了を撤回しての最新アルバム『RETURN TO FOREVER』(2015年)から70年代の代表曲メドレーまで、小気味好くキャッチーな好曲を連発。彼ら用にBRGに特設された花道とサブステージも、よほど気に入ったのだろう。特にアクティヴだったルドルフ・シェンカー(g)をはじめ、フロントの4人はやたら先端まで出てきてフロアとコミュニケイト。首尾一貫して楽しく軽妙なライヴを展開した。

日本公演でお約束の“荒城の月”は、クラウス・マイネ(vo)がまずアカペラで歌い、観客がその後合唱。バラードの“Send Me An Angel”はサブステージに集まり、アンプラグド・スタイルでこちらの胸を優しくかき鳴らした。加えて9月に正式加入したミッキー・ディー(ds)が元MOTORHEADということで、LEMMYに対する哀悼の意味を込めた“Overkill”もプレイ。ミッキーもすっかりバンドのムードメイカーになっており、クラウスと仲良く肩を寄せ合う姿も印象的だった。

さらにアンコールでは、翌日出演の元メンバー、ULI JON ROTH(g)がゲスト出演。“We'll Burn The Sky”」(77年)で、日本では78年の脱退後初めての共演が実現。この日をまた特別なものにした。


KUNI

2日目は、日本人ギタリストとして渡米し、86年のアメリカ・デビュ-から30周年を迎えたKUNIからスタート。彼は赤い髪に青いシャツ、黄色いスニーカーといった格好でULTIMATE STAGEに登場。サウスポー・スタイルで時にテクニカル、時にエモーショナルなプレイを披露し、そのキャリアとミュージシャンシップを改めて印象づけた。ラストはセクシーに体をくねらせる女性ダンサー2人を従え、KISSの“Rock And Roll All Night”。エンディングではギターを破壊し、大団円を迎えた。

LACUNA COIL

LACUNA COILは9年ぶりのラウパであり来日。冒頭からフロント陣が横一線に並んで激しく頭を振る様は、前回も同じだったなと初来日での気合い漲るライヴが懐かしく思い出された。その一方、9年ぶりに観る彼らは、さまざまなコントラストを見せるクリスティーナ・スカビア、アンドレア・フェローのツイン・ヴォーカルを軸に昂然。クラシカルな側面とモダンな側面が織り成すヨーロピアンなメタル世界を展開した。実際、バック陣によるヘヴィ&タイトなダイナミズムの上、女と男、凛とした力強さに対してのエモーショナルな力強さ、そして妖しさに対する激しさがスリリングに交錯。ダイナミックにしてメランコリックなパフォーマンスには、翻弄されっぱなしだった。

WITH THE DEAD

そして筆者は第3のステージとしてコミュニティアリーナに設置されたEXTREME STAGEに移動。誤解を恐れずに言うならば、WITH THE DEADのライヴは、今後これ以上のドゥーム・メタル・バンドは現れないんじゃないかと思うほどのインパクトがあった。邪悪なヘヴィ・グルーヴは音塊として心をかき乱し、リー・ドリアンの呪術的な歌声は異形の悦楽世界へと手招き。元ELECTRIC WIZARDのティム・バグショウ(g)ら強者のバック陣が黙々とプレイする中、リーは意味ありげに拳を突き上げ、フロアも呼応。そしてティムが濃密なソロを弾く横でリーは、シャーマンを思わせるアクションを見せたりした。曇天ながらも天井から明かりの溢れるEXTREME STAGEは、いつしか漆黒の闇に包まれたかのような妖しい雰囲気となり、終演後もしばらく日常から隔離された気分が続いた。


ULI JON ROTH

マグロの漬け丼をかき込んでメインアリーナに戻ると、BIG ROCK STAGEはULI JON ROTH。前日の光景が思い出される中、70年代のSCORPIONS楽曲、それこそ前日にバンドもプレイした“Catch Your Brain”、共演が実現した“We'll Burn The Sky”等も披露された。SCORPIONSの現在の軽快さに対し、原曲の世界観を体現するようにヨーロッパ的だったULI。ギター仙人などと称される彼は、指先に魂が宿るかのような華麗なプレイを披露。そんな姿に接しながら筆者は、80年代以降、両者が進んだ道の違いを再確認したりしていた。

KILLSWITCH ENGAGE

BRSには続いてKILLSWITCH ENGAGE(KsE)が登場。オープニングからアグレッシヴさとキャッチーさが交錯する濃密なダイナミズム、そしてステージが狭く感じられるほどの激しいアクションで観客を攻め立てた。
それこそアダム・デュトキエヴィッチ(g)は大きなやんちゃ坊主のようであり、ジェシー・リーチ(vo)も拳を突き上げ、凄みを利かせたシャウト。ジョエル・ストローゼ(g)、マイク・ダントニオ(b)も感情に任せて頭を振る。フロアでは1曲目の“My Curse”から左右2つの渦潮が荒々しくグルグル。約60分のライヴは爆走する戦車を彷彿させると同時に、ハードめのジェットコースターに乗ってしまったかのようなスリリングさがあった。
ラストは“In Due Time”。モニターには濁流に巻き込まれた岩のごとく、人海の上をステージ前と激しく向かって行くオーディエンスが大写しに。KsEはさまざまなスタイルのメタル・バンドが集う中、メタルコアの第一人者としての貫禄と底力を改めて見せつけたと言える。

DIZZY MIZZ LIZZY

さらに卓越した3人が織り成す圧倒的な演奏力と、LEDモニターを駆使しての近未来的なステージ・セットで魅せたのがDIZZY MIZZ LIZZY。実際、バックライトに照らされてプレイする3人が、ステージを覆う幕に浮かび上がるオープニングから気が利いていた。その後もバンドはハード&タイト、そして最大限までそぎ落としたダイナミズムを披露。約1時間をスリリングに駆け抜け、件の演出も小気味好く繰り出される佳曲をより劇的なものにした。 

NIGHTWISH

NIGHTWISHは、フロール・ヤンセン(vo)を中心にシンフォニックにしてアグレッシヴなパフォーマンスを披露。最新アルバムのオープニング曲“Shudder Before The Beautiful”でドラマティックに幕を開けた全10曲約70分は、壮大なメタル・オペラと評するにふさわしかった。
威風堂々たる佇まいでフロールは、女王のごとくステージはおろか場内を支配。バック陣も濃密なNIGHTWISHワールドを具現化するため、彼女の有能な僕(?)というステージ上の役割を果たし、影となり日向となって彼女を盛り立てた。クラシカルなフレーズを繰り出すツォーマス・ホロパイネン(key)。アクティヴに動き、情感的にプレイするエンプ・ヴオリネン(g)。マルコ・ヒエタラ(b)も積極的なステージングを見せ、サブ・ヴォーカルとして力強い歌声で楽曲をより立体的に聴かせた。
そんな中、フロールは凛としてスケールの大きヴォーカルで観客の心を捉え、フロアを扇動。スペクタクルなサウンドに合わせて激しく頭を振り、その長い髪は虚空に大きな円を描いた。

WHITESNAKE

そして2日間を締めくくったのが、ハード・ロック/メタル界屈指のヴォーカリスト、デイヴィッド・カヴァデール率いるWHITESNAKE。オープニングから彼は、マイク・スタンドを逆さにマイクを“ナニ”に見立てるお得意のポーズを決め、気合十分だ。

今回は「THE GREATEST HITS TOUR 2016」の一環ということで、挑発的なギター・イントロで始まる1曲目の“Bad Boy”から代表曲を連発。ワイルド&エモーショナルに迫った“Love Ain't No Stranger”、デイヴィッドと約30年の付き合いになるトミー・アルドリッジ(ds)のパワフルなソロをインサートした“Crying In The Rain”、一発目の音が鳴った瞬間にフロアから歓声が上がった“Here I Go Again”など、ファンならば涙モノのライヴだったと思う。

確かに、デイヴィッドの歌が往年のヴォーカリゼーションには及ばなかったことは否定できない。とはいえ、ステージには40年以上のキャリアがあってこその現在の姿が。そして全身で声を絞り出す場面からは、ロック・ミュージシャンとして酸いも甘いも噛み分けた生き様を見て取ることができた。

最後はデイヴィッドのDEEP PURPLE在籍時を代表する“Burn”。渾身のシャウトを見せる彼。♪バーーン♪の部分で合唱し、手を挙げるオーディエンス。バンドと観客それぞれの思いが交錯した熱い約90分だった。

P.S.毎年の隠れたお楽しみであるオフィシャルバーの販売員、今年はコスプレのセクシー度が控えでちょっと残念。来年は出演者のラインナップもさることながら、目の保養の部分でもお願いします!



text by Tsunetoshi Kodama
photography by ©LOUD PARK All Rights Reserved. & Mikio Ariga(SCORPIONS)


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