初のフルアルバムとともに新たな魅力を
アピールした、LUCY’S CROWNの4度目の来日公演!!

LUCY'S CROWN
January 23rd, 2016 at Ikebukuro KINGSX TOKYO, Tokyo

その日は朝から降っていた雨が夜には雪に変わると言われ、テレビの天気予報も今日は外出を控えるか、外出した場合はできるだけ早い時間に帰宅するように盛んに伝えていた。何年か前、東京に久しぶりに大雪が降った日、ライヴを見に出かけたら帰宅の途中、電車が止まってしまい、吹雪の中、1時間近く歩かされた経験がある筆者は、また遭難しかけたらどうしようとドキドキもので出かけたのだけれど、会場に到着する頃には雨はほとんどやんでいたので、ほっとひと安心。電車の中で雪かき用のスコップを持っていた男の人はわざわざ買ってきたに違いない。無駄になっちゃったね。いつの日か使える日が来るといいんだけど。
そんなことはさておき、真夏のオーストラリアから真冬の日本にやってきて、「雪はもう降ってる?」とステージからオーディエンスに尋ねたルーシー・ブルー(vo, key)は、雪を楽しみにしていたらしい。天気予報が降る降ると散々煽ったにもかかわらず、結局、雪は降らずじまいで、それはそれで気の毒だったけど、降ったら降ったできっと大変だったよ。「まだ雪を見たことがない」と彼女は言っていたけど、それは生まれてから一度も見たことがないという意味だったのかしら。もしそうなら見せてあげたかった。電車が止まらない程度に降るぐらいならね。

紅一点シンガー、ルーシー率いるオーストラリアの4人組グランジ/オルタナティヴ・ロックバンド、LUCY’S CROWNの4度目の来日公演がGrindHouse、TOWER RECORDS、池袋KINGSX TOKYOがチームを組んで、海外アーティストの招聘を行うプロジェクト「FOUR unite ONE」として実現した。GrindHouse magazineの読者ならLUCY’S CROWNの存在はすでにご存じのはず。今回の来日公演は、LUCY’S CROWNと日本でもオーストラリアでも共演経験があるカイモクジショウと、LUCY’S CROWNとは、この日が初対面だったトライアンパサンディという日本のバンド2組がサポートを務め、それぞれ個性的な女性シンガーを擁する3組の熱演が客席を沸かせた。

トップバッターは何かにとりつかれたような存在感を放つ女性ヴォーカリスト、西田夏海を擁するベースレスのトリオ、カイモクジショウ。我の強そうなギタリストとドラマーの存在等を含め、わかりやすいところで言えば、RAGE AGAINST THE MACHINEあたりを彷彿とさせるヘヴィなミスクチャー・ロックを徹底的にフリーキーかつダイナミックに奏でる。そこにステージを漂うように動きながら西田が加える歌、絶叫、呪詛といった多彩なヴォーカルが、観客をからめとっていった。

そのカイモクジショウとは180度違うベクトルを持ったトライアンパサンディの演奏に、オーディエンスはびっくりしたに違いない。客席に積極的に話しかけながら、エネルギッシュに動きまわって、客席を盛り上げるG-YUNcoSANDY(vo)も自分たちにとってアウェイなんじゃないかと若干気にしていたようだったが、どうしてどうして、きらびやかなシンセや打ち込みのビートも交えながら、この4人組が次々に披露したポップなダンスロック・ナンバーの数々はかなりパワフルで、演奏が波に乗りはじめると、ステージ前の観客が踊りだした。

対照的な2組が盛り上げたところに登場したLUCY’S CROWNは、ライヴの4日後にリリースされるニュー・アルバム『COLOURED RAIN』からキャッチーなコーラスが印象的な“Kicking Stones”をいきなり披露。いつの間にかスタンディングの客席フロアを埋めていたオーディンスは一気にヒートアップ。その後も新作からニルヴァーナやホールを彷彿とさせる“Forever”“So Lovely”といったグランジ・ナンバーや、ルーシ―が奏でるキーボードが印象的な代表曲“Skinn”をたたみかけ、日本人の女性ギタリスト、Mayumiをサポートに迎え、5人編成になったバンドとともに快調に飛ばしていったルーシーは中盤、新作のタイトル・ナンバーである“Coloured Rain”では腕に付けた特大の蝶の羽を広げ、観客にため息をつかせた。

ラストの“Love Sick”では人形とダンスしてみせるなど、シアトリカルなパフォーマンスはバレエや前衛舞踏からも影響を受けているルーシーならではのもの。2014年の来日では拘束着を使った、痛々しくショッキングなパフォーマンスを見せたことを思えば、今回のイメージはかなりポジティヴに感じられた。そんな変化はポップかつキャッチーな魅力が加わった新作にも表れていたが、新作の全10曲を軸にしたセットリストで臨んだ今回の来日は、元々持っていたゴシック調でダークな世界観のみならず、新たなバンド像も印象づけたはずだ。

色彩豊かな東京の街にインスパイアされた“T.O.K.Y.O”では、着物を羽織って歌う「ルーシー。女性ギタリストにリズム・ギターを任せたぶん、はエキセントリックなフレーズを存分にプレイ。ラストの“Love Sick”ではマーカス・ラギング(g)がスライド・ギターを唸らせながら、Mayumiとソロの応酬も繰り広げた。

アンコールではソニー・キング(b)がオーディエンスに日本酒をショットグラスで振舞い、その日集まったみんなで4度目の来日公演の成功に祝杯を上げた。今回もまた、バンドにとってもファンにとっても最高と言えるものになったに違いない。


text by Tomoo Yamaguchi
photography by Kana Tarumi


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