“あくなき挑戦”を繰り広げ続ける狼たちを
しっかり見届け、きっちり楽しんだ夜!

MAN WITH A MISSION
October 22nd, 2016 at Makuhari Messe, Chiba

前々から思ってた、MAN WITH A MISSIONには“あくなき挑戦”という言葉がよく似合うし、実にしっくりくる、と。

初フル作『MAN WITH A MISSION』(2011年)を発売からしばらく経った後の後追いで初めて聴いたとき、第一印象のひとつが「音楽的引き出しの多いバンドだなあ」だった。あれからもう5年近く経つけど、その音楽的引き出しの多さは枯渇することなく、むしろ天井知らず状態で続き今日より増えてるんだから恐れ入る。それがもっともわかりやすく表れてるのが、通算4枚目にあたる最新フル作『The World’s On Fire』(2016年)だ。それまで作曲・作詞・アレンジのすべてを、ジャン・ケン・ジョニーとカミカゼ・ボーイを中心にやってきたという“家内制作業”的経緯がある。で、とにかくいい曲が多い。ライヴで聴いてて曲のタイトルがすぐに思い出せなくともしっかりメロディ、サビ、曲は覚えてる、みたいな。これは曲の強さを如実に象徴する。そうした曲をこれまでにたくさん世に送り出してきたという自負は、間違いなく本人たちにはある。にもかかわらず、『The World’s On Fire』にはソングライティングのプロセスに外部コンポーザー、アレンジャー、プロデューサー数人を積極的に招き、“MWAMらしさ”からかけ離れないギリギリのところで新たな音楽的/曲的領域を切り開いた。前フル作『Tales of Purefly』(2014年)とは作風面でニュアンス、タッチが多々異なるのはそこからきてるし、違う方向にベクトルも向けてる。これなどはまさに“あくなき挑戦”以外の何物でもない。さらにその音楽的延長というか、別畑と言うか、報道キャスターにトライしたり、トーキョー・タナカにいたっては玄人はだしの料理の腕を披露するだけじゃ飽き足らず、ライヴ会場で販売もし、これがまた美味だというから驚く。「オレハイッタイ何屋ダヨ」というトーキョー・タナカによる自ツッコミツイートを見たけど、「うん、アナタはいったい何屋?」と思ったものだ(笑)。

『The World’s On Fire』発売タイミングの取材で、そういったことについてジャン・ケン・ジョニーはこう語ってた。
「ソウイウコトモデキルトイウコトヲ自分タチトシテハワカッテイマスシ、今後モ可能ナ限リヤッテイキタイデスネ」
ここまで広角的にエンタメ性を追求し、“あくなき挑戦”を繰り返しつつ観る聴く者を楽しませ、同時に自分たちももれなく目一杯楽しむという存在は、現在の日本のロック界のどこを見渡しても見当たらない。過去にも前例がない、と言い切っても差し支えないだろう。それだけMWAMは唯一無二の存在であり、また突き抜けてるのだ。
そうしたあれやこれやあって、いつもライヴを観るのも楽しみでワクワク感も膨らむ。ただ、自分の場合は「今日はいったいどんなライヴをやってくれるんだろう?」といったフツーのじゃなく、「今晩ヤツらはいったいなにをしでかすんだろ?」だ(笑)。"The World's On Fire TOUR 2016"追加公演 @ 幕張メッセ初日を観た。

幕張メッセは普段いきなれてるハコだ。サマソニ、パンスプといったフェスから、かつてはRAGE AGAINST THE MACHINE、LIMP BIZKITなどの単独公演を観てる。フェスだと、特にサマソニの場合あちこち場内を移動することもあり、さほど広さ、デカさなどは実感しないのだけど、この夜は違った。客席に入るや「デカっ! 広っ!」となり、あたり一面どこを見ても人、人、人、また人とまるで人の絨毯が敷かれてるようで正直その多さに圧倒された。そしてスタンド席につき、開演を待った。定刻より5分すぎた17時5分に客電が落ち暗転、四方八方から大歓声が上がり、客席内をつんざいた。その瞬間光速的にテンションが体内を駆け巡り、グッイ~ンと前傾姿勢となった。自分がライヴでもっとも好きな瞬間のひとつだ。まずはステージ両側に設置された巨大スクリーンにナレーション乗りの映像が映し出され、そのままパフォーマンスへと雪崩れ込んだ。客席の至るところで早くもカオスが噴き上がってた。

2014年12月にさいたまスーパーアリーナで観たPLAY WHAT U WANT TOURが今でも忘れられない。パフォーマンス、演出、特効とすべての面でエンタメの限りをつくしたそれはアッパレで、特にライティングのプロジェクションマッピングにはド肝を抜かれた。後日マネージャー氏に「なんかつまんなそうな顔してライヴ観てませんでした?(笑)」とツッコまれたけど、そんなことはなく、むしろそのスゴさに驚き、ただただ呆気にとられ口を半開きにして観てただけだ(笑)。よってどうしても最初にライティングなどの演出に目がいくのだけど、この夜はPLAY WHAT U WANT TOURのときとは当然異なってた。ステージ両側にそれぞれ5本ずつ柱のようなものが立ち、それが照明で、ときにはスクリーンにもなり、映像が映し出された。ステージ後方の照明、スクリーン、そしてステージ真上の照明と完全に同期し、曲ごとに映像の内容や照明アプローチが変わった。照明はまるで速射砲のように光が連射され、強烈でまぶしいくらいだった。ここまでのをこの夜初めて体験した。

ハコがデカいぶん、どうしても狼たちとガウラーひとりひとりの間に距離感が生まれる。デカいハコでライヴをやるアーティストにはそれを縮める工夫を凝らすことが求められる大きなポイントであり、その手腕というか演出が問われるところでもある。トーキョー・タナカやカミカゼ・ボーイが時折客席内に降り、駈け回ったり、客席後方に組まれ、上下する別ステージに上がりプレイすることでガウラーたちと近くなり、触れ合おうとしてた。Wake Myself Again TOUR 2013の横浜アリーナ公演のときの演出に近いものが感じられた。かのMOTLEY CRUEが80年代中盤の絶頂期にあるとき、フロントマンのヴィンス・ニールが取材でこう発言してた。
「規模の小さい会場と大きい会場じゃ正直、パフォーマンスのやり方を変えてる。MCで言う言葉も違うし、ライヴ中客席のどこを見るかも異なる。当然、曲によってどこにオレたちのエネルギーを向けるかも変ってくる。大きい会場だろうが小さい会場だろうが、それぞれでベストなパフォーマンスをやる上でそういったことは必要不可欠なのさ」
取材でジャン・ケン・ジョニーにそういう話をしたことがあるわけじゃないから、あくまでも憶測の域は脱しない。だけどLIQUID ROOMといった小バコ、STUDIO COASTなどの中バコ、武道館、横浜アリーナといった大バコ、さらには京都大作戦などの野外フェスでライヴを観てきた経験から、MWAMにもおそらくヴィンスの発言と同じような想い、感覚はあるに違いない。海外に打って出るなどのグローバルな活動を実践するバンドはむしろそうあるべきだし、そうじゃなきゃいけない。

セット中盤でスペア・リブ(ds)、カミカゼ・ボーイ、DJサンタ・モニカ(dj)、ジャン・ケン・ジョニーがひとりずつ順にステージに再登場し、プレイを絡ませていき、インストでインプロヴィゼーションタイムをやったり、その後の曲じゃ火柱が上がったり、スモークがたかれたりと小技が連打された。そして後半のハイライトは、なんと言っても12月3日より配信開始となる新曲“Hey Now”が初めて披露されたこと。これにはガウラーたちも大喜びで、この夜の大きな盛り上がりの場面のひとつとなった。そして、アンコールを2曲“FLY AGAIN”“Raise your flag”やり約2時間のセットを締めくくった。
外しちゃいけない基本や定番やお約束は忠実にやりつつも、どこかで必ずやそれまでにやったことのないことを盛り込み、炸裂させては、大観衆をエキサイトさせる。これぞMAN WITH A MISSIONの極意であり、真骨頂だ。“あくなき挑戦”は今後も続き、我々をさらにビックリさせ続けてくれることは、まさに保証書つきだ。



text by Hiro Arishima