伝説たちが、新たなチャプターへの
一歩を踏み出した地下の狂宴!!

BB presents Noise Slaughter Vol.7
November 29th , 2015 at Shin-okubo Earthdom, Tokyo

個人的に、今一番ライヴを観るのが楽しみなバンドが、BBだ。COCOBATの初代ヴォーカリストとして、そしてDESSERTとして日本のハードコア/メタル/ラウド・シーンを作り上げた、いわば先駆者のひとりであるRyuji(vo)を中心に、マイナーリーグの駒村将也(b)、広野与一(ds)、そしてWRENCHの坂元東(g)によるバンドである。まだデモ音源2曲を無料配布と配信しただけながら、地下にうごめく様々なバンドとの積極的な共演。不定期に自主企画“Noise Slaughter”を開催し、シーンの猛者たちとガチンコ勝負を繰り返している。そのNoise Slaughter の7回目に、Ryujiがかつて在籍したCOCOBAT、そのCOCOBATと93年にスプリット7インチをリリースし、メンバーの急逝や活動停止を経て、新メンバーで再始動したDOOMが集結。ともにシーンの礎を築きあげた伝説たちが、新大久保Earthdomにて邂逅を果たしたのだ。こんなカード、行かないわけがないだろう。実際、ライヴのスタート直前には、客入りは満杯。あたりに異常な空気が漂うなか、開演時刻を回った。

まずトップバッターはDOOM。正直、その存在感や実績、評価を知識として知ってはいたものの、実は聴くのも観るのも今回が初めて。あえて先入観なしに臨んだのだけど、これがもうすごかった。サウンドの根本は、間違いなくスラッシュメタル。なのだけど、ジャズ/フュージョンを通過した、圧倒的にテクニカルなプレイ、奇妙なコードの響きに、縦横無尽にまくし立てるベース、どうにもつかみ取ることのできないリズムを叩き出すドラム…。恐ろしく奇妙だ。ギターソロを含むインスト・パートでは、各メンバーがつば迫り合うかのような緊張感があるし、楽器の音の絶妙な強弱やニュアンスの味付けで、楽曲をダイナミックに盛り上げていく。まるで3本の縄が複雑に絡み合いながら、いくつもの模様を次々と描いていくかのようだ。尋常じゃない情報量を計算しきる知性を持ったプログレッシヴなサウンドながら、メタルバンドとしての激しさ、殺傷力も充分。メンバーも大好きだというVOIVODはもちろん、後期のDEATH等にも通じる部分もある。が、バンド名に恥じない、どんよりとした空気感は唯一無比だ。いきなりとんでもないものを見せられてしまった。全体に漂う、妖しげでアンダーグラウンドな匂いにさえ慣れれば、ジャズの要素も盛り込んだそのサウンドはMESHUGGAH以降のDjent系バンドのファンたちにも受けそうだ。

そして続いたのが、首謀者のBB。いきなり駒村、広野、坂元らが爆音のノイズを垂れ流すなか、Ryujiがゆらりと姿を現す。彼がマイクスタンドをつかんで雄たけびを上げた瞬間、もうその場は彼の支配下に落ちた。いつもながら、その存在感には息を飲むばかりだ。照明もステージ後方からのライトのみなので、メンバーの表情もわからない。そんな異様な空気のなか、“Shadowy”で、パフォーマンスは本格的に幕を開けた。殺気立った、炸裂するかのようなドス黒いグルーヴと、観る者の目と耳を惹きつけてやまない魔力を秘めたRyujiの声が一体となって襲い掛かってくるようで、まるで金縛りにでもあったかのように身動きが取れない。黎明期のオルタナ、初期のデスメタルやハードコア、インダストリアル等、80~90年代に勃興したあらゆる激しい音の凶悪な部分だけを抽出し、凝縮たかのようなサウンドは、結果的にいわゆるカオティック・ハードコアとも親和性があるものになっていると思う。だがねじくれたかのような音の濁流に飲み込まれるうちに、スタイルがどうとか、何に近いとか、そんな分析をしながら能書きを垂れることなど頭から消えてしまう。とにかく、観る度に進化を遂げ、最高値を更新し続けるBB。現在新曲を増やし、正規音源へと歩を進めているようだが、悪いことは言わない、この化物のようなバンドは、すぐにチェックすべきだ。

そしてトリはCOCOBAT。ここまでの2バンドによって、相当高いハードルを課せられることとなったが、そこは彼らも百戦錬磨。ギターの静かなアルペジオが光る“Ghost Tree Giant”から始まったライヴは、上半身裸のTAKE-SHIT(b)とSEIKI(g)の体の通り、ムダなくタイトなサウンドだ。全盛期のMETALLICAを髣髴とさせる、リリカルな叙情性と入り組んだリズム、引き締まったヘヴィネスで、DOOMとBBが作り上げた空気を自分たちの色に染め直していく。スラッシュやハードコア要素の強い肉厚のギターリフに、TAKE-SHITの打撃音の如きスラップ・ベースが心地良い。インスト成分の多い曲でじっくりとフロアを巻き込み、中盤からはいつのまにかHIDEKI(vo)まで上半身裸になり、“Grasshopper”等アグレッシヴな代表曲で攻め立てる。この構成も見事だ。プログレからの影響をにじませつつも、より肉体的でパンチ力のあるサウンドに、モッシュも発生。スカっと爽快に終了…かと思いきや、ここでまさかのサプライズが。突然Ryujiがステージに現れ、自身がバンドとともに作り上げた代名詞的な曲である“Cocobat Crunch”ほか、3曲を披露したのだ。彼がCOCOBATを歌うのは、2011年のバンド結成20周年記念ライヴ、以来、じつに4年ぶりのこと。この貴重かつ予想だにしなかった事態に、さらにフロアは沸騰。3バンドの歴史的な邂逅が実現した夜は幕引きとなった。


どのバンドも、長いキャリアと海千山千の経験に裏打ちされた、素晴らしいライヴを見せてくれた。しかし、DOOMは初期音源『No More Pain』の再発し、来年には新作『Still Can’t The Dead』リリースを、BBも先に書いた通り、正式な作品の制作を視野に入れている。COCOBATも『SEARCHING FOR CHANGE』(2009年)以来となる、次の音源が待たれているところ。2016年の、それぞれの新たなアクションと活躍に大いに期待したい。


text by Yusuke Mochizuki
photography by Masanori Naruse


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