最新アルバムをひっさげたツアー初日、ONE BUCK TUNERが
印象づけたバンドの人柄と、ほんの少しの歯がゆさ

ONE BUCK TUNER
May 31th, 2014 at Ikebukuro Manhole, Tokyo

「人柄を」。GrindHouse magazine Vol.84掲載のインタヴューで、最新アル
バムの『Bye Bye Radioman』を通して、どんなことをアピールしたいか? と
尋ねたら、河内由揮(vo,g)はそう答えた。大抵、こういう場合は「バンドの成長
を」とか「新たな挑戦を」とか答えるものなんだけれど、何よりもまず「人柄を」
と答えたところがONE BUCK TUNERらしくて、いいなぁと思った。僕はます
ますONE BUCK TUNER のことが好きになってしまったのだ。
もちろん、『Bye Bye Radioman』の出来に自信がないから、代わりに人柄を
楽しんでほしいと言っているわけではない。むしろ、その逆だ。『Bye Bye Ra-
dioman』は、誰もが認める傑作だ。メンバー自身も自信作だと語っている。
自信作だからこそ、自分たちがどんな想いでバンド活動に取り組み、このア
ルバムを完成させたのかそれを感じ取ってほしい…と彼らは思っているに違
いない。そして、『Bye Bye Radioman』は、それがちゃんと伝わる作品だとも。
そんな自信作をひっさげ、11月23日のツアー・ファイナル(@池袋KINGSX
TOKYO)まで全国各地を回る「Bye Bye Radioman Release Tour」。その
初日となる池袋MANHOLE公演もまた、「かっこいいアルバムを作って、ここ
からツアーを始めたかったんだ!」と会場への思い入れを表現した河内の第一
声から彼らの人柄が窺える、とても楽しいものだった。

カルナロッタ、大阪からやってきたNOA。共演の2バンドがいい感じで盛り上
げた後、ONE BUCK TUNERのステージは『Bye Bye Radioman』のオープ
ニングを飾る“Merry Go Round”でスタート。河内が弦を叩きつけるように奏
でるジャ・ジャ・ジャッという力強いコード・ストロークとそれを追いかけるよう
に加わった矢野淳一(b,vo)と大内智皓(ds,cho)のタイトなリズムが印象づ
けるハードな曲調が、宙に舞い上がるようなメロディとともに、一気にポップ
に転じる展開がいきなり観客にガツンと食らわせる。そして「なんでバンドやっ
てるかって、モテたいからさ!」と間髪入れずにマージー・ビート調の“Busin-
ess Rock”でたたみかける。河内と歌を掛け合う矢野が、撫でつけた髪を振
り乱しながらシャウトする姿に観客の盛り上がりはさらに過熱していった。

その後も3人はダラダラとよけいなMCなど挟まない代わりに「学校じゃおもし
ろいことを教えてくれないから、いつもコイツ(矢野)とライヴハウスに通って
たんだ」(“Tell me Tell me!!”)、「ロックの虜になったときは、もう手遅れだっ
た」(“Too Late”)と曲に込めた想いを簡潔に語りながらテンポよく、メロコア
から50年代にまで遡って、その時代ごとのロックンロールを自分たちなりに
吸収・消化した『Bye Bye Radioman』からの曲を繰り出していった。インタ
ヴューでは終始ニコニコして、決して声高に主張したり自慢したりしない彼
らがステージに立って、楽器を持つと、こんなにもはっきりと、そして端的に
自分たちの想いを表現するのかとちょっとびっくりしながら、思わずニヤニ
ヤとしてしまった。

「地元の色はすぐに思い出せるんだけど、東京の色は…」と紹介した“Tokyo
Colors”で新境地をアピールした後、これからツアーに出かけるという気持ち
を歌ったカントリー・タッチの“How Long Miles”を観客といっしょに歌いあげ、
とりあえず本編は終了。演奏する曲を決めていなかったというアンコールは
ファンのリクエストに応え、2ndアルバムの『Tall dwarf』から“Heart beats”
を披露。そして、予定になかった(?)ダブル・アンコールでは「ロックンロール・
ハイスクール!」「それ、うちの曲じゃないから。RAMONESだから(笑)」という
やり取りと笑い話レベルのちょっとしたトラブルを経て、やはり『Tall dwarf』か
ら“Lost Generation”をハードにキメると、「また小さなライヴハウスで会おう
ぜ!」とメンバーそれぞれに最高の笑顔を見せて、ONE BUCK TUNERは全
12曲約1時間のライヴを締めくくった。

最後の一言にも、有名になりたいわけじゃない。売れたいわけでもない。ライ
ヴハウスという自分たちの居場所を大事にしながら、ちゃんと観客と繋がれる
距離の中で、大好きなロックンロールを楽しみたいという彼ららしい気持ちが
表れていたように思う。
ライヴハウスは彼らの原点だ。もちろん、いつまでも小さなライヴハウスにお
ける活動を大事にしたいという気持ちは失ってしまったらいけないと思う。しか
し、そう思うと同時に小さなライヴハウスで終わってしまったら、いや、終わら
せてしまったらもったいないと、ほんの少しの歯がゆさを感じたのだった(それ
も彼らの人柄だ)。だって、こんなにかっこいいロックンロールを誠実に奏でて
いるバンドだ。もっともっと多くの人に聴いてもらいたいじゃないか。そんなこと
も含め、これからもONE BUCK TUNERの活動を見守っていきたい。


text by Tomoo Yamaguchi
photography by nanae tahara


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