BAD RELIGIONを筆頭に多彩なバンドが顔を揃えた
ロック・ファンの春の風物詩、PUNKSPRINGをレポート

PUNKSPRING 2014
March 29th, 2014 at Makuhari Messe, Tokyo

場合によってはライフスタイルとも密接に関わる音楽であることに加え、誕生
から40年、形を変えながら今日まで生きながらえてきたことを考えれば、パン
クロックとはこうあるべきだというこだわりがリスナーそれぞれにあって当然だ
ろう。だから、パンクを掲げているPUNKSPRINGの出演ラインナップについ
ては、毎年、いろいろな意見があって当然だが、BAD RELIGIONがヘッドラ
イナーを務めた今年は特に御大がビシッと最後を飾れば、多少、ラインナッ
プに幅や、いい意味で遊びがあってもパンクを謳ったフェスティバルとして成
立するにちがいない、という冒険心が感じられるラインナップになっていると
ころがおもしろかったと思う。

いや、BAD RELIGIONだけじゃない。SNUFFもME FIRST AND THE GIMME
GIMMESといったベテランもいる。彼らがパンクの何たるかという根っこを死守
するんだから、それ以外のところではむしろパンクの可能性と言うか、パンクが
持つ広がりを追求するべきだろう。もちろん、海外の若手がRADKEYだけとい
うのは、ちょっと寂しすぎるという恨みは残るが、それを言い出したらキリがない
し、逆に言えば、海外勢が入り込む隙間がないくらい日本の若手ががんばっ
ているということなのだろう。

一昨年、昨年にひきつづき、今年もステージは2つ。オープニング・アクトのBU-
ZZ THE BEARSからBLUEステージ、REDステージで交互に、ほぼ間を空け
ずに熱演が繰り広げられていったが、序盤、いきなり大きな盛り上がりを作り出
したのは、2MCを擁する京都の5人組…なんて説明は今更必要ないベテラン、
ROTTENGRAFFTY。ヘヴィなミクスチャーロックを身上としながらエレクトロ
かつダンサブルなサウンドと“金色グラフティー”に代表される歌謡メロディを巧
みに織り混ぜた演奏にパンスプTシャツに着替えた少年少女達が早速、踊り
狂いだした。なるほど、会場に活を入れるという意味では効果は覿面。会場の
温度がぐっと上がり、フェス気分が一気に盛り上がってきた。

西海岸風の正調メロディック・パンク
を爽やかに奏でたdustbox、70年代
および80年代風のパンクロックを披
露した後、3人並んでカメハメ波を放っ
たミズーリ出身の兄弟3人組、RAD-
KEY(日本のアニメの大ファンなんで
すって)を経て、日米スクリーモ対決
(と敢えて言わせてください)が実現! 
バンドの飛躍を印象づけた3作目の
アルバム『THE REVELATION』の収
録曲を中心に新旧の代表曲を揃えた
ベスト選曲で挑んだcoldrainはメタリッ
クな演奏とMasato(vo)の激しいスク
リームとともに、これまで以上にタフな
バンド像をアピール。








一方、狂気さえ感じさせるクレイグ・オーウェンズ(vo)
の絶叫とともにスタートしたCHIODOSはその時点で
はまだリリース前のニュー・アルバム『DEVIL』から
新曲“All Fishlips Is Dead Now”も披露。キーボー
ドを効果的に使い、カオティックかつサイケデリック
な世界観を作り上げるメンバーたちはいたってリラッ
クスしているように見えるが、演奏の熱度は満点。
しかし、スクリームも含む七色の声を使いわけるク
レイグの存在感がやはりずばぬけて圧倒的だった。
天才シンガー、クレイグとデリック・フロスト(ds)が
ラインナップに復帰したことを、ここ日本でも多くの
ファンが歓迎、そして期待していたにちがいない。
「CHIODOS! CHIODOS!」と終盤、客席から自然
に沸き起こったコールには、メンバー達も心底、び
っくりしながら感謝の言葉を繰り返していた。







メロコア部門、そしてパーティー部門
の代表を自負するTOTALFATはいき
なり“Party Party”を客席にお見舞いす
るという心憎い選曲で幕張メッセをい
きなりパーティー会場に変えると、その
後も“Room45”、“Summer Frequence”、
“Place To Try”とつなげる必殺のセッ
トリストで少年少女達を踊らせる。
だからって、踊ったり、飛んだり跳ね
たり、ぐるぐる走り回ったりできるとこ
ろだけがTOTALFATじゃない。そこも
彼らのライヴの魅力にはちがいない
が、情熱に満ちた演奏から音楽に取
り組むメンバー達の真摯な想いがじ
んわりと染みるメロディとともに伝わっ
てくるところがいいじゃないか。もは
やパンスプの常連と言ってもいい彼
らだが、今回はラストを飾るにふさわ
しいメロコア・アンセム“Good Fight
& Promise You”でJOSE(vo,g)が
客席に下りて、観客に訴えかける熱
演を見せるなど、いつも以上に熱い
パフォーマンスで会場を沸かせたの
だった。

昨年、ステージで「もっと持ち時間ください」と訴え
かけた甲斐あって、今年「演奏時間が5分増えた」
とちゃめっけたっぷりに語ったSiMは冒頭、70年代
のUKパンクのヒーロー、THE CLASHの“London
Calling”のカヴァーを披露して、自分たちのルーツ
にパンクがあることを表明した。しかし、それはパン
クからの影響を語るだけに止まらず、MAH(vo)も
言っていたように、THE CLASHをミクスチャーロッ
クのパイオニアとして捉えた含蓄あるカヴァーだっ
たんじゃないか。これをきっかけに若いSiMのファ
ンがTHE CLASHにも興味を持ってくれたなら、
『LONDON CALLING』ではなく、断然『COMBAT
ROCK!』がオススメだ……という余談はさておき、
溌剌としたTOTALFATの直後に独特のデカダンな
世界観を持った彼らをぶつける順番もすごい、と
変なことに感心しつつ、この日は“Blah Blah Blah”
や“KiLLiNG ME”以上に、デカダンな魅力を印象
づけた“Rosso & Dry”(MAHが鍵盤ハーモニカを
演奏した)にシビれたのだった。



後半戦を迎え、そろそろ疲れが出てきた観客を、笑いとともに元気づけた
のがベーシストにNOFXのファット・マイク(b,vo)を擁するカヴァー専門の
パンクバンド、ME FIRST AND THE GIMME GIMMES。今回のテーマは
ヒットソング曲ということで、THE BEACH BOYS、ELTON JOHN、BOYS
II MENらのヒット曲をたたみかけたわけだが、「ニホンゴワカリマセーン」
とスパイク(vo)が言った後、いきなり甲斐バンドの“HERO(ヒーローにな
る時、それは今)”には大爆笑(しかも日本語が妙にうまい)。その後、披露
したTHE BLUE HEARTSの“リンダリンダ”のほうがウケていたようだが、
個人的には断然“HERO”だった。

日本語と言えば、「トウキョウニモドッテキタゼ」「オレタチサイコー」「サケ
べ」「トベ」「テヲタタケ」と日本語で繰り返しながらハイテンションの演奏を
繰り広げたスウェーデンのガレージ・パンクバンド、THE HIVESは、いわ
ゆるパンクとは一味違うエンタメ精神あふれる、ねちっこいパフォーマンス
を披露。直前のMAN WITH A MISSIONに負けない熱狂を作り出した。

そして、34年のキャリアを誇る御大BAD RELIGION。彼らのステージを待
ち焦がれていたファンは少なくなかったにちがいない。しかし、エモーショナ
ルかつダンサブルであり、洗練さえ感じさせる最新型のミクスチャーロック
を奏でるMAN WITH A MISSIONのエネルギッシュなパフォーマンスに大暴
れしていたような少年少女たちに、いくらメロコア界の大ベテランと言っても
もはや実感として捉えることが難しい遠い存在なのか。それとも大学教授然
とした(実際、大学で教鞭も取っている)グレッグ・グラフィン(vo)の佇まいは
渋すぎたのか。例年に比べ、最後まで残った観客の数が若干少なかった感
じが否めなかったのは残念だったか。しかし、バンドは1時間で20曲を披露
するという熱演で見事、ファンの期待に応えた。

13年発表の(今のところ)最新作の『TRUE NORTH』からの曲はもちろん、
88年の『SUFFER』やメジャー・デビュー作となった94年の『STRANGER
THAN FICTION』など、80~90年代のアルバムから披露した曲の数々に
長年のファンは狂喜したにちがいない。
観客を煽るわけでも、激しいアクションを見せるわけでもない。グレッグも熱
唱するというよりは言葉をひとつひとつしっかりと投げかけていく感じだ。暴
れたがっている観客には物足りなかったかもしれない、いや、前のほうには
実際、暴れているファンもいたようだ。しかし、筆者はステージ全体が見渡せ
るところまで下がって、貫禄のパフォーマンスを噛みしめるようにじっくりと味
わった。

ラストは名曲中の名曲“American Jesus”。アンコールはなしというあっけな
いほどの幕切れ。しかし、毎年のように感じるが、それもパンクらしくてクール
だと思う。


文・山口智男/text by Tomoo Yamaguchi
photography by ©PUNKSPRING 2014 / Creativeman All Rights Reserved.


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