漆黒の海で小舟に乗り、翻弄される感さえも。
2ndアルバムの世界を深く体現した初来日公演!

SHREDDY KRUEGER
May 21st, 2016 at Ikebukuro KINGSX TOKYO, Tokyo

GrindHouseによるライヴ・イベント「good evening with…」が、昨年3月のCANCER BATS以来となる5月21日に、お馴染みの池袋KINGSX TOKYOで開催。カナダのスクリーモ/ポスト・ハードコア界の雄、SHREDDY KRUEGER(SK)が初来日のステージを行った。彼らは昨年12月にGrindHouse recordingsより2ndアルバム『DEEPER DARKER』を日本リリース。そのメンバーのうちジョーダン・チェイス(vo)、ライアン・ローク(ds)は、2008年のLOUD PARKにSECRET & WISPERとして出演しているが、SKとしては初の日本。しかも、会場がキャパ300人クラスのKINGSX TOKYOとあって密度の濃いライヴが予測され、筆者も期待を胸に早くも夏が訪れたかのような街を会場へと急いだ。

CONCEPTION COMPLEX

トップバッターは、4年ぶりの新曲“elegy”を3月に配信リリース、最前線への再び躍り出たCONCEPTION COMPLEX。MZK(vo)は開口一番「遊びましょー!」とフロアに呼びかけ、ライヴは“Promised Day”でスタート。ヘヴィな突進力とキャッチーなメロディで彼らは、週末のまったりした空気を締まったものへと一気に変えた。
バンドの勢いを体現するように攻めのパフォーマンスが続く。「自由にやろうぜ!」とフロアを煽り、もっともっと来い…といったジェスチャーを見せるMZK。Tyra(g)は髪の隙間から見え隠れするトライバルなフェイスペイントが目を引き、対比で白い歯がまた眩しく映った。
そんな中、「7月にリリースする新曲の候補曲」(MZK)とプレイしたのが“Frailty”。同曲は広野を行進するかのようなイントロで幕を開け、メランコリックなグルーヴにザクザクとしたギター・リフが交錯。その上でMZKが自問自答を続け、Tyraのライトハンド奏法も印象的に響いた。
また“elegy”では「友だちを失った気持ちと、そいつを応援する気持ちを込めた曲」とMZK。それこそ悩みを抱えながら亡くなった相手に対する思いが胸に迫り、拳を突き上げての合唱によってバンドとオーディエンスの1つの気持ちを共有した。
総仕上げは“In My Noiz Factory”に“Battle Line”。勢い余ってフロアに降りていくMZK。笑顔がこぼれるAnduro(b)。MZkに煽られるように場内ではモッシュも起こり、この瞬間を全力で楽しむように会場全体がエンディングへと熱く燃えた。

7YEARS TO MIDNIGHT

続く7YEARS TO MIDNIGHTは、各メンバーのてんでばらばらな雰囲気からして逆に不敵。アグレッシヴなダイナミズムに、時にシンフォニックな叙情性が交錯するサウンドには、メタル・オペラとでも表したいスペクタクル感とスリリングさがあった。
ここだけの話、筆者は開演前のロビーでメンバーがが音楽談義する場面に遭遇。その分析力にそばで聞き耳を立てていた。それだけにOoto(g)とShiban(g)の情感的なハーモニーを活かすなど、巧みな楽曲の構成力にも納得。ドラマティックな音世界にグイグイ引き込まれ、ここではないどこかへ誘われる感覚すら抱く瞬間があった。
さらには、曲を追うごとに熱気を帯びていくパフォーマンスが心を扇動。拳を突き上げて叫ぶKento(vo)。寄り添い低い体勢でプレイするShibanとTis(b)。頭のネジが吹き飛んだかのような激しいターンを決めるOoto。そんな彼らにフロアも共鳴し、場内は熱狂的なカオスに包まれた。
加えてこの日は、SK、ひいてはスクリーモに対するOotoの思いの深さが印象的。彼はまず、SKの名前が言えず「みんな、外人さん観に来たの?」と言ったTisにダメ出し。「今日もラウパで買ったSECRET & WHISPERのTシャツで来た」と話しはじめると止まらなくなり、2000年代当時のシーンに感化された者として「(ライヴも)もっと広い人にスクリーモを!といった気持ちでやっている」などと熱弁。その横で時計に目をやるKentoの姿にも笑わされたが、Ootoの言葉によって続く最後の“You're My Queen, But I'm Not Your King”が、いっそうドラマティックで情感的に迫ってきたことは間違いない。

SHREDDY KRUEGER

そしてSKは、有島博志氏がDJプレイをする中、着々とセッティング。床に貼られたセットリストを覗き込むと、まず「Japan 2016 Best Buddy Cool Time」とタイトルされ、曲目の横にいちいちbpmが書かれいて、ちょっとビックリ。CだのDだのキーが添えてあるセットリストを見たことは何度もあるが、bpmは初めて。それだけ各曲のグルーヴを大切にしているのか、それとも技術的に同期ものの関係か。ちなみに“Deeper Darker”は162bpmとのこと。あれこれ考えを廻らせていると、いったん袖に引っ込んだメンバーが、フロアの拍手に迎えられて登場した。
笑顔で両手を広げる、ジェフことジェフリー・デイヴィッド・ブライアン(b)。ジョーダンは手を合わせてお辞儀し、「コンニチワ」。ライヴは最新アルバムの表題曲で幕を開け、メランコリックで静かな立ち上がりから激情型のブルータルなベクトルへと一気に爆発。邪悪な咆哮を上げるブライアンは苦悶の表情を浮かべ、その顔は早くも真っ赤に。フロアからは「エモいなぁ~!」の声も上がった。
その後も“The Sky Will Swallow Us Whole”“Ouija”“Deadman's Creek”と、冒頭から『DEEPER DARKER』の曲順どおりにライヴが進行。4人が一丸となったパフォーマンスとともに、各曲に息づく混沌とした状況の中で繰り広げられる自問自答が狂おしく迫ってきた。ライアンを見ると、彼はパワフル&タイトに濃密なダイナミズムの屋台骨を支えつつ、内に秘めた感情に揺さぶりをかけてきた。そんなスリリングなグルーヴの上で、複雑に絡み合った感情を吐き出し、渾身の力を一挙手一投足に込める。そして上手には長髪を振り乱し、ステージを前後に行き来しながらギターをかき鳴らすデイヴィッド・エッカー。下手ではジェフが時折メロディを口ずさみながら、オーディエンスとの距離を詰めるようにフロア前まで出てきてプレイ。その右手の甲にはMISFITSのイメージ・キャラクターのタトゥーが彫られていた。

SHREDDY KRUEGER

後半は「ヒロ(有島氏のこと)のリクエストだ」(ジョーダン)という“Marker”など2ndアルバム以前の3曲を挟み、再び“Heathen”から本編ラストの“Father's Hands”まで最新作の後半部分を曲順どおりにプレイ。密室感のあるKINGSX TOKYOの雰囲気も相まり、さらに深く『DEEPER DARKER』の世界を体感こととなった。ベース・アンプの後ろには、嬉しそうなOotoの姿があると思えば、ジェフが手を回すと、フロアでは激しいカンフー合戦がスタート。ジョーダンもプリミティヴな感情を露わにし、こちらとしては漆黒の海で小舟に乗り、大波小波に翻弄される感覚があった。 
スペクタクルな“Father's Hands”で本編は終了。「アリガトウゴザイマシタ」と頭を下げ、マイクを丁寧にステージに置くジョーダン。だが、圧巻のパフォーマンスにフロアから「One More!」コールが起きるのは当然のことだ。ステージに戻り、「ホントに1曲だけでいいの?」とおどけてアピールするジェフ。結局、アンコールは3曲。バンドとフロアのエモーションが激しく呼応し、“Child Heart”でライヴはクライマックスを迎えた。終演後は熱っぽい余韻の中、4人はオーディエンスをバックに記念撮影。その後はサイン会も行われ、バンドにとってもオーディエンスにとっても、充実の夜になった。



text by Tsunetoshi Kodama
photography by Kana Tarumi


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