2ndアルバムを引っさげたツアー最終日。
ポジティヴ&カオスであり、随所で新たな決意も

THE STARBEMS
December 10th, 2014 at Shibuya TSUTAYA O-WEST, Tokyo

2012年12月、BEAT CRUSADERSなどの活動で知られる日高央(vo)を
中心に結成されたTHE STARBEMS。パワー・ポップのメロディにメロディッ
ク・パンクの性急さ、さらにはハードコアなアティテュードとアレンジ・セン
スを持ち合わせた…等と評される彼らが、2ndアルバム『VANISHING CITY』
を提げた“VANISHING CITY TOUR 2014”のファイナルを12月10日に渋
谷TSUTAYA O-WESTで行った。
昨年11月にリリースした『VANISHING CITY』は、怒りや激しさがダイレクト
に息づく前作『SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD』を踏まえつつ、
日高や越川和麿(g/ex毛皮のマリーズ)といった強者揃いのバンドらしい緩
急の妙で最後まで一気に聴かせる快作。加えては名古屋、大阪のNoisyCell
に続き、この日のゲスト・アクトをNorthen19が務めるということで、がぜん
気合の入ったツアー最終日となることは必至だった。筆者も期待を胸に師
走の忙しい渋谷を駆け抜け、会場へと向かった。

「ビークルは大学時代に知ってカッコいいと思い、その頃からの付き合い。そう
したらTHE STARBEMSには昔から知ってるゴスケ(後藤裕亮/ex LOCAL
SOUND STYLE)がいて、しかも白塗りに。どうした? と言いたい(笑)。そうやっ
て巡り巡って、今日は(ツアー最終日に)呼んでもらってありがとう。感謝!」と笠
原健太郎(vo,g)。Northen19は、人間臭くひたむきに疾走。胸を激しくかき鳴
らした。フロアも“一緒になって楽しもう”といったバンドのエモーションに共鳴。
場内に生まれたポジティヴな空気は、曲を追うごとに熱気を帯び、密度を増
していった。
中盤、「もうすぐクリスマス。楽しみにしてる」と笠原。キャラに合わないのか、
場内からホントに!? といった笑い声が上がるなか、「俺たちからのメリー・ク
リスマス!」とプレイしたのは“SNOWBLIND”。また“STAY YOUTH FOREVER”
では♪ウォーウォーウォ♪の合唱でバンドと観客が一体となり、笠原も「渋谷、
青春を忘れるな! 日高さんも忘れてないんだ!!」と絶叫。3人は“MEMORIES”
でハッピーな余韻を残し、ステージを後にした。

そして満を持してTHE STARBEMSが登場。“ウルトラセブンの歌”のインストを
SEに、次々とメンバーがオーディエンスの拍手に迎えられ、日高は東北ライブ
ハウス大作戦(ライブPAチームSPC peek performanceが中心となり、東日本
大震災後の東北三陸沖沿岸地域にライブハウスを建設することを目的に立ち
上げたプロジェクト)のタオルを高々と掲げ、熱狂的な手拍子に応えた。
「行くぞ渋谷!」と日高。1曲は“WORKING YOUTH”だったが、一発目の音が鳴っ
た瞬間から、場内はハードコアにカオス。6人が激しくひしめき合うステージも圧
巻だが、野郎がくんずほぐれつの押しくらまんじゅうをくり広げるフロアも、またと
んでもないことになっていた。その後も“LET LIGHTS SHINE”“PITFALLS”“PIG
MINISTRY”を矢継ぎ早に繰り出し、プリミティヴな衝動をむき出しに突進。がむ
しゃらな力業で迫ってきた。初見の筆者はただただ呆気に取られるばかり。わけ
も分からずジェットコースターに飛び乗ってしまい、振り落とされまいと必死にな
っている。そんな感覚を味わっていた。

「し・ぶ・や、さ・わ・げ!」(日高)。THE STARBEMSという名のジェットコースターは、
フルスロットルなハイテンションでさらに加速。カオスのその先へと爆走する。そ
の場のエモーションをヴォーカルに込め、ピースサインを掲げる日高。シャウトし、
場内を揺動する菊池篤(g)。のけぞりながらギターをかき鳴らし、絶叫する後藤。
アグレッシヴなダイナミズムの合間を縫いながら目を引くソロを決める越川。高
地広明(ds)は、疾走するバンドの推進力となり、サポートの山下潤一郎(b)も楽
しそうな笑顔を見せる。さらには “HUMAN RIGHTS”のラストをTHE CLASHの
“Tommy Gun”のフレーズで締めるあたりも、パンク魂を揺さぶる。
そんなバンドに対し、フロアも前述したように激しく共鳴。菊池のコーラスに合わ
せていくつもの手が挙がり、「渋谷、回っちゃおうぜ!」と指を回す日高の扇動には
もちろんモッシュ。押しくらまんじゅうの上ではひとり、またひとりとオーディエンス
が土石流のごとくステージ前へ運ばれていった。
実際、1+1+1+1+1+1のバンドに観客の“1”が加わり、ステージとフロアの垣
根が取っ払われていく様は、80年代の米ハードコア界に迫ったドキュメンタリー映
画『アメリカン・ハードコア』(2006年)での壮絶なライヴ・シーンを彷彿とさせた。
サウンド・スタイルとしてハードコアの表層をなぞっただけのバンドとは一線を画す、
スピリットとしてのそれが肌で感じられるライヴであり、それこそ場内のポジティヴ
な無秩序ぶりには思わず笑いが込み上げてくる瞬間さえあった。
加えては「おじさんだってロックできる!」「要はやるかやらないか。CDやライヴのチ
ケットが売れない、不景気だからって人のせいにはしたくない。死ぬまでロックする
ぜ!」「やっぱりバンドはいい。音楽やりたいって若造が言ってくるけど、バンドがいい
ぞ。ひとりでネットとかやっててもつまらないぞ」などとまくしたてる日高の姿も印象
的。筆者は彼と同じ46歳。その言葉には周りが大人として夢と現実の帳尻を合わ
せていく中、それでもロックやバンドの可能性を信じて諦めきれない気持ちや意地、
さらには未来への決意が見て取れ、混沌とした時代のなか、こちらをも鼓舞した。

また、越川もこの日のライヴに思うところがあったのだろう、ダブル・アンコール前
にひとりステージに登場。「バンドはライヴがないとダメ。今日も来てくれてありが
とう」と語りはじめ、日高同様「人のせいにしたくない。おじさんたち頑張ります。若
者も負けずに騒ごうぜ!」とコメント。最後はハイブリッドに激しくポップな“FUCKIN’
IN THE AIR”で楽しくハッピーに締めくくられた。
ラップ調の菊池のヴォーカルに乗ってジャンプし、手を挙げるオーディエンス。「ジャ
ンプ! ジャンプ!」とさらにフロアを煽る日高。肩を組む菊池と山下。そして「本当にど
うもありがとう」と満足げな山下の顔にふざけてタオルをかける日高。もちろん熱っ
ぽい余韻の中、筆者の胸にも込み上げてくるものがあった。
なお、順番は前後するが、“GOOD-BYE LOVE”にはNorthen19の笠原もTHE STA-
RBEMSのTシャツを着て参加。ヴォーカルを取り、日高とエモーションの交感。後藤
に絡んで白塗りのインクを顔につけられるものの、肩を組んでノリノリで手を振ってい
たことも記しておきたい。

「メンバーにも言ってないけど、2015年も(作品を)出すよ。アナログも出す。新曲作
ればいいんだろ!? 死ぬまで歌うよ!!」と“EVENING STAR/MORNING STAR”の
前に日高。今年も先行き不透明なシーンのなか、酸いも甘いも噛み分けたパワー
で暴れまわってくれそうだ。




text by Tsunetoshi Kodama
photography by Shin Ishihara



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