濃く熱い夜だった。パンクとは何なのかを
多角的に考えたライヴ・イベントを徹底レポ!

pre-GrindHouse jamboree Vol.2
February 1st, 2014 at Shibuya alub asia, Tokyo

昨年4月にスタートし、2月1日のvol.2で3回目を迎えた“pre-GrindHouse
jamboree ”。今回はガレージ、メロディック、スカ、レゲエ…と、四者四様の
“パンク・ロック”バンドが集合。パンクとは何なのかを多角的にとらえるライ
ヴ・イベントとなり、その骨幹からさらなる可能性までをひと晩で体感するこ
とができたと言える。それこそ転換時DJタイムにプレイされる楽曲からも多
分にそんな趣旨が見て取れ、大いに盛り上がった夜となった。

トップバッターは、昨年11月にリリースした初のミニ・アルバム『Rip it Up』
も好評なONE BUCK TUNER。黒で揃えた佇まいからして多分にモッド・
パンクな雰囲気を持ったビート・バンド・トリオだった。3人は世知辛い時代
の悲喜こもごもを小気味好いダイナミズムに昇華。パンク云々ももちろんだ
が、それ以上にロックンロールの醍醐味を体現した。
バンドは“drag, drop, scroll, send, copy and paste”から軽快に飛ばし、等
身大のエモーションでオーディエンスと正対。人懐っこいメロディも胸をくす
ぐり、曲を追うごとに少なからずアウェイ感のあったフロアと心の距離を縮め
ていった。
その場その場の感情の動きをギターに、そして歌にこめる河内由輝(vo,g)。
気持ちのよい低音を響かせるとともに、どこか生真面目な印象が憎めない
矢野淳一(b)。そんな2人をタイトなビートでクールに支える大内智皓(ds)。
前半、河内が自分の髪を食べてしまうアクシデントがあり、背中を向けて気
持ち悪そうにする場面もあったが、それも生身のバンドだけにご愛嬌(?)だ
と言える。
また、“SEVENTEEN”の導入として「ロックンロールが楽しいからずっとやっ
てて、その気持ちは17歳の頃からずっと変わらない」と語った河内。その後
彼がハーモニカを吹き、ギターをかき鳴らした瞬間、多感だった頃の青き衝
動が胸に蘇ってきたこともここに記しておきたい。

But by Fallは、キャッチーなメロディを伴いながら肉体感のダイナミズムとダ
ンサブルなリズムが交錯する、ハイブリッドなバンド。現在、曲作り期間中で
同じマンションの各人の部屋で音を出していたところ、「“歌を歌うのはやめま
しょう”とマンション中にお達しが出た(笑)」とKazuya(g,vo)。その鬱憤を倍返し
するように、4人は登場から気合い十分だった。
「歌いたいヤツ、暴れたくてウズウズしているヤツ、遠慮せずかかってこい!」。
Akkie(b)も隙あらばお立ち台に上がるなど(彼に限ったことではないが…)、
のっけから攻撃的なポップ感とともにフロアを扇動する4人。加えてKento(vo,
g)とKazuyaによるツイン・ヴォーカル体制も、楽曲を立体的に聴かせて心に
揺さぶりをかけてくる。そんなバンドに対し、オーディエンスもアグレッシヴに
反応。ハイパーなパンク・サウンドを通して、週末の夜に濃密な一体感が生ま
れた。
それこそ「大きなサークルを作って!」という呼びかけにより、フロアには前半か
らモッシュ・サークルが出現。その輪にAkkieが加わる場面もあった。サークル
は“一緒に楽しもう”というバンドの躍動感に呼応。軽快なスピード感に合わせ、
ポジティヴなヴァイヴを放ちながら回り続けた。
「大切なものを大切にできる人間になりたい」(Kento)と歌われた“TAKE IT AW-
AY”、小気味好くエモーショナルな“NEVER ERASE WHAT ERASES HISTO-
RY”、そして場内に笑顔が溢れた“I WANT”で熱狂のライヴは終了。フロントの
3人がネックを掲げ、4人でタイミングを合わせて全9曲を締めるあたりも心憎か
った。

続くはFEELFLIP。モッシュ・サークルに血走った目で飛び込むPON(t.sax)、
MOCK(b.sax)。子供が駄々をこねるかのようなアクションで目を引くIKEE(b)。
やみくもにジャンプするTOMOYA(vo,g)。レッド・ゾーンのさらに先へとテン
ションが加速するスカ・ビート。さらには、TOMOYAが外へと続く階段に消え、
ロビー、楽屋と一周して再びステージに戻ってきたり(これに「ライヴ途中で
帰ったのかと一瞬焦った」と有島博志氏)。カオスなパフォーマンスは一癖も
二癖もあり、思わず笑いがこみ上げる瞬間さえあった。
新たなスカパンク・シーンの旗手として注目度の高まる5人組だが、やぶれ
かぶれな力業で押しまくり、強引にフロアを巻き込んでいく手腕は圧倒的。
初見の身としては騙されて落差何十メートルものジェットコースターに乗せ
られた気分だったが、そんなバンドにも熱狂するオーディエンスはしっかり
対応。まあ、TOMOYAが回転の違うモッシュ・サークルを作らせようとしてグ
ダグダになる場面もあったが、モッシュからバランスを崩しながらもキッチリ
とスカ・ダンスへ移行していくあたりはお見事というほかない。
そうして暴れ馬のようなパフォーマンスが続いたが、同時に彼らが腕利き集
団であることも随所で見て取ることができた。尖ったエモーションには確かな
テクニックの裏打ちが息づき、ジャズの素養もそこここに。逆に言えば、本能
のままに(?)暴れながらもアグレッシヴな演奏は乱れないのだから、それだけ
でもバンドとして叩き上げてきたことを物語っていると言えよう。

トリはG-FREAK FACTORY。横綱相撲といった圧倒的なライヴでイベントを
より熱く、そして濃く締めくくった。
現在、“S.O.S”ツアーの真っ只中ということもあり、持ち前のダイナミズムはさ
らにスケールアップかつビルドアップした印象。それだけに1曲1曲が濃密で、
暗雲が立ちこめる時代の中、パンク、レゲエの根底に流れる「rebel」な姿勢
を強く示した。とはいえ、その一方では佇まいに酸いも甘いも噛み分けた人間
臭さが滲むのもこのバンド。筆者自身、日常に根ざしたサウンドだからこそ深
く心に訴えかけるのだと改めて実感した。
ライヴは“Unscramble”でスタート。4人のエモーションが協調とせめぎ合い
を繰り返して生み出すダイナミズムがスリリングであり、さらには含蓄と根源的
な衝動を伴って場内、ひいてはひとりひとりの魂に揺さぶりをかけてくる。
「ぶつけてこいよ! 音楽は材料。いいものも悪いものもぶつけてこい!」とフロア
を煽る茂木洋晃(vo)。顔を見合わせ、楽しそうな笑みを浮かべる原田季征(g)、
吉橋伸之(b)、家坂清太郎(ds)。その前では茂木が「オイ! オイ! と言えば、
たいていのことは片付く」とコール&レスポンスを強要(笑)。さらには「前のほ
うはしゃがめ。後ろだと思ってるヤツだけ立ってろ」と言い、その流れに乗り遅
れて立ったままのオーディエンスをターゲットに「この4人がとんでもないグルー
ヴ出すから。お名前は?」とやりたい放題。そして答えたひとりと掛け合い、その
後は「Ho!」のコール&レスポンスによって会場がポジティヴな空気でひとつに
なった。
この日、 バンドの面目躍如だったのが“島生民”だ。自らのアメリカ体験を踏
まえながら、危うい今日の日本について熱く語りかける茂木。正直、矢継ぎ早
に飛び出す言葉の細かい部分までは聞き取れなかったが、生身の衝動に突
き動かされた感情の発露は胸に突き刺さり、自問自答をも促した。そんな茂木
に呼応し、バック陣も激しく躍動。妖しくヘヴィなサウンドは地下で得体の知れ
ない怪物が暴れているかのようで、些末なジャンル分けを軽々と超越していた
と言えよう。

有島氏の挨拶、そして出演者及び観客との記念撮影を終えても、G-FREAKに
アンコールを求める声は勢いを増すばかり。熱狂的なリクエストに応じ、最後
はダメ押しの“SUNNY ISLAND STORY”。熱っぽい余韻が場内を包む中、筆
者は音楽の力を改めて実感していた。


文・兒玉常利/text by Tsunetoshi Kodama
photography by Masanori Naruse


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