通算4枚目『FEVER』発売後、我々GrindHouseが次にBULLET FOR MY VALENTINE(BFMV)を
追っかけたのが、Download Festival 2010だった。開催直前の5月16日、ELF~RAINBOW~
BLACK SABBATH~DIO~HEAVEN AND HELLと渡り歩いた伝説的なハード・ロック・シンガー、
ロニー・ジェイムズ・ディオが67歳で胃ガンで急逝したことを追悼し、急遽2ndステージは“Ronnie
James Dio Stage”と命名された。
この年の出演陣はまさにそうそうたる顔ぶれだった。大トリにAC/DCとAEROSMITHが据わり、ほか
RAGE AGAINST THE MACHINE、STONE TEMPLE PILOTS、MOTORHEAD、STONE SOUR、
DEFTONES、LAMB OF GOD、30 SECONDS TO MARS、COHEED AND CAMBRIA、ZEBRAHEAD、
THE DILLINGER ESCAPE PLANらが顔を並べた。
BFMVは初日6月11日(金)の“Ronnie James Dio Stage”のヘッドラインとして出演した。自分は現場
には赴けなかったのだけど、ライターの宮原亜矢嬢が観戦し、BFMVのライヴパフォーマンスをこう
リポートしてる。

「BFMVにとっては2004年の初参戦以降、今回を含めて5度目の出演となるが、ヘッドライナーと
しての出演は初だ。とは言えこの日、世間の注目はAC/DCに集まっていた。実際BFMVの面々も、
出演に際して会場のプレスエリアで行われた記者会見でもそんな“ライバル”に対しての思いを
聞かれたとのこと。しかしBFMVは、倍以上の年齢とキャリアの差がある、生きるレジェンドに臆す
るどころか、負けないぞと、自信たっぷりに抱負を語ったそうだが、結論から言えば、その言葉に
偽りのない、圧巻のステージだった。
場内を歩いているとAC/DCのTシャツ姿が目立ったものの、それに迫る勢いで見かけたのがBFMV
のTシャツを着たメタルヘッズの姿だった。Download Festivalという、へヴィミュージックの聖地で、
BFMVの記念すべき初ヘッドライナーを観ることに大義を感じ足を運んだファンも少なくなかったの
ではないだろうか。そんな思いがさらに募ったのが、出演時刻の約30分前に、黒字に白抜きの文字
で“BULLET FOR MY VALENTINE”とだけ記されたシンプルなバックドロップが掲揚されただけで、声
を上げて興奮を表す大観衆の姿を目撃した瞬間だった。それほどのテンションだから当然のごとく
SEで、ドイツ人作曲家カール・オルフのカンタータ(交声曲)“カルミナ・ブラーナ~おぉ、運命の女
神よ”が荘厳に響き、ステージ4ヵ所から火柱が上がり出すと、BFMVを讃えるかのような歓声と拍手
を鳴らす観客たちであふれ返った。少しして、颯爽と登場するメンバーの姿を見つけるや否や、10~
20代中心の若者たちがBFMVへ向けて無数のメロイックサインを挙げる。その見事な光景には一気
に鳥肌が立ち、胸が高鳴った。
1曲目は、重戦車を引き連れた勇ましい行軍が目に浮かぶような“ユア・ビトレイヤル”。このイント
ロを誇らしげにヘッドバンギングしながら2本のギターでハーモニーを奏でるマシュー“マット”タック
(vo,g)とマイケル“パッジ”パジェット(g)の美しさ、出し惜しむことのないライトの放射とパイロの演出
も加わり、凄まじいスケールが会場を包み込んだ。新作から続けて演奏した“フィーヴァー”で、すっ
かり興奮状態になった観客が、たまらずブレットコールを起こし出したのだが、4人はその様子がと
ても嬉しかったに違いない。挨拶のMCを終えてもしばらく観客を眺めていると、マットがマイケル
“ムース”トーマス(ds)の方を振り向き、アイコンタクトをしたように見えた。すると、ムースがコールに
合わせてバスドラムをキックし始め、モヒカン姿のジェイソン“ジェイ”ジェイムス(vo,b)が手拍子、
パッジはステージギリギリまでせり出して、耳に手をあてながら、さらにコールを求めると、それに応
える観衆の声が大きくなる。たった2曲演奏した時点で、BFMVのステージがすばらしいものになるこ
とを約束してくれたようだった。さらに、3曲目の“ウェイキング・ザ・デーモン”では、左右それぞれに
大きなサークルピットが生まれるほどの盛り上がりに。そんな光景を「ビューティフル!」と喜んだ
マットは、「歌いたいか?オレたちを助けてくれるのか、どうなんだ!?」と問いかけ、観客のリアクション
の大きさを確認すると、初フル作『ザ・ポイズン』(2005年)からの名曲“オール・ザ・シングス・アイ・
ヘイト”をプレイしたのだが、「オレのマイクはお前たちに預けた」というジェスチャーを見せた後、マット
はジェイとともにムースのいる後方上段のドラムセットまで下がり、ギタープレイに徹した。マイクを
預かった形の観客たちがヴォーカリストの役目を見事果たしたのかどうか。海外でフェスやライヴへ
行ったことのある方や、海外公演の映像をご覧になった方ならおわかりかと思うのだが、とにかく観客
が大声で歌う。ときにはヴォーカルを聴くこと以上に歌うためにきてるんじゃないかとすら思えるほどだ。
そんな彼らにヴォーカルのスペースまで空け渡せば、そりゃあもう、自分がヴォーカリストとばかりに
熱唱する人だらけなのだ。期待通りの光景を見て、満足そうにうなづくメンバーの姿があったのは言う
までもないだろう。まさしくこの瞬間、BFMVは数え切れないほどのヴォーカリストを擁する巨大なバンド
と化してた。
(中略)
そこで、マットは「オレたちが初めてこのフェスに出演した2004年はまだレーベル未契約のバンドだった
のに、今はコレだゼ。ヘッドライナーとしてステージに立ててることを光栄に思う」とMCで言った。マット
のヴォーカリストとしての道が途絶えるかもしれなかったノドの故障などのピンチを乗り越えるなどして
6年経った今、初参戦時とはケタ違いの数と深い愛情をもって集まった観客の姿を目の前にした、もっと
も素直な言葉だったのではないだろうか。また約1時間のセットの間、新世代メタルヒーローと評するに
相応しい姿を目撃した我々にとっても、BFMVは今やイギリス全土、いや世界をリードする存在なのだと
身をもって思い知ったのだった。BFMVがメインステージのヘッドライナーを飾る日もそう遠くはないだろ
うと確信できた。同時にライヴ途中、ファンの掲げるウェールズの国旗を見つけたジェイが嬉しそうに指
を指してた微笑ましいシーンからは、たとえBFMVがどれだけ大きくなろうとも、郷土を愛する思いは不変
なのだろうとも感じられた」


このリポートは左と下にあるとおり、2010年7月31日
発売のGrindHouse magazine Vol.61に掲載した。
Download Festivalのライヴリポートというよりは、数
多い出演陣においてBFMVのみに焦点をあてた内容
となってる。というのも、この号の発売直後の2010年
9月にBFMVの再来日が決まってたからだ。BFMVに
とっては初の試みで、BFMVがトリ、その前にBRING
ME THE HORIZON(BMTH)、1番手としてCANCER
BATS(CB)が出演するという3組のパッケージツアー
での実施だった。全バンドがUK大手マネージメントの
Raw Power Management所属ゆえ、“Raw Power
Management Tour”とも呼ばれた。
9月1日、東京STUDIO COAST、同2日、大阪なんば
HATCHの2公演が行われた。自分は東京公演を観た。
宮原亜矢嬢がBFMVの母国イギリスでのさらなる立ち
位置の高さ、人気の強さ、評価の確かさを一足先に克
明にリポートしてくれてただけに、かなりの期待感を抱
いて現場に足を運んだ。


確か開場数時間前だったと思うけど、スタジオコースト内の楽屋裏に足を踏み入れた瞬間ちょいと
ビビッた。3バンドもいるわけだから当然クルーたちも含めるとかなりの大所帯だ。さらに招へい元の
スタッフにステージ周りの裏方たち、レコード会社の担当者に大勢の取材陣も加わって、あたりはま
さに人、人、人、また人でゴッタ返してたからだ。同会場でTaste Of Chaos Tour JAPANが行われた
ときほどじゃなかったものの、それでも「さて、取材場所をどう確保しよ」としばしあたりを見回しながら
考えたほどだった。会場としてはデカバコながら、実は楽屋裏はそんなに広くない。楽屋裏から1歩外
に出るとジャグジーっぽいミニプールがあるのだけど、まずその近くに陣取り、取材用機材などを置き、
待機した。このときはBFMVに取材というのじゃなく、いつもとは趣向を変え、BFMVのマット、BMTHの
オリヴァー・サイクス(vo)、CBのリアム・コーミアー(vo)に語り合ってもらう“フロントマン対談”を実施予
定だった。日本で、この3バンドが一堂に会す機会なんてそう滅多にない、と思ったからだ。1番最初に
取材現場に姿を見せたのが、オリだった。2009年の初来日以来の再会の挨拶をしに近寄ろうとした
途端、明らかに“でき上がってる”のが即わかった。握手をした瞬間、満面の笑みを浮かべつつ挨拶を
し出したのはイイのだけど、ほぼろれつが回ってない状態ゆえ喋ってることの多くが解読不能(苦笑)。
アルコールが入ってないときと、入ってるときとじゃ“別人格”になる。入ってないときはかなりメロウな
ムードで口数も少ないのだけど、1度入り、進むとやたら饒舌になる。取材、対談のときは当然饒舌の
方がありがたいわけだけど、オリの場合かなり話が脱線・転覆するので、一抹の不安を覚えた。
そして、その不安は見事的中するのだった…。


次回に続く…(2013年2月28日更新予定)