BULLET FOR MY VALENTINE(BFMV)が3枚目『FEVER』(2010年)発売後に来日したのは、
2010年9月のことだった。それがBRING ME THE HORIZON(BMTH)、CANCER BATS(CB)
をサポートに従えてのパッケージツアーで東阪2都市を巡演したことは、連載前回に書いた。

GrindHouse magazineが商業誌だった12年間で全72号を発売した。その期間において当初
から継続的に掲載してきた企画のひとつに“GrindHouse Talk Battle!!”という最少2バンド/アー
ティストによる対談記事がある。現時点での商業誌最終号となってるVol.72にも、ANTHRAXと
HELLYEAHが伴だって来日したときに実現した対談記事を掲載してる。自分で言うのもなんだ
けど、けっこう好評な企画だったので全72号で46回やった。対談出席バンド/アーティスト同士
が互いをよく知り、仲がよかったりすると裏話やエピソードなどが突然飛び出したりして大いに
盛り上がるなど進行役を務めてても楽しかった。
連載第7、8回に書いたBFMVのマット・タック(vo,g)とAVENGED SEVENFOLDのM・シャドウズ
ことマット・サンダース(vo)との対談もその一環でやったもので、“新世代US/UKメタル対談”という
サブタイトルをつけ、“GrindHouse Talk Battle 第32回”としてVol.48に掲載した。で、上記3バンド
が束になって来日する前、いつものごとく「さ、どういう取材にしよ」となり、「対談だろ、面白そ」と
即ピンときた次第だ。

で、連載前回の後半に書いた9月1日の東京公演当日の新木場STUDIO COASTの楽屋裏だ。
真っ先に現場に姿を見せたのは、“ほぼろれつが回らないくらいまででき上がってた”BMTHの
オリヴァー・サイクス(vo)だった。彼は酒が入るとかなり饒舌になる。取材する側からすればそれ
はありがたいことなのだけど、度を超すと脱線・転覆状態に突入し、話があちこちに飛ぶ、ならま
だしも正直収拾がつかなくることもなきにしもあらずなので、「対談を進めていく際、これがどう影
響し、転ぶのか?」という不安、危惧が頭んなかをよぎったのは事実だ。続いて、CBのリアム・コー
ミアー(vo)が登場した。リアムはいつ会ってもスーパーナイスな人で(ほかのメンバーみなそう)、
このときもまったく変わらず。で、マットが現れた。事前に聞いてはいたけど、両腕周りがグッと
太く、胸板もより厚くなるなど“小マッチョ”になってることにちょいと驚きつつ握手を交わし、簡単な
挨拶の後、マットは席についた。そのとき一瞬、マットがオリヴァーの方に目をやった途端、表情が
険しくなったのを見逃さなかった。「うわっ、まいったな、マットいきなりムードがよくないな…」と咄嗟
に思った(滝汗)。そんなことなんてつゆ知らずのオリヴァーはご機嫌状態マックスでリアムにしょー
もないことを喋り、1人で盛り上がってる。これにはリアムも苦笑いするのが精一杯の体だったので、
あえてオリヴァーの話をさえぎるような感じで対談を始めた。まずは、こう切り出した。

――みんな、久しぶりの再来日だね。

オリヴァー「最高だね。とてもハイで爽快さ(笑)」
リアム「ストレートエッジなオレがそう答えるつもりだったんだけど(笑)」
オリヴァー「答えを横取りしてやったんだ(笑)」
リアム「本当に最高さ。去年来たばかりなのにこんなに早く戻ってこられるなんて興奮してる。
    またこさせてもらえて…」

オリヴァー「“こさせてもらえて”? (前回の来日時に)なんか悪さでもしたのか?」
リアム「オレたちが?」
オリヴァー「入国禁止令が出るようなことでもしたのかと思ったよ」
リアム「オレたち下品だからな。よく唾を吐くし。日本じゃやっちゃいけないような気がしてきた」
マット「下品か否かはともかく、オレは気分最高さ。また日本にこられて気持ちがイイよ」

「下品か否かはともかく」っていうところに、マットが早くもちっちゃくイラッときてることが表れてる、と
思えた(汗)。よって3バンドがそれぞれ近しい関係にある、っていうことを改めて印象づけるために
こう質問を続けた。

――みんな同じマネージメント(Raw Power Management)所属じゃない。それぞれ前から知り合い
   だったんでしょ?

オリヴァー「オレとマットは(UKラウドロック誌)『Rock Sound』で一緒に取材を受けたことがある。
      CBとは前にツアーしたし」

リアム「オレたちは両バンドとツアーしてる。いろんなツアーにつけ足されるんでね(苦笑)。BFMV
    ともBMTHとも兄弟同然だけど、3バンドが合わさったことは今までになかったね。3バンド
    がひとつのサンドウィッチなら、オレたちは気のいいカナダ産マスタードってとこ。素材の
    よさを引き出す役。プンパーニッケルパンとスパイシーなウェールズ産の肉に合うかな?
    みたいな(笑)」

オリヴァー「じゃオレたちはオニオン。“サンドウィッチにはオニオンも入れてくれ”みたいな存在
      (笑)。だけどBFMVはターキーとか具のメイン」

マット「アハハハハ」
リアム「そうそう。“そのターキーサンドをくれ。オニオンは入ってない?ま、いっか”みたいな(笑)」
オリヴァー「だけどターキーが入ってなければ…」
リアム「そんなサンドウィッチいらねー」
オリヴァー「だね。だからオレたちはより美味しくするためのオニオンで、CBがマスタード」
リアム「そう、オレたちがスパイシーで気のいいカナダ産マスタードさ」
マット「もう、わかったって」

――まさか今回のツアー中にそんな話ばっかしてるわけじゃないよね?

オリヴァー「サンドウィッチの話ってこと?」
マット「3人揃ってサンドウィッチについて話すのは今日が初めてだな」
リアム「そもそも3人揃うのが今回初めてだから」

続けた質問が裏目に出たわけじゃないけど、なかなか場の空気が上向かないのだ(汗)。で、思い切って踏
み込んでみた。マット(BFMV)とオリヴァー(BMTH)をつなぐ質問をしたのだ。

――意外だけど、BFMVとBMTHってこれまでに一緒に演ったことってないんだってね?

リアム「確かにこの2バンドが今まで一緒にツアーしてないのはおかしな話だよな」
マット「オレたちは今までにUKバンドとほとんどツアーしたことがないんだ。一緒に演ったのは
   ギャロウズぐらい」

リアム「その体験から“金輪際UKバンドとはゴメンだ”ってことになったんだね(笑)」
マット「そう、だから今回はヘンな感じだけどなかなかイイもんさ。今年はBMTHと一緒にいろんな
   ところを回るからcoolにやりたいよ」

オリヴァー「間違いなくイイ経験になるさ。だってBFMVは今現在、世界でもっともビッグなメタルバンド
      だゼ。世界中どこの国へいってもみんなBFMVが大好きだ。こういう機会を与えてもらえて、
      感謝の気持ちで一杯さ。とは言え、実はオレ、BFMVライヴをまだ観たことがないんだ。これ
      から観るからさ、終わってから感想を言うよ」

マット「イイんじゃない、それで。実はオレたちもBMTHを観てない。ツアーやフェスで一緒になったこと
   がないから。だからBMTHのライヴを観るのは今晩が初めてなんだ。楽しみさ」


なんとなく、だけど、その場の雰囲気がイイ方向にいきそうな感じだったんで、こう続けた。

――BMTHは前作『スイサイド・シーズン』(2008年)で頭角を現したじゃない。マットからすると、若くてナイスな
   バンドがUKから出てきたって感じだったんじゃない?

マット「うん、スゴくイイことだと思った。それまではオレたちの相手になるヤツはいなかった。UKバンド
   がちっとも出てこないという悲しい状況が続いてたからね」

リアム「そう、BFMVと同レベルのバンドはいなかった」
マット「ホント、不思議だよ。レコード会社の問題とか、才能あるヤツらがいないとかそういうことじゃない
   と思う。だけどやっと張り合える相手が出てきてよかったよ。オレたちもいよいよウカウカしてらん
   ないな(苦笑)」

オリヴァー「張り合える仲とまでは絶対にいかないさ。BFMVのレベルまでには追いつけるわけがない。
      だけどオレたちはそれでイイのさ、満足だよ」

マット「CBとの2008年のUSツアーもよかったね(連載第10回に書いたツアー)。ブリーディング・スルー
   とも一緒だった」

リアム「うん、あれは最高のツアーだった」
マット「うん、長期戦だったし、coolだった。あのツアーで初めてCBのライヴを観たんだ。彼らのことは聞
   いてはいたけど、一緒にツアーするまでは観たことがなくてとにかく驚いた。
   特にスコット(・ミドルトン)はすばらしいギタリストだよ。ところで、どうやって声を保つんだ?」

ライアム「うーん、わからん(笑)」

少なからずやっと話が温まり始めたので、ちょっとアングルを変え、マットに個人的に気になってたことを訊いた。

――マット、急に筋骨隆々になったのはなぜ?

マット「そんな過剰に、じゃないけど筋トレをやってるからじゃないかな。オレは今までずっとヤセてた
   けど、去年くらいから自然と肉がついてきた。嬉しくてワークアウトを始めたらこうなったんだ。
   サンドバッグもやってるよ。これがけっこうイケるんだ(笑)」

オリヴァー「いや、ステロイドをやってるんだよ」


わかってもらえるだろう、このオリヴァーの一言
が余計だった(苦笑)。リアムは笑い、マットも
一応は笑顔を浮かべてたけど、キッとした目つき
でオリヴァーを見たことは言うまでもない。せっか
く温まり始めた話もオリヴァーの一言で冷めかけ
てたし、終了時刻も迫ってたので、対談のまとめ
に入った。マットが特段オリヴァーになにかある
わけじゃないので誤解しないでほしい。マットが
イラッときたり、カチンときたりしたのはオリヴァー
が酔っ払って対談に出席し、しかもときにしなく
てイイ発言をした、この対談30分間に限っての
ことだ。それにしても、このときのオリヴァーは
ただの酔っ払いだった(笑)。この対談記事の完
全版は2010年9月30日発売の、GrindHouse
magazine Vol.62に“GrindHouse Talk Battle
英加バンド対談:第39回”として掲載した。左と下
にあるのがそうだ。


未掲載の対談時に撮影した写真を今回2点使った。久しぶりにこの写真群を見たけど、なんて
タトゥー率が高いんだろ、と思った(笑)。

次回に続く…(2013年3月4日更新予定)