いよいよ通算4枚目の新作『TEMPER TEMPER』の話に突入だ。よって、この連載も終盤へと差しか
かった。今作は発売こそつい先日の今年2月ながら、昨夏にはとっくのとおに完成してた。
マット・タック(vo,g)にAXEWOUNDについての電話取材を行ったとき、最後にBULLET FOR MY
VALENTINE(BFMV)の近況を尋ねたところ、こう説明してくれた。実施日は昨年8月31日だ。

「3、4週間前に完成したんだ。こうなるんじゃないかっていうイメージはあるけどまだ決め込め
てないから、今はまだタイトルは言えないな。新作の内容は前作『フィーヴァー』(2010年)の
延長線上にある、って言うには語弊があるけど、確かに今までの作品と音楽的には近い。だけ
どずっとフレッシュなものになってる。今まであえてやらなかったことをやる機が熟したっていう
感じかな。曲の長さもできるだけ短くしたし。2分半しかない曲もあるから。今までそんなに短く
したことはなかったけど。ムダと思える部分を全部そぎ落とし、どの曲も1秒1秒がエキサイティ
ングなものにしたんだ。それが強く意識してやったこと。ミッドテンポ色も濃くなってる。壮大な
感じは今までと変わらないけど、もっと焦点が合ってて成熟したものになってるよ。2013年2月
くらいには出したいと思ってる」


この発言はたぶん的、要点を得てるんだろうと思えたものの、当たり前だけどそれからは音は聴こえて
きやしない。具体的なことはわからずも、今作が『FEVER』の音楽性、作風からさらに進化・成長し、
過去にやったことのない新しい手段にもチャレンジしてることだけは掴めた。自分の経験からいくと、
「ずっとフレッシュなものになってる」っていう発言は、いろんな意味で“要注意ワード”だったりする(苦笑)。
作り手側の認識、想いなどと、我々聴き手側の受け取り方などが必ずしも一致するとは限らない。少々
乱暴な言い方となってしまうけど、作り手側にしてみれば新しいことにチャレンジしてるわけだしそりゃ楽し
くて当たり前だし、それが理想の形となれば感激もひとしおだ。が、しかし、その“チャレンジした新しいこと”
がときに我々聴き手側にとって思い描き、期待してたものとは異なることがあり「えー、今回なんか違う…」
といったような“落胆色”伴う声があちこちから噴出したりする。これは決して珍しいことじゃない。そのマット
の発言もあって、『FEVER』でヴォーカル面などで新しい領域を切り開いたBFMVが、今作でその可能性
をさらに押し広げ、より前へ前へと歩を進めてることは明々白々だった。で、それがいったいどの角度から
きて、どういう内容なのかの1点に興味は集中した。核の部分、つまり“BFMVらしさ”から著しくかけ離れる
ことは絶対にないっていうことはわかってた。

それから数ヵ月経ってから、今作からのセットアップシングル“Temper Temper”が届いた。届いた、という
事実だけで十分テンションが上がったものだけど「曲の長さをできるだけ短くした」とマットが語ったとおり、
3分6秒しかないというBFMVにしては短尺チューンだった。それに“BFMVらしさ”がギュウ詰めになってた。
その後間隔を開けつつも新曲数曲のラフミックス音源、先行シングル“Riot”完パケ音源(つまり完成音源)、
曲順未決定の全曲ラフミックス音源とコンスタントに届き、今作の全貌が次第に明らかになっていった。
そして今作の全曲完パケ音源が届いたのは、今年1月中旬頃だったと思う。

「もっと気の効いた言葉はないのかね」と言われても仕方ないのだけど全曲完パケ音源を第一聴したとき、
心底スゴいと思った。ヴォーカル、コーラス、曲などで“チャレンジした新しいこと”が多々あり、それらを完全
にBFMVのものにしてることに驚いたし、BFMVの音楽が見せる表情もより豊かになってることから強烈なる
インパクトを得た。曲展開/構成をビシッと引き締め、リズムのテンポを落とすことで“新たなヘヴィネス”を生
んでるところも見事だ、と思った。「これまでに発売してきた作品のなかでもベストなできさ。ソングライター
として、またバンドとして最善をつくし、これ以上ないくらい作品が輝きを増すよう作り上げたんだ」と言って
胸を張るマットが、さらにこう続けた。

「リズムのテンポを前以上に落とす、ということを意図した。ミッドテンポの曲を増やし、スピーディー
な曲を減らした。多くの人たちがスピード感がある方が複雑でヘヴィな曲が作れると思っているけど、
実は逆なんだ。テンポを落とした方がヘヴィになる。だから意識的にミッドやスローテンポにするこ
とで、曲にさらなるヘヴィさを与えるようにした。今作で目指したことのひとつが、ミッドテンポでメタ
ル感あふれる作品を作ることだった。これまでのような典型的なメタル作を作ることもできたけど、
オレたちのすべての作品が同じ作風になることをあえて避け、1枚1枚の作品にそれぞれ独特の
ヴァイブを持たせるようにしたいんだよ」


上記した、(BFMVの音楽性において)可能性をさらに押し広げ、より前へ前へと歩を進めてる、なによりの
証拠のひとつが、これだ。

「BFMVらしさを保つように心がけてる一方で、並行して常に自分たちにとって新鮮な領域を探し
求めてるんだ。この新鮮さを求めるっていうことがオレたちにとって、またアーティストにとって
とても大切なことでね。今作じゃ、特にヴォーカルとテンポ面をフレッシュアップさせた。その点
が、これまでと違うフォームさ。このフレッシュアップは今回とても効果的だったと確信してる。
次作じゃギターパートを集中的にフレッシュアップするかもしれない。それ以外のところはいつも
のBFMVのようにする。半分に新しいチャレンジを加えることで、いつもの自分たちのアイデンティ
ティを保ち続けることができ、同時に新鮮で活気のあるバンドというイメージも作り出せるんだ」


プロデューサーは『FEVER』同様、リンキン・パークほかとの仕事で知られるアメリカ人、ドン・ギルモアだ。
最初マットはドンに懐疑的だったけど、今じゃかなりイイ関係を構築してるようだ。『FEVER』でタッグを組ん
だことが完全に“吉”と出たことがよくわかる。

「オレたちのソングライターとしての、またミュージシャンとしての力量というものをドンは熟知して
る。だから余計な干渉は一切してこない。オレたちがなにかで浮き足立ってるとき落ち着きを取り
戻してくれるし(笑)、オレがギターとかヴォーカルとかの面でなにかに挑戦すべきだというインスピ
レーションを得たときは的を得た助言をしてくれる。まるで後部座席に座って眺めながら、オレたち
のやりたいようにやらせてくれる感じなんだ。最高さ」とマット。


現役プロレスラーであり、FOZZYのフロントマンでもあるクリス・ジェリコと歌詞をコラボした“Dead To The
World”、SNSでファンの希望を募り、既発表曲の第2章にあたる“Tears Don't Fall (part2)”を録り、オリジ
ナル収録した今作は2月に日本先行発売された。そして発売から1ヵ月後の3月8日、東京のみで一夜限り
のライヴを行う。『TEMPER TEMPER』発売記念 <RIOT IN TOKYO 2013> スペシャル・ギグが、それだ。


次回に続く…(2013年3月12日更新予定)