あくまでもプロモーション&マーケティングという仕事の見地から言う。決してムースにムチを打つわけじゃ
ないけど、BULLET FOR MY VALENTINE(BFMV)の、サマソニ2005東京への突然の出演キャンセルに
は正直、自分も含めて関係者全員の心臓が止まるくらいマッ青になった。6曲入りミニ作『BULLET FOR
MY VALENTINE』(2005年)がセールス面でも予想以上の好スタートを切ってたことは、連載前回に書いた。
で、次にサマソニ大阪&東京出演でさらなる弾みをつけ、期待感、注目度がより高まるなか、10月26日に
セットされた初フル作『THE POISON』日本盤発売になだれ込み(UK発売10/3)、一気にBFMVが炸裂し、
加速もする、という状況・環境を作る、という“シナリオ”が崩れかかった、と誰もが思って止まなかったからだ。
しかしこういう言い方が適切がどうかわからないけど、逆に東京出演キャンセルが完全にプラスに転じ、余計
BFMVに対する飢餓感を煽る形となったのだ。当時のCDショップ各店の洋楽ロック&メタル担当バイヤーとの
会話からそれが手にとるように伝わってきた。これはもう、音楽性がどうのかこうのかっていうより、BFMV天性
の強運っぷり、強い求心力の表れ、と思えた。

サマソニ前後の時期に、BFMVが上記ミニ作
発売前に音源を1曲だけ公式に出してること
を知った。かつてなにかと深いつながりを持っ
てたUKのアンダーグラウンドメタル専門イン
ディーレーベル、Visible Noiseが2004年に
発売した同レーベル所属アーティストのサン
プラー的コンピ『SUBVERSE VOLUME 2』
(日本盤未発売)収録曲“Turn To Despair”が
それだ。ジェイのスクリームから始まるこの
曲は前のめり的にカッコいいチューンで、けっ
こう“モダンヘヴィ色”が強い一方で、“BFMV
らしさ”もきちんと同居する“バランスの妙”が
味わえる。このコンピは今もなお購入可能だ。
この1曲だけでも購入し、聴く価値アリだ。







上記フル作をプロデュースしたのは、FEAR FACOTORY、MACHINE HEAD、DEVILDRIVERほかとの仕事
であまりに高名なコリン・リチャードソンだ。マットのコリン評は相当高く、
「“5人目のメンバー”と言っていいくらいの存在だね。自分たちの持つよさをうまく引き出してくれたし、
それまで気づかなかった自分たちの可能性というものもたくさん教えてくれたから」

と絶賛だ。とにかく、今作が記念すべきデビューアルバムということで手放しで祝したい気持ちでいっぱいだった。
そして、とてもニューアクトのデビューアルバムと思えないくらいのクオリティと完成度の高さに舌を巻くと同時に、
すでに“初期BFMV音楽性”がほぼ完成の域に達してることに驚愕させられたことを、今もなおハッキリと覚えてる。
マットの美麗メロディックヴォーカルとジェイの激烈スクリームが織り成すコントラスト、明確なアイデンティティを
根底に敷いた際立つメロディ、サウンドの肉厚ヘヴィネス、鋭角アグレッションなどの合体/融合も当然すばらしい
のだけど、自分はそれ以上に1曲1曲の“骨格”となり、作風全体の“生命線”ともなってる“強烈な自己主張をする
起承転結性”に心底魅かれた。もちろん、それはミニ作の頃から強く感じてたけど、よりデフォルメされてる。
そして、フェイドアウトで終わる曲が“Intro”と“The End”しかなく、それ以外の11曲全曲が「ガツンっと始まり、ビシッ
と終わる」っていう潔さ、完結性で統一されてたこともめちゃくちゃカッコよかった。当時、マットは今作についてこう
コメントしてる。

「新作(今作)はこの前のミニ作よりさらにメタルアプローチが色濃くなってる。そして前以上にダイナミック
かつスピーディーに。リフはよりヘヴィにしつつも、ハーモニーはさらに厚く、そしてメロディは1度聴いた
ら頭から絶対離れないくらいキャッチーなものになってる。イライラするくらい頭から離れないようなメロ
ディさ(笑)。商業的なことを考えると、フックはものスゴく重要な要素だ。フックがなきゃなにも始まんな
いし、生まれないからね。オレたちの音楽の不変のテーマは、ものスゴく激しい音楽と、非常に美しいメ
ロディの融合/合体なんだ。これは、今後も進化、成長はしても根本から変わることはないよ」


ジェイがこう続けた。

「新作(今作)は、前ミニ作のできを超えようと最大限の努力をした結果さ。おかけで、どの曲も最高のでき
栄えを示すものになったよ」


実は、今作にはBFMVの前呼称OPPORTUNITY IN CHICAGO時代に書かれた曲も収録されてる。当然そのまま
の形じゃなく、BFMV化させ、2005年版として再生されたものだ。それ以外の曲は今作制作に入る前の2ヵ月間で
完成したそうだけど、なかには制作突入真っ最中に形になったものもあるという。マットがこんなエピソードを明か
してくれた。

「酔っ払いながらギターを弾いてたらできちゃった、みたいな曲があるんだ(笑)。“おっスゴイじゃん、
コレ!”って思い、その場に座り込んで真面目に取り組んだらできたのが、“Suffocating Under Words
Of Sorrow (What Can I Do)”さ。スタジオで酔いツブれてたらできちゃった曲が(今作からの)1stシング
ル曲に選ばれるんだから最高だよね(笑)」


第1回に「酔っ払いながら…」っていうセリフは実はマットからよく聞くフレーズだ、と書いたけど、早くも再登場だ(笑)。

今作が順調にセールスを伸ばすなか、BFMVは
早くも2006年1月には再来日し、初の単独公演
を行った。それはまだ松の内の7日の東京公演
初日から始まり、もう1公演東京でやり、その後
名古屋、大阪と続いた。その“クラブクアトロツアー”
は全公演ものの見事にソールドアウトとなって、
サマソニ2005東京公演出演の突然のキャンセル
がイイ意味で尾を引き、BFMVに対する期待度、
注目度がより高まり、飢餓感も強まってることを
実証した。東京公演2日目の開演前に写真撮影
をし、全公演終了後東京に戻ったマットを対面
取材した。そのライヴリポートとインタヴュー記
事を、2006年1月31日発売のGrindHouse magazine Vol.34に併載した。右にあるのが、
それだ。マットは再来日公演をこう語った。

「最高だったよ。前回の(サマソニ2005)東京
公演をキャンセルにしたぶんを取り戻せて
ホッとしてる。今回東京でライヴが演れるま
ではヤリ残した感がスゴくあったけど、実現
できてひと段落した感じすらあるから。観客
の反応もよかったから、オレたちにとって
日本は大事な国になること間違いなしさ。
今後も頻繁に戻ってくるつもりだよ」


見えるだろうか、マットのピン写真をムースのド
ラムセットの前で撮影した。これが最後の撮影
の場となったので、終了後カメラマンは楽屋裏
に下り、自分もそうしようとした瞬間、こんなこと
があった。マットがステージのど真ん中に立ち、
両腕を組んだまま、場内を見渡してる。「どうし
たんだろ?」と思い、こう声をかけた。

「今晩もソールドアウトだよ、最高だね!」

すると、マットはこう話し出した。

「前回の(サマソニ2005)東京公演キャンセルは忘れようにも忘れられない出来事だった。それだけに
1日も早く日本に戻ってきて、とにかく東京でライヴを演りたかった。それが昨晩実現できたし、東京
2日間だけじゃなく、全公演ソールドアウトになったっていうのもホントに嬉しい。でも、オレたちはもっと
もっといけるし、必ずそうなるから」


マットは大変な自信家だ。自分自身の考えや、やってることのすべてに絶対の自信を持つ。それは初めて電話
取材したときから薄々は気づいてたけど、併せてものスゴく上昇指向も強い人だ、ということをこの発言からくみ
とることができた。逆を言えば、そうだからこそBFMVは存在し、呼吸もし、あのカッコいい音楽が演れ、ライヴパ
フォーマンスも繰り広げることができるのだ。理にかなってる、と断言できる。

このときは東京2公演を観た。そのパフォーマンスはホントにすさまじくて、まさに“カオス”だった。2日目のライヴ
リポートじゃ、自分は冒頭から「彼らがなぜ今、“次世代メタルバンドの雄”と称賛される逸材なのかを実証して見
せた、説得力漲るライヴだった」と書き切ってる。以下、その夜のセットリストだ。

  • 01. INTRO
  • 02. HER VOICE RESIDES
  • 03. 4 WORDS (TO CHOKE UPON)
  • 04. SUFFOCATING UNDER WORDS OF SORROW (WHAT CAN I DO)
  • 05. ALL THESE THINGS I HATE (REVOLVE AROUND ME)
  • 06. THE POISON
  • 07. SPIT YOU OUT
  • 08. CRIES IN VAIN
  • 09. JUST ANOTHER STAR
  • 10. TEARS DON’T FALL
  • 11. NO CONTROL
  • -ENCORE-
  • 01. HAND OF BLOOD
  • 02. THE END

  • 次回に続く…(2013年1月29日更新予定)