連載前回をご一読いただければわかってもらえると思う。マット(vo,g)のノドの状態の説明は、まさに
“激白”だった。2007年8月の3度目の来日公演のときは対面取材で、次作発売タイミングじゃ電話取
材で、だった。電話取材は自分が直接話すわけじゃないし(通訳さんが代わって話してくださる)、直接
話したとしても彼の表情までは見えない、わからない。後日、その取材音声を聞き、彼がどんな感じの
トーンで話してたかを知った。対面取材じゃ当然彼の表情を目の当たりにすることになるし、微妙な変
化にも目と注意がいく。いつもそうなのだけど、彼は感情をほとんど表に出さない。ことの真相、そして
彼自身の思うことを淡々と話すのみだ。そのときの対面取材じゃかなり深刻な話をしているのに、時折
薄らと笑みすら浮かべていた。「オレは今とっても大変なんだよ、可哀想でしょ?」って慈悲を乞うこと
なんて、もちろん皆無だ。だから余計、その“激白”はあまりに衝撃的で、かつ痛々しく、正直「訊かなきゃ
よかったし、聞きたくもなかった」と思ったほどだった。仕事人の立場として後に「それって、どうなのよ?」
と自分自身に問いかけるハメにもなったのだけど、それだけ彼の“激白”は重々しくもあった。前回、彼は
自分には「生まれ持った強さがあると思う」と語ってる。やはり、そういったことはその強さからくるものな
んだろうか? そして、

「オレはあまりオープンなタイプじゃないんだ。だけどノドのことがあってから、周囲に勇気を持っ
て“もうこれ以上はできない”と言えるようにもなったから、このへんのことも克服できたんだ。
おかげで自分の限界ラインもわかってきたし、自分が我慢した結果バンドが犠牲になってしまう
んじゃ、まさに本末転倒だからね。みんなとそういう話を何度もして、もう2度とこんなこと
(筆者註:
1人で思い悩み、抱え込み、追い詰められていったこと)にはならないって決めたんだ。オレは生来と
ても強い人間だし、頑張れば大抵のことは乗り越えられると思ってるよ」


でだ、次作のことに話題を移そう。通算2枚目のフル作
には『SCREAM AIM FIRE』というタイトルが冠せられ、
2008年1月に欧米より約1週間日本先行発売された。
今作以降、毎作ごとに日本先行発売が実現している。
これもひとえにBULLET FOR MY VALENTINE(BFMV)
の日本のファンたちへの強く、深い愛の表れにほかな
らない。このとき日本盤は廉価1,980円(税込)の、いわ
ゆる通常盤しか発売されてない(タイトルチューンのPV
がエンハンスト対応で観れる)。このページの1番下にあ
るのが全世界共通の通常盤ジャケで、右にあるのが欧米
で同発されたDVD付のデラックスエディションのパッケー
ジだ。表/裏面ともに色合いがもっとダークで、中面左右
には向き合うようにカラスの頭部が描かれている。なお、
日本盤のDVD付デラックスヴァージョンは通常盤ジャケ
を再度使用する形で2008年5月の4度目の来日公演に
併せて(PROTEST THE HEROとの共演ツアーだった)
来日記念盤として発売されることになる。
プロデューサーは前作同様、かのコリン・リチャードソンだ。
細かいことだけど、タイトルはもともと『SCREAM AIM FIRE』
じゃなく『SCREAM AIM AND FIRE』だった。結果的に“AND”
をとった。その理由と、タイトルの意味をマットがこう語った。

「“AND”を取った方がよりストレートな感じだし、“AND”は不要だと思って外したんだ。曲んなか
じゃ“scream, aim and fire~”って歌ってるけど、レコード会社側からも“AND”を外すことを提案
されたんで、そうしただけの話さ。曲タイトル“スクリーム・エイム・ファイア”からとってアルバム
タイトルにしただけだから、アルバムタイトル自体にも深い意味はないんだ」


(scream aim fireって兵士が銃を向けるときのかけ声とも思えるけど?、という質問に対し)

「そうそう、この曲の歌詞にもあるけど、人殺しなんてしたくない兵士が銃を掲げ、叫び声を上げ
た後に狙いを定めて発砲する姿を描いてる。ものスゴくダークで気味の悪いことだけど、叫びな
がら撃つのが1番簡単な方法なんだよね…」


今作の作風、音楽的方向性はBFMV以外の何物でもないのだけど、前フル作『THE POISON』(2005年)
とは“明らかに違う面”とそこここで出くわすものだ。まず痛め、手術も受けたことからマットの声色や声を
持続させる方法に明確な変化がある。音像はややスラッシーになってる。さらに初めてメジャーキーで
書いた“Hearts Burst Into Fire”“Forever And Always”があり、かつ前とは異なるチューニングの曲もある。
こういったことはリスナーに以前とは異なる“響き”と“ヴァイブ”をストレートかつダイレクトに放つ。もっとわ
かりやすく言うなら、初ミニ作と前フル作とで築き上げた“BFMV節”を重厚基盤としつつも、そこから新たな
広がり、膨らみも持たせることで、BFMVとしての次なる音楽的領域に到達した、ということだ。

「これまでの2作品の曲のクオリティ、そして作品それぞれの内容には満足してたんだ。指摘の
とおり、それでBFMVとしての音楽的基盤も築くことができた。そこからオレたちがさらに成長、
進化するとしたら次レベルへいくのみだった。だけどね、今作がこういう内容に仕上がったのは
自然の成りゆきだったんだよ。バンドとして新作を出すっていうことは、つまりバンドが前の作品
からちゃんと成長、進化をとげたことを明確に示すということ。それじゃなきゃ、新作を作って出す
意味がない。曲のテンポの変化や演奏力の向上、そして前より音像がスラッシーになったことは、
BFMVとして本当に自然なことだったんだ。今回はメンバー全員がより自由な発想でメジャーキー
を使用したり、チューニングで面白いフレイバーも加えてみたんだ」


いかにも自らの音楽にとことん真摯で、一本気なマットらしい発言だ。

実は上記“Hearts Burst Into Fire”じゃ、マットがノドを患ったことで味わった想いが歌われている。本来こう
いう想いを託し、書かれたリリックの曲は物悲しいものになると誰もが思うだろうけど、これがそれとは真逆
の明るいメジャーキーの曲なのだ。

「明るい内容のリリックをダークなサウンドで表現する曲があるように、ダークな内容のリリックを
明るい雰囲気のサウンドで表現する曲があってもイイと思ったんだ。実際そういう切り口でリリック
を書いてみると、けっこううまくいくことが多いし。だからリリックの内容と、曲の雰囲気を真逆な感じ
で表現した意図は特にないんだ。それよりメジャーキーで曲を書くということの方が新しいBFMVの
サウンドを作るということを意味したからデカかったね。いくら前より成長、進化したとは言え、オレ
たちはまだまだ曲の書き方とかを学んでる途中の段階にいるから、“変えることなく変える”っていう
のは微妙なバランスでとても難しいことなんだ。だからこそこういうメジャーキーの曲は、自分たち
の大筋を変えずに少しずつ変化するという意味で今作に収録したかったし、実際今作において
“Hearts Burst Into Fire”はとても重要な役割を担ってるんだ」


そして、マットは今作に対してこうも言った。

「今作で、BFMVが単なる“デビュー作が当たったいちバンド”なんかじゃなく、長期的に活躍できるバンド
だということを証明したいんだ。今作を通してよりビッグなバンドへと成長し、これまで以上に広く、デカい
会場でプレイしたい。この段になっても、オレたちのバンドとしての実力や曲作りの力を信じてない人たち
がいるけど、もうイイ加減認めてくれてイイと思う。作品1枚でツアーを重ね、アイアン・メイデンやメタリカ
のサポートアクトも務めてきたんだから。それにイギリス、ヨーロッパだけじゃなく、日本、アメリカやカナダ
でもヘッドラインツアーをずっとやってきた。オレたちのことが好きじゃないのは構わないけど、実力がある
ことは認めろよって言いたいね(笑)」


これはもう、マットの本音以外の何物でもない(笑)。プライドの高さ、上昇指向の強さ、さらに「オレ自身もBFMV
も今日までガッツリやり、実績だってしっかり残してきたゼ!」っていう自負の深さを実にストレートに言葉にしてる。
「オレは物事をハッキリ言うからときに“大口叩き”って言われることがあるけど、“大口叩き”なんかじゃない、事実
を事実のまま言ってるだけさ」っていうのが、この頃彼がよく口にしたことだ。ここまできた自分自身を、そしてBFMV
をまだ認めない輩たちがいることがよほど気に喰わなかったようだ。こういったところもまた、実に彼らしいと言える。

次回に続く…(2013年2月5日更新予定)