ヘンな言い方だけど1/4歩でも半歩でもイイんである。もちろん、1歩とか2歩とかであれば
なおよろしい。アーティストが作品を出すたびに音楽的成長/進化をとげていると実に嬉しい、
ハッピーになれる。作品発売のたびに来日し、次第にしかし着実に“ライヴ体”として存在感、
説得力を増していくさまをこの目で目撃し、この肌で感じられるのもとても喜ばしい、感極まる
ときすらある。こういったことと並行してCDセールスも、ライヴの観客動員数も上がっていけば、
もう言うことなしだ。

今、当時を振り返ってみると、自分は2作目『LOVE DRUNK』(2009年)が発売されるタイミングで
BOYS LIKE GIRLS(BLG)に対して、そうした成長/進化の過程という“ひとつの物差し”をかざして
見てたと改めて思う。そしてBLGはその間に見事に成長し、進化もした。サマソニ2009参戦での
再来日から5ヵ月後の2010年1月、3度目の来日を飾り、stack 44(活動休止中)を引き連れて
東名阪を巡演した。いわゆる単独公演で、THE SUMMER OBSESSIONの客演という形で実現
した初来日から約2年半が経ってた。このときBLGが階段を一段一段きちんと上がってる、って
いう想いを強く味わい、東京初日公演に大きな期待を寄せた。

実は当日こんなハプニングがあった。夕方、取材で会場に赴くや、
当時の担当ディレクター嬢より思いも寄らないことを告げられ、目が
点になった(笑)。「ブライアン・ドナヒュー(b,vo)がさっき成田空港に
着いたばかりで、今ここに向かってるところなんです」。「ぇ? うっそ~、だってあと数時間で本番じゃん!」と (笑)。マーティン・ジョンソン(vo,g)、ポール・ディジョバンニ(g)、ジョン・キーフ(ds)は予定どおり前日に
来日してた。だけどブライアンのみ本来のフライトがキャンセルと
なり、1日遅れで来日した。で、楽屋でマーティンに話を聞いてる
まさにそのとき、突然部屋のドアが開き、まるでなだれ込むように
ブライアンが入ってきた。超厚手の防寒具に身を包み、右手に
デッカいトラベルバッグを、左肩にソフトケース入りのベースを
下げてた。まさに「今着きましたーっ!」だ(笑)。で、マーティンが
笑顔でブライアンに向かって一言。「ようこそ、日本へ(笑)!」。
荷解きに忙しいブライアンはただただ苦笑いするだけだった(笑)。
そう、結局その夜ライアンはサウンドチェックができないどころか、
ウォームアップすらもせぬまま、ほぼ満員状態のO-EASTの
ステージに立った。連載第1回に書いたアナハイムのハウス・
オブ・ブルースで観たときよりも、連載前回のロサンゼルスの
ニッティングファクトリーで観たときよりも、またサマソニ2009
で観たときよりも、BLGはパフォーマーの集団としても、また
ライヴバンドとしてもりりしく、かつ力強くなってたことをしっかり
と目撃&体感することができ、グインッとテンションが上がった
ことは言うまでもないだろう(笑)。

それからしばらくの間、なかなかBLGに関する正確な情報が入ってこなかった。3枚目の新作を
制作中という話が漏れ聞こえてきたと思えば、それとは真逆の解散したという噂も飛んだりして、
とまったく動向が掴めなかった。後日判明するのだけど、その間実はBLGは一時的に活動を休止
してた。どうりで情報が入ってことなかったわけだ。マーティンはあくまでも個人用の楽曲制作に
勤しみ、THE USEDやSTORY OF THE YEARほかとの仕事で知られるプロデューサーであり、
メロディック・パンクロックバンド、GOLDFINGERのリーダーでもあるジョン・フェルドマン(vo,g)や、
ブラック・アイド・ピーズなどとのタッグで知られるトミー・ブラウンと話をしつつ、ソロ作の構想を
練ってた。ポールとブライアンは別バンド、EARLY MORNING BLUESを始動させ、ツアーに出、
さらにポールは自身のアパレルブランド、Black Carbon Customを立ち上げ、積極的に経営にも
参画した。ジョンはTHE REBELS(現在はEMPIRE KIDSに改名)とコラボするなど、みな思い思い
の動きをとってた。そうした時期が1年以上続いた後、BLGはついに3枚目の次作の制作に突入した。

が、しかし、ほどなくして突然ブライアン脱退がアナウンスされた。その理由として当時言われたのが
音楽的方向性の違いと、先のEARLY MORNING BLUESやもうひとつかけ持ちしていたバンドである
THE TOWER AND THE FOOLに入れ込んでしまい、BLGの活動に支障が出てた、というものだった。
実はブライアンの音楽的嗜好は、ほかの3人とは違い、根っからのハードコア好き。GLASSJAWや
THE USEDを大のフェイバリットバンドに挙げ、先のニッティングファクトリーでのライヴじゃ当時新鋭
だったポストハードコア・バンド、VANNAのTシャツを着てステージに上がってた。つまり、ブライアンは
半ばBLGを追い出された格好となったのだ。後日、後任にモーガン・ドールが迎えられた。

そうした山あり谷ありのプロセスを経て完成を見た通算3枚目が『CRAZY WORLD』とタイトルされ
発売された。マーティンによるセルフプロデュース作だ。ジャケからしてBLGが以前よりだいぶ大人
になったことが伺えるけど、そういったところは今作で鳴る音楽やその作風にも如実に反映されてる。
前2作で幅を利かせてた“キラッキラ感”や“若さゆえのはっちゃけ感”、そして“パンクロックなエッジ”は
ほぼ一掃され、オーセンティックでややアダルトで引き続きモダンなテイストもそこここで顔を出す
USロックが前面に押し出されている。前からマーティンのソングライティングセンスには光り輝くもの
がある。それが今回はさらにポリッシュされ、聴く者の耳を程よく刺激し、心に訴えかけるもの満載の
楽曲が続き、虜にさせられる。BLGは今作で次なる音楽的領域を切り開き、さらに前へと歩を進めた。
またBLGのライヴが観たい。前2作の曲と、新曲をどうセットリストに組むのかなど興味はつきない。

2013年1月31日発行予定のGrindHouse magazine Vol.76、フリぺ化第4号に、BLGの最新電話
取材記事を掲載する。お楽しみに~。